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四章 それぞれの決意
それぞれの決意 13
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アレクサンドラは食い入るようにフランシスを見た。フランシスは愛おしそうに、アレクサンドラの頬を指で擦る。
「お話したでしょう。両親は自分の子供に、地位のある役職に就かせることに躍起だったと。それは、魔法王国の国家機密を知りたかったからです。つまりはマナの樹の生存方法。両親は敬虔な聖樹教信者なのです」
アレクサンドラは唇をかみしめた。意識が薄れていく。眠ってはいけないのに。
「ぼくは高い魔力を持って生まれた瞬間、スパイになることを強いられる運命だったんです。それがずっと嫌でした。軍学校では酷い目にもあいました。でも、それも全てアレクサンドラ様に会うための道筋だと思えるようになりました」
生まれながらに人柱になる運命を背負う少女。それゆえに、新生児のうちに親元から離され、隠れるように暮らしていた。使命を知ってからは、迷いながらも柔軟に受け入れていった。同じように強制された運命を持ち、乗り越えようとしているアレクサンドラの姿に、フランシスは共感を覚えた。
「ぼくは、両親を含めて誰も信じていませんでした。隊長に出会うまでは人も石ころも一緒でしたからね」
フランシスが薄く笑う。
「生涯を添い遂げる人はアレクサンドラ様しかいません。教団にアレクサンドラ様を連れ帰れば、夫婦として認めると約束されています。教団では幽閉なんてしません。温かい家庭を築いて、ゆっくりとマナの種を育てましょう」
アレクサンドラはいやいやをするように、緩慢に首を振った。
「これから少々魔力を使って、警備をかいくぐらなければなりません。魔力を増幅させてもらいますね」
(ダメ……!)
フランシスが寄せてくる唇に、アレクサンドラは全身の力を振り絞って、両手を突き出した。
「アレクサンドラ様、これは……」
アレクサンドラの右手には、ナイフが握られていた。刃の部分だ。手の平いっぱいに血が溜まり、粘りのある液体が肘まで滑り落ちる。
アレクサンドラは痛みで眠気を堪えていた。
「なかなか眠りに落ちないと思っていたら、こういうことでしたか」
フランシスはアレクサンドラの腕に舌を這わせて、血液を舐め取っていく。
「そんな気丈なところも好きです、アレクサンドラ様」
「んっ」
手の平の傷口に舌が触れる。痛みにアレクサンドラは顔を顰めた。
「今度こそ、もっと別の場所を味わいたかったのですが。あなたに免じて、今回はこれで我慢します」
フランシスは唇についた鮮血を指先で拭い、惜しむようにその指先の血を赤い舌で舐め取った。美しいその顔は、妖艶さも漂わせていた。
「さあ行きましょう。本来、旅路の間にあなたを教団にご案内するはずが、ことごとく失敗してしまいました。ぼくのサポートがありながら、情けないことです」
フランシスはアレクサンドラを横抱きに抱き上げた。
「アレクサンドラ様の力は、相変わらずすごい。魔力が滾って溢れそうです。せっかくですから範囲を拡大して、王宮全ての者を眠らせてしまいましょう」
フランシスは魔法を唱え、アレクサンドラを抱えて悠々と王宮を歩く。廊下のここかしこに兵士がいたが、皆倒れて眠っていた。
「離して。私はこの国の人たちを救いたいの」
アレクサンドラは魔法が中途半端にかかっていて、意識はあるものの体が動かなかった。
「ぼくは正直、ここの国民も教団も、どうでもいいんです」
フランシスは優しい笑顔をアレクサンドラに向けた。
「あなたが欲しい」
「フランシスさん……」
オスカーの危惧していた通りだ。フランシスはどこか歪んでしまっている。幼少からの環境のせいだろう。アレクサンドラは悲しくなった。癒したいとは思うが、それはアレクサンドラの役目ではないはずだ。
