上 下
27 / 32
5 ニセモノの写真を見抜け!

ニセモノの写真を見抜け! 3

しおりを挟む
「や、やっぱり、隼人も呼びます!」
 わたしはスマートフォンを取り出して、メッセージを送った。
 隼人、来てくれるかな……。
 でも、それを期待して待っているだけじゃいけないよね。
 わたしはわたしで考えなきゃ。
 わたしたちで話したのは、移動時間のこと。
 金髪センパイの家から学校まで、本当に一時間かかるのか。
 美術館から学校まで、本当に二時間半かかるのか。
 電車の特急を使ったり、自家用車を使ったりした場合を考えると、もっと早く到着することもできる。
 金髪センパイの場合は、車を飛ばせば四十分間で移動できる可能性があった。
 でもそれは、渋滞に引っかからない場合のこと。そううまくいくかな? って大地センパイが言ってた。
 リーゼントセンパイの場合は、奇跡的な乗り継ぎができたとして、計算上では二時間に縮まった。仮に二時間で移動できたとしても、学校に着くのは五時。警備員が巡回から戻ってくる時間なので、犯行は不可能だった。
 ということは、金髪センパイが犯人なのかな? どうなんだろう……。
 やっぱり、決定打がみつからなかった。
 頭を抱えていると、
「チース」
「来てやったぜ」
 金髪センパイとリーゼントセンパイが、部室に入ってきた。
「あわわ、来ちゃった……!」
 写真で見るより、ワルそうな感じだよ!
 金髪センパイは頭の上半分の髪を結ぶハーフアップにしていている。Yシャツのボタンをいくつか外して、胸元に金のネックレスが見えていた。
 リーゼントセンパイは眉を短くしていて、三白眼で目つきが悪い。ブレザーを短くして、スラックスを下げて、両手をそのポケットに入れている。
 さすが不良さん。こ、こわい……!
「俺たちはちゃんと写真まで提供してるんだからな」
「これで、どっちも犯人じゃねえとか言ったら、ブッとばすぞ」
 うわあっ、ブッとばされる!
「きみたちには、撮影日の確認ができるものを持ってきてほしいと頼んだはずだが、持ってきているか?」
 生徒会長は不良さんにひるみもせずに、堂々としている。すごいなあ。
「わかってる。ほらよ」
 金髪センパイが、生徒会長にスマートフォンを渡した。
 その画面には、テーブルに置いてあるのと同じ、誕生会の写真が映っていた。
「そのスマホで写したんだ」
 生徒会長が詳細ボタンを押すと、撮影日と時間が表示される。
 先週の日曜日の、三時五十分で間違いない。
「きみは?」
「俺は、写した写真はすぐにパソコンに移動するんだよ」
 そう言ったリーゼントセンパイは、ノートパソコンを机に置いて、美術館の写真を表示させた。
 そこから交代した生徒会長が詳細画面を開いた。作成日時も更新日時も、先週の日曜日の三時で間違いなかった。
「問題なし、か……」
 生徒会長は眉を寄せてつぶやいた。
「あとは、なにを確認したいんだよ。俺たちは逃げも隠れもしねえけど?」
 リーゼントセンパイが言った。ふるっと長いリーゼントが揺れる。余裕シャクシャクという感じだ。
 もしかして、二人とも、本当に犯人じゃないのかな……?
 でも、タイミング的に、この二人しかいないと思うんだけど。
 どうしよう、もう本当に時間がないよ!
「ほら、結局、俺たちが犯人だっていうショーコはなかったんだろ? どう落とし前をつけてくれんだよ」
 金髪センパイが生徒会長にせまった。
「いつもすましてるおキレーな生徒会長には、ぜひギャフンと言ってもらいたいぜ」
「そっちのかわいい女の子が、遊んでくれるんでもいいけどな」
「えっ、わたし?」
 わたしはビクリと肩を震わせた。
 不良の遊びってなんだろう。なんだか、怖そうだよ。
「紫苑のことはどうでもいいが、うちのかわいい後輩には関わらないように」
 大地センパイがすっと立ち上がって、わたしを背中にかくしてくれた。
「大地、ぼくのことはどうでもいいとは、聞き捨てならない」
「おまえは自力で、どうにでもなるだろ」
 そんな話をしていると、外から駆け足が聞こえて、乱暴にドアが開いた。
「マユカ、大丈夫か⁉」
「隼人っ!」
 髪や制服を乱した隼人が部室に入ってきた。ゼイゼイと息を切らせている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~

