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二章 大きな運命を持つ少女
大きな運命を持つ少女 18
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「随分オレに懐いたじゃねえか」
ザックがアレクサンドラの柔らかな頬をつつく。アレクサンドラは顔を赤らめて、ぶんぶんと首を横に振った。
「ザックさん、気安くアレクサンドラ様に触らないでください」
「だから、アレクサンドラの腰に手を回してるお前に言われたくねえっての」
宿屋から出ると、数匹の猫がアレクサンドラたちを出迎えた。
「あっ、猫さん!」
アレクサンドラは猫たちに駆け寄る。
「昨日はありがとう。ごめんね、怪我してない?」
アレクサンドラは一匹一匹、労うように頭を撫でた。猫は気持ちよさそうにニャアと鳴く。しばらく猫たちと戯れていると、フランシスも「可愛いですね」とアレクサンドラの傍で屈んだ。
「ザックは来ないの?」
ザックは宿屋の出口から、一歩も動いていなかった。
「馬に乗るんじゃなかったのか。朝食に間に合わなくなるぞ」
「そうだった」
猫たちに別れを告げて、アレクサンドラは二人から馬術の基礎から習った。持ち前の運動神経に加え、馬と意思の疎通ができるので、アレクサンドラは瞬く間に、駈歩よりも早い襲歩までマスターした。
「アレクサンドラ様さすがです。もうお一人で十分に乗りこなせますよ」
「本当? 良かった」
ザックの隣で遠目から見守っていたフランシスは、アレクサンドラを馬から降ろすために駆け寄った。宿屋に戻ろうと話していると、アレクサンドラは後ろから腕を引っ張られた。
「おう、姉ちゃん、可愛いじゃねえか。一緒に飲んでくれよ」
三十代ほどの、赤ら顔の男だった。夜通し飲んでいた酔っ払いだろう。半歩分離れていても、ビールの匂いが漂っている。
「アレクサンドラ様に触らないでください」
フランシスはアレクサンドラを男から取り上げ、自分の背後に隠した。
「なんだよ兄ちゃん。……ん、姉ちゃんか? ああ、やっぱ兄ちゃんか。あんた、スゲーべっぴんだな。あんたほどべっぴんなら男でもいいや。付き合ってくれよ。おっ、手もすべすべ」
フランシスの細い眉がピクリと上がる。
(確かに、今まで見てきた女性の誰より、フランシスさんは美人だけど)
アレクサンドラは心の中で、酔っ払いに賛同した。若干離れた木の柵に寄りかかっているザックは、手を叩きながら大笑いしている。
「今日は、雹が降るそうですよ」
フランシスは酔っ払いからさりげなく手を抜いて、にっこりと微笑む。酔っぱらいはフランシスに見とれた。その隙に、フランシスはアレクサンドラと共に、男から数歩離れた。
「いや、こんなに晴れてるのに、雹なんか降るわけがないだろうよ」
「まあまあ、動かないでくださいね」
アレクサンドラは大地に、七色の光が走るのを見た。その瞬間、大剣ほどもある氷の刃が無数に空に出現し、男を囲むように大地に刺さった。
「あわわわ」
男は腰を抜かして、尻餅をついた。
「おや、降ってきたのは氷柱のようです。不思議な天気ですね」
フランシスは笑顔を男に残し、アレクサンドラを促して宿屋の方角に足を向ける。ついでのようにザックの正面にも、三本ほど氷柱が降った。
フランシスさんを怒らせてはいけない、とアレクサンドラは思った。
ザックがアレクサンドラの柔らかな頬をつつく。アレクサンドラは顔を赤らめて、ぶんぶんと首を横に振った。
「ザックさん、気安くアレクサンドラ様に触らないでください」
「だから、アレクサンドラの腰に手を回してるお前に言われたくねえっての」
宿屋から出ると、数匹の猫がアレクサンドラたちを出迎えた。
「あっ、猫さん!」
アレクサンドラは猫たちに駆け寄る。
「昨日はありがとう。ごめんね、怪我してない?」
アレクサンドラは一匹一匹、労うように頭を撫でた。猫は気持ちよさそうにニャアと鳴く。しばらく猫たちと戯れていると、フランシスも「可愛いですね」とアレクサンドラの傍で屈んだ。
「ザックは来ないの?」
ザックは宿屋の出口から、一歩も動いていなかった。
「馬に乗るんじゃなかったのか。朝食に間に合わなくなるぞ」
「そうだった」
猫たちに別れを告げて、アレクサンドラは二人から馬術の基礎から習った。持ち前の運動神経に加え、馬と意思の疎通ができるので、アレクサンドラは瞬く間に、駈歩よりも早い襲歩までマスターした。
「アレクサンドラ様さすがです。もうお一人で十分に乗りこなせますよ」
「本当? 良かった」
ザックの隣で遠目から見守っていたフランシスは、アレクサンドラを馬から降ろすために駆け寄った。宿屋に戻ろうと話していると、アレクサンドラは後ろから腕を引っ張られた。
「おう、姉ちゃん、可愛いじゃねえか。一緒に飲んでくれよ」
三十代ほどの、赤ら顔の男だった。夜通し飲んでいた酔っ払いだろう。半歩分離れていても、ビールの匂いが漂っている。
「アレクサンドラ様に触らないでください」
フランシスはアレクサンドラを男から取り上げ、自分の背後に隠した。
「なんだよ兄ちゃん。……ん、姉ちゃんか? ああ、やっぱ兄ちゃんか。あんた、スゲーべっぴんだな。あんたほどべっぴんなら男でもいいや。付き合ってくれよ。おっ、手もすべすべ」
フランシスの細い眉がピクリと上がる。
(確かに、今まで見てきた女性の誰より、フランシスさんは美人だけど)
アレクサンドラは心の中で、酔っ払いに賛同した。若干離れた木の柵に寄りかかっているザックは、手を叩きながら大笑いしている。
「今日は、雹が降るそうですよ」
フランシスは酔っ払いからさりげなく手を抜いて、にっこりと微笑む。酔っぱらいはフランシスに見とれた。その隙に、フランシスはアレクサンドラと共に、男から数歩離れた。
「いや、こんなに晴れてるのに、雹なんか降るわけがないだろうよ」
「まあまあ、動かないでくださいね」
アレクサンドラは大地に、七色の光が走るのを見た。その瞬間、大剣ほどもある氷の刃が無数に空に出現し、男を囲むように大地に刺さった。
「あわわわ」
男は腰を抜かして、尻餅をついた。
「おや、降ってきたのは氷柱のようです。不思議な天気ですね」
フランシスは笑顔を男に残し、アレクサンドラを促して宿屋の方角に足を向ける。ついでのようにザックの正面にも、三本ほど氷柱が降った。
フランシスさんを怒らせてはいけない、とアレクサンドラは思った。
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