宮殿から選定された美しい庭園に出ると、ふわりとアレクサンドラの身体が浮いた。
「……っ!」
「お話したでしょう。両親は自分の子供に、地位のある役職に就かせることに躍起だったと。それは、魔法王国の国家機密を知りたかったからです。つまりはマナの樹の生存方法。両親は敬虔な聖樹教信者なのです」
アレクサンドラは唇をかみしめた。意識が薄れていく。眠ってはいけないのに。
「ぼくは高い魔力を持って生まれた瞬間、スパイになることを強いられる運命だったんです。それがずっと嫌でした。軍学校では酷い目にもあいました。でも、それも全てアレクサンドラ様に会うための道筋だと思えるようになりました」
生まれながらに人柱になる運命を背負う少女。それゆえに、新生児のうちに親元から離され、隠れるように暮らしていた。使命を知ってからは、迷いながらも柔軟に受け入れていった。同じように強制された運命を持ち、乗り越えようとしているアレクサンドラの姿に、フランシスは共感を覚えた。
「ぼくは、両親を含めて誰も信じていませんでした。隊長に出会うまでは人も石ころも一緒でしたからね」
フランシスが薄く笑う。
「生涯を添い遂げる人はアレクサンドラ様しかいません。教団にアレクサンドラ様を連れ帰れば、夫婦として認めると約束されています。教団では幽閉なんてしません。温かい家庭を築いて、ゆっくりとマナの種を育てましょう」
アレクサンドラはいやいやをするように、緩慢に首を振った。
「これから少々魔力を使って、警備をかいくぐらなければなりません。魔力を増幅させてもらいますね」
(ダメ……!)
フランシスが寄せてくる唇に、アレクサンドラは全身の力を振り絞って、両手を突き出した。
「アレクサンドラ様、これは……」
アレクサンドラの右手には、ナイフが握られていた。刃の部分だ。手の平いっぱいに血が溜まり、粘りのある液体が肘まで滑り落ちる。
アレクサンドラは痛みで眠気を堪えていた。
「なかなか眠りに落ちないと思っていたら、こういうことでしたか」
フランシスはアレクサンドラの腕に舌を這わせて、血液を舐め取っていく。
「そんな気丈なところも好きです、アレクサンドラ様」
「んっ」
手の平の傷口に舌が触れる。痛みにアレクサンドラは顔を顰めた。
「今度こそ、もっと別の場所を味わいたかったのですが。あなたに免じて、今回はこれで我慢します」
フランシスは唇についた鮮血を指先で拭い、惜しむようにその指先の血を赤い舌で舐め取った。美しいその顔は、妖艶さも漂わせていた。
「さあ行きましょう。本来、旅路の間にあなたを教団にご案内するはずが、ことごとく失敗してしまいました。ぼくのサポートがありながら、情けないことです」
フランシスはアレクサンドラを横抱きに抱き上げた。
「アレクサンドラ様の力は、相変わらずすごい。魔力が滾って溢れそうです。せっかくですから範囲を拡大して、王宮全ての者を眠らせてしまいましょう」
フランシスは魔法を唱え、アレクサンドラを抱えて悠々と王宮を歩く。廊下のここかしこに兵士がいたが、皆倒れて眠っていた。
「離して。私はこの国の人たちを救いたいの」
アレクサンドラは魔法が中途半端にかかっていて、意識はあるものの体が動かなかった。
「ぼくは正直、ここの国民も教団も、どうでもいいんです」
フランシスは優しい笑顔をアレクサンドラに向けた。
「あなたが欲しい」
「フランシスさん……」
オスカーの危惧していた通りだ。フランシスはどこか歪んでしまっている。幼少からの環境のせいだろう。アレクサンドラは悲しくなった。癒したいとは思うが、それはアレクサンドラの役目ではないはずだ。
宮殿から選定された美しい庭園に出ると、ふわりとアレクサンドラの身体が浮いた。
「……っ!」
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