友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。 全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。

お姫様の願い事

月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

あさがおと夏の夜

あさの紅茶
児童書・童話
夏休み、両親が共働きのため祖父母の家に預けられた小学六年生の真央。 代わり映えのない日々を過ごしているたが、ある夜のこと、困っているあさがおの妖精に出会う。 ――――マンネリ化した夏休みを過ごしているあなたへ贈りたい、ちょっぴり不思議な気持ちになれる夏の夜のお話。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

理想の王妃様

青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。 王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。 王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題! で、そんな二人がどーなったか? ざまぁ?ありです。 お気楽にお読みください。

【完結】誰かの親切をあなたは覚えていますか?

なか
児童書・童話
私を作ってくれた 私らしくしてくれた あの優しい彼らを 忘れないためにこの作品を

剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?三本目っ!もうあせるのはヤメました。

月芝
児童書・童話
世に邪悪があふれ災いがはびこるとき、地上へと神がつかわす天剣(アマノツルギ)。 ひょんなことから、それを創り出す「剣の母」なる存在に選ばれてしまったチヨコ。 辺境の隅っこ暮らしが一転して、えらいこっちゃの毎日を送るハメに。 第三の天剣を手に北の地より帰還したチヨコ。 のんびりする暇もなく、今度は西へと向かうことになる。 新たな登場人物たちが絡んできて、チヨコの周囲はてんやわんや。 迷走するチヨコの明日はどっちだ! 天剣と少女の冒険譚。 剣の母シリーズ第三部、ここに開幕! お次の舞台は、西の隣国。 平原と戦士の集う地にてチヨコを待つ、ひとつの出会い。 それはとても小さい波紋。 けれどもこの出会いが、後に世界をおおきく揺るがすことになる。 人の業が産み出した古代の遺物、蘇る災厄、燃える都……。 天剣という強大なチカラを預かる自身のあり方に悩みながらも、少しずつ前へと進むチヨコ。 旅路の果てに彼女は何を得るのか。 ※本作品は単体でも楽しめるようになっておりますが、できればシリーズの第一部と第二部 「剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?ただいまお相手募集中です!」 「剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?二本目っ!まだまだお相手募集中です!」 からお付き合いいただけましたら、よりいっそうの満腹感を得られることまちがいなし。 あわせてどうぞ、ご賞味あれ。

鎌倉西小学校ミステリー倶楽部

澤田慎梧
児童書・童話
【「鎌倉猫ヶ丘小ミステリー倶楽部」に改題して、アルファポリスきずな文庫より好評発売中!】 https://kizuna.alphapolis.co.jp/book/11230 【「第1回きずな児童書大賞」にて、「謎解きユニーク探偵賞」を受賞】 市立「鎌倉西小学校」には不思議な部活がある。その名も「ミステリー倶楽部」。なんでも、「学校の怪談」の正体を、鮮やかに解明してくれるのだとか……。 学校の中で怪奇現象を目撃したら、ぜひとも「ミステリー倶楽部」に相談することをオススメする。 案外、つまらない勘違いが原因かもしれないから。 ……本物の「お化け」や「妖怪」が出てくる前に、相談しに行こう。 ※本作品は小学校高学年以上を想定しています。作中の漢字には、ふりがなが多く振ってあります。 ※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。 ※本作品は、三人の主人公を描いた連作短編です。誰を主軸にするかで、ジャンルが少し変化します。 ※カクヨムさんにも投稿しています(初出:2020年8月1日)

処理中です...