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5 ニセモノの写真を見抜け!
ニセモノの写真を見抜け! 7
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「じゃあ、一段落したし、帰って家の仕事を手伝ってこようかな」
大地センパイが大きく伸びをした。
「そうだな、帰るとするか。今回もありがとう。またなにかトラブルがあったら、よろしく頼むよ」
生徒会長はわたしと隼人の肩に手をのせた。
そしてリーゼントセンパイと金髪センパイもつれて、四人で部室を出かけたところ、大地センパイだけ戻ってきた。
「二人はこれから、じっくり話すことがあるだろ。部室を使っていいから、帰りは鍵を閉めて、警備室に戻しておいて」
大地センパイは隼人の手をとって、鍵をにぎらせた。部室の鍵だろうね。
そして、隼人の肩に大きな手をのせた。
「隼人、前途多難だな。がんばれ。カゲながら応援する」
「ありがとうございます?」
言われた本人はきょとんとしている。わたしも意味がわからない。
大地センパイもいなくなると、わたしたちは二人きりになった。
そうだ。わたしは隼人を怒らせて、ケンカみたいになってたんだから、わたしから謝らなきゃ。
「隼人、ごめんなさい!」
わたしは頭をさげた。隼人は表情を改める。
「おれが怒ってる理由、わかってんの?」
「うん。ずっと、隼人に申しわけないことをしてた。わたしたち、きょうだいじゃないのにね……」
「マユカ……」
隼人は驚いたような、なにか期待するような、そんな瞳でわたしを見た。
「わたし、これから朝ご飯、自分で作る!」
「……?」
隼人はパチパチとまばたきをした。
「朝は弱いから、チンしてすぐ食べられるように、夜のうちにご飯を作っておく。隼人の分も作るから、一緒に食べようね」
「……いいけど」
「でもやっぱり、朝は隼人に起こしてほしい! 目覚ましは五個に増やす予定だけど、遅刻しそうで不安なんだよ。お願いしちゃダメ?」
隼人は、大きなため息をついた。
「マユカはおれが怒った理由、なんだと思ってんの?」
「だから、わたしが隼人に、家族みたいな甘え方しちゃったからでしょ? 頼りすぎて迷惑だったんだよね」
「……大地センパイが言ったこと、わかってきた」
そう言って、隼人はこめかみを押さえた。
「わたし、もっと自分でできるようにがんばるから、だから今までどおり、学校の行き帰りとか、一緒にいて。今日、すごくさみしかったよ」
「わかった。もういいよ、マユカだし」
なにそれ。わたしだからなに?
「マユカ、ひとつ聞いていい?」
「ひとつと言わず、いくつでも」
「マユカは朝、大地センパイに起こされたら、どう思う?」
「えっ」
わたしは寝相が悪いし、寝間着がめくれてお腹が出てるときもあるし、よだれがたれてるときもある。そんな姿を大地センパイに見られたら……。
「ヤダ、恥ずかしいよっ。想像させないで」
わたしは熱くなった頬を両手で押さえた。
「……おれに起こされるのは、恥ずかしくないの?」
「うん。だって、隼人だもん」
とたんに、隼人は眉をつり上げた。
「だから、それが腹立つんだってばっ」
「えっ、どうして? 悪いところがあったら直すから、怒らないで」
わたしは意味がわからなくて、おろおろしてしまう。
「そんなの直しようがないだろっ」
隼人は小声の早口で、はき捨てるように言った。
「もういい。マユカから、恥ずかしいから起こしにくるなって言われるまで、起こしてやるよ」
よくわからないけど、いままでどおり起こしに来てくれるみたい。よかった。
「じゃあ隼人、これ」
わたしは鞄から取り出して、隼人に差し出した。
返されてしまった、家の合鍵。
「明日から、またよろしくね」
「わかったよ」
鍵を受け取った隼人は、息をはきだしてから、気持ちを切り替えたように、わたしに笑顔を向けてくれた。うれしくて、わたしも笑顔になる。
それから「あとさ」と言って、ポンとわたしの頭に手をのせた。
「マユカはいつも強がってたけど、おじさんとおばさんに家にいてほしいんだろ?」
「……うん」
ずっとずっと、さみしかった。
でも、パパとママには言ったことがない。
「なら、言わなきゃだめだ。おじさんだちだってうすうす感じていても、マユカの強さに甘えて、気づかないフリをしちゃってるんだよ」
「言っても、いいかな?」
「もちろん」
「悪い子にならない?」
「ならないよ。いままではイイ子じゃなくて、都合のイイ子だったんだよ」
「そっか」
頭の上にある隼人の手を取って、胸の前で両手で包んだ。
やっぱり隼人が、一番わたしのことをわかってくれてるな。
「隼人、大好き」
「知ってる」
隼人は苦笑して、あいている手でわたしの肩をぽんとたたいた。
「じゃあ、帰るか」
「うん!」
わたしたちは一緒に家に帰った。
手をつなぎたいなあと思ったけど、また隼人に、小学生じゃないんだからと怒られそうだから、言わなかった。
