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一章 漫画家志望の猫山先輩
漫画家志望の猫山先輩 12
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「新入りは見た目どおりなよっちいな! そこのゴリラに余ってる筋肉を分けてもらえよ」
「猫山先輩、次に俺のことゴリラと言ったら、パソコンを窓の外に放り投げますから」
「やめろよ! これ買うのに預金をカラにしたんだからな!」
どうやら猫山はナチュラルに口が悪いようだ。
「猫山先輩、キャラクターデザインをしているんですか?」
「おうよ」
拓斗はソファーの後ろからパソコン画面を覗き込んだ。市松模様の羽織の下は、詰襟の学ランのような服を着ている少年が描かれていた。
「どんな話なんですか?」
「大正時代を舞台に、鬼と戦うバトル漫画だ」
「パクリじゃねえか!」
猫山の隣りにいる雄一郎がすかさず突っ込みを入れた。
「なあに、流行りものにあやかるくらいが丁度いいんだよ」
猫山はうそぶく。言われてみれば、似たようなキャラクターを拓斗も見たことがあった。
「猫山先輩、パソコンに触ってもいいですか?」
「いいぜ。保存してあるから、書き込んでもいいぞ」
猫山はタブレットとペンを拓斗に渡した。拓斗は雄一郎とは反対側の猫山の隣りに座り、ノートパソコンを自分の正面に移動させた。
パソコン自体、学校でレポートを作る以外に触ったことがない。ペンで書いた線がパソコン上に反映されるなんて新鮮だ。
画面を色々と弄っていると、RGBのカラーピッカーが表示された。これで簡単に色を選んで塗れるようだ。
「そういえば、キャラクターデザインって、色をつけないんですか?」
「そりゃアニメだろ。漫画ならベタとトーンでいいんだよ」
言っている意味はよくわからなかったが、とにかく色は塗らないらしい。
しかし、せっかくカラー画面になったのだ。拓斗は塗り絵も未経験だった。線に囲まれているエリアは、ポチリとクリックするだけで選んだ色が広がった。簡単でおもしろい。
顔や手は肌色、髪は赤みを含んだ黒、市松模様は緑と黒……。
「できた! 猫山先輩、どうですか?」
拓斗はパソコン画面を猫山に向けた。
「どうって……」
猫山は画面を見つめ、困ったように細い眉を寄せた。
「おい、こりゃアウトだろ。おまえ、わざとか?」
雄一郎はソファーを叩いて笑いだした。拓斗は話題に出ていた、流行りの漫画と同じカラーリングにしたのだ。
「そうだな、やりすぎはよくない。休憩にするか」
猫山は拓斗からパソコンを取り上げて、パタリと画面を閉じた。
拓斗は内心「あれ?」と思う。
それは風呂場で猫山と話していた時の違和感と同じだった。
「拓斗くん、お粥ができたわよ。二人も、こっちにきてアイス食べない?」
キッチンから大家が声をかけてきた。
「猫山先輩、次に俺のことゴリラと言ったら、パソコンを窓の外に放り投げますから」
「やめろよ! これ買うのに預金をカラにしたんだからな!」
どうやら猫山はナチュラルに口が悪いようだ。
「猫山先輩、キャラクターデザインをしているんですか?」
「おうよ」
拓斗はソファーの後ろからパソコン画面を覗き込んだ。市松模様の羽織の下は、詰襟の学ランのような服を着ている少年が描かれていた。
「どんな話なんですか?」
「大正時代を舞台に、鬼と戦うバトル漫画だ」
「パクリじゃねえか!」
猫山の隣りにいる雄一郎がすかさず突っ込みを入れた。
「なあに、流行りものにあやかるくらいが丁度いいんだよ」
猫山はうそぶく。言われてみれば、似たようなキャラクターを拓斗も見たことがあった。
「猫山先輩、パソコンに触ってもいいですか?」
「いいぜ。保存してあるから、書き込んでもいいぞ」
猫山はタブレットとペンを拓斗に渡した。拓斗は雄一郎とは反対側の猫山の隣りに座り、ノートパソコンを自分の正面に移動させた。
パソコン自体、学校でレポートを作る以外に触ったことがない。ペンで書いた線がパソコン上に反映されるなんて新鮮だ。
画面を色々と弄っていると、RGBのカラーピッカーが表示された。これで簡単に色を選んで塗れるようだ。
「そういえば、キャラクターデザインって、色をつけないんですか?」
「そりゃアニメだろ。漫画ならベタとトーンでいいんだよ」
言っている意味はよくわからなかったが、とにかく色は塗らないらしい。
しかし、せっかくカラー画面になったのだ。拓斗は塗り絵も未経験だった。線に囲まれているエリアは、ポチリとクリックするだけで選んだ色が広がった。簡単でおもしろい。
顔や手は肌色、髪は赤みを含んだ黒、市松模様は緑と黒……。
「できた! 猫山先輩、どうですか?」
拓斗はパソコン画面を猫山に向けた。
「どうって……」
猫山は画面を見つめ、困ったように細い眉を寄せた。
「おい、こりゃアウトだろ。おまえ、わざとか?」
雄一郎はソファーを叩いて笑いだした。拓斗は話題に出ていた、流行りの漫画と同じカラーリングにしたのだ。
「そうだな、やりすぎはよくない。休憩にするか」
猫山は拓斗からパソコンを取り上げて、パタリと画面を閉じた。
拓斗は内心「あれ?」と思う。
それは風呂場で猫山と話していた時の違和感と同じだった。
「拓斗くん、お粥ができたわよ。二人も、こっちにきてアイス食べない?」
キッチンから大家が声をかけてきた。
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