でも、小学生の時よりも、もっともっと、隼人と一緒にいたいと思うんだよ。
この気持ちは、なんだろうね。
大地センパイが大きく伸びをした。
「そうだな、帰るとするか。今回もありがとう。またなにかトラブルがあったら、よろしく頼むよ」
生徒会長はわたしと隼人の肩に手をのせた。
そしてリーゼントセンパイと金髪センパイもつれて、四人で部室を出かけたところ、大地センパイだけ戻ってきた。
「二人はこれから、じっくり話すことがあるだろ。部室を使っていいから、帰りは鍵を閉めて、警備室に戻しておいて」
大地センパイは隼人の手をとって、鍵をにぎらせた。部室の鍵だろうね。
そして、隼人の肩に大きな手をのせた。
「隼人、前途多難だな。がんばれ。カゲながら応援する」
「ありがとうございます?」
言われた本人はきょとんとしている。わたしも意味がわからない。
大地センパイもいなくなると、わたしたちは二人きりになった。
そうだ。わたしは隼人を怒らせて、ケンカみたいになってたんだから、わたしから謝らなきゃ。
「隼人、ごめんなさい!」
わたしは頭をさげた。隼人は表情を改める。
「おれが怒ってる理由、わかってんの?」
「うん。ずっと、隼人に申しわけないことをしてた。わたしたち、きょうだいじゃないのにね……」
「マユカ……」
隼人は驚いたような、なにか期待するような、そんな瞳でわたしを見た。
「わたし、これから朝ご飯、自分で作る!」
「……?」
隼人はパチパチとまばたきをした。
「朝は弱いから、チンしてすぐ食べられるように、夜のうちにご飯を作っておく。隼人の分も作るから、一緒に食べようね」
「……いいけど」
「でもやっぱり、朝は隼人に起こしてほしい! 目覚ましは五個に増やす予定だけど、遅刻しそうで不安なんだよ。お願いしちゃダメ?」
隼人は、大きなため息をついた。
「マユカはおれが怒った理由、なんだと思ってんの?」
「だから、わたしが隼人に、家族みたいな甘え方しちゃったからでしょ? 頼りすぎて迷惑だったんだよね」
「……大地センパイが言ったこと、わかってきた」
そう言って、隼人はこめかみを押さえた。
「わたし、もっと自分でできるようにがんばるから、だから今までどおり、学校の行き帰りとか、一緒にいて。今日、すごくさみしかったよ」
「わかった。もういいよ、マユカだし」
なにそれ。わたしだからなに?
「マユカ、ひとつ聞いていい?」
「ひとつと言わず、いくつでも」
「マユカは朝、大地センパイに起こされたら、どう思う?」
「えっ」
わたしは寝相が悪いし、寝間着がめくれてお腹が出てるときもあるし、よだれがたれてるときもある。そんな姿を大地センパイに見られたら……。
「ヤダ、恥ずかしいよっ。想像させないで」
わたしは熱くなった頬を両手で押さえた。
「……おれに起こされるのは、恥ずかしくないの?」
「うん。だって、隼人だもん」
とたんに、隼人は眉をつり上げた。
「だから、それが腹立つんだってばっ」
「えっ、どうして? 悪いところがあったら直すから、怒らないで」
わたしは意味がわからなくて、おろおろしてしまう。
「そんなの直しようがないだろっ」
隼人は小声の早口で、はき捨てるように言った。
「もういい。マユカから、恥ずかしいから起こしにくるなって言われるまで、起こしてやるよ」
よくわからないけど、いままでどおり起こしに来てくれるみたい。よかった。
「じゃあ隼人、これ」
わたしは鞄から取り出して、隼人に差し出した。
返されてしまった、家の合鍵。
「明日から、またよろしくね」
「わかったよ」
鍵を受け取った隼人は、息をはきだしてから、気持ちを切り替えたように、わたしに笑顔を向けてくれた。うれしくて、わたしも笑顔になる。
それから「あとさ」と言って、ポンとわたしの頭に手をのせた。
「マユカはいつも強がってたけど、おじさんとおばさんに家にいてほしいんだろ?」
「……うん」
ずっとずっと、さみしかった。
でも、パパとママには言ったことがない。
「なら、言わなきゃだめだ。おじさんだちだってうすうす感じていても、マユカの強さに甘えて、気づかないフリをしちゃってるんだよ」
「言っても、いいかな?」
「もちろん」
「悪い子にならない?」
「ならないよ。いままではイイ子じゃなくて、都合のイイ子だったんだよ」
「そっか」
頭の上にある隼人の手を取って、胸の前で両手で包んだ。
やっぱり隼人が、一番わたしのことをわかってくれてるな。
「隼人、大好き」
「知ってる」
隼人は苦笑して、あいている手でわたしの肩をぽんとたたいた。
「じゃあ、帰るか」
「うん!」
わたしたちは一緒に家に帰った。
手をつなぎたいなあと思ったけど、また隼人に、小学生じゃないんだからと怒られそうだから、言わなかった。
でも、小学生の時よりも、もっともっと、隼人と一緒にいたいと思うんだよ。
この気持ちは、なんだろうね。
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