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4 盗まれた貴重品
盗まれた貴重品 5
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「犯人は、その二人不良のどちらかだと」
大地センパイが先をうながした。
「そうだ。腹いせに、ぼくの大切な人形を盗んだに違いない」
「生徒会室に人形があることは、生徒会メンバーと、その不良二人しか知らないんだったな」
「そうだ。厳密にいえば、警備員や生徒会の顧問の先生も知っているが、人形を盗むことはしないだろう」
「どうして、そう言い切れるんですか? それに、生徒会のメンバーの誰かが盗んだって可能性もあるじゃないですか」
わたしはそう言った。
確かにタイミングでいえば、不良さんの可能性が高いと思うけど、決めつけはよくないよね。
すると生徒会長は、よくぞ聞いてくれたと言わんばかりに、胸を張った。
「それは、生徒会のメンバーや警備員には、美香の人形を渡しているからだ。盗む必要はない。すでに持っているのだから」
「紫苑……、そういうのを人に押しつけるな」
大地センパイがひたいを押さえた。
「なにを言っているんだ、みんな喜んでいたぞ。大地も欲しいなら、作ってやらんでもない」
「いらないよ」
生徒会長の妹愛があふれすぎてる!
「人形を盗むって、別に欲しいからって理由だけじゃないだろう。おまえに嫌がらせをしたいのだとしたら、誰だって可能性はある」
「その筆頭が、不良だろう。まず不良たちの可能性をつぶしてから、そのほかに目を向けるのが効率的だと、ぼくは思う。そのほかを考えるには、範囲が広すぎるからな」
たしかに!
なにかわたしも発言をしないと。わたしがいなくても、解決しちゃいそうだよ!
「質問です! どうして盗まれたのが日曜日だってわかるんですか?」
「もちろん、土曜日まではあって、月曜日になくなっていたからだ。この一週間、ぼくは盗まれた時間を絞っていた」
「絞れたのか?」
「ああ」
生徒会長は大地センパイにうなずいてから、紙とペンを取り出した。
「ぼくが警備員に聞いた話をまとめると、犯行時刻がだいたいわかる。警備員の話が軸になるから、この警備員がウソを言っていたら、すべてが成り立たなくなる。ただ、ぼくは警備員と親しくしているし、ここは信用していいだろう」
「仕事を失うリスクをおかしてまで、おまえの人形を盗んだりしないだろうしな」
「ひっかかる言い方だが、そういう考えもあるな」
わたしは生徒会長の手元をのぞきこんだ。昨日わたしが書いたような時間割を作っていく。
生徒会長の爪はきれいにみがかれていて、指先まで形がよかった。ちょっぴり、触りたくなっちゃう手だよ。ピアニストの手とか、パティシエの手とか、ついつい見ちゃうよね。
「結論から先に言うと、日曜日の午後三時から五時半の間に盗まれた可能性が高い」
生徒会長は表の午後三時~五時三十分のところに、「犯行」と書いた。
「マユカくんは、部室の鍵がどこにあるか、知っているかい?」
「いいえ」
生徒会長に聞かれて、わたしは首を横に振った。
「正門にある、警備室に置いてあるんだ。生徒会室の鍵もそこで保管されている。もちろんここには、警備員が常駐している」
「マユカちゃんもこの部室を使う時には、警備室から鍵をもらって、自由に使っていいからね」
ありがとうございますと、わたしは大地センパイにお礼を言った。
「日曜日にも部活があって、生徒の出入りは多い。警備員が正門にずっといるからといって、生徒の出入りで犯人を絞ることは不可能だ。そこで重要になるのが、警備員の巡回時間だ」
生徒会長は表の、朝七時、午後三時、夜十時に「巡回」と書いた。
「平日と土曜日はまた時間が違うそうだが、日曜日は必ず、この時間に学校を回っていると言っていた。先週の日曜日もそうだった」
「あっ! 午後三時って、“犯行”と“巡回”が重なりますね!」
「そう。そこが重要なんだ」
生徒会長は、器用にペンをクルクルと指の上で回した。なんかカッコいい。
「警備員が巡回するとき、一つ一つ部屋を開けて、部屋に変ったことがないか、なにも問題がないかをチェックする。だから警備員は、生徒会室の中の様子も見ている。午前中に生徒会室に入った時は、人形はあったそうだ。そして問題の、三時の巡回で……」
「人形がなくなっていたんですね?」
「いや、あった」
なくなってないじゃん!
大地センパイが先をうながした。
「そうだ。腹いせに、ぼくの大切な人形を盗んだに違いない」
「生徒会室に人形があることは、生徒会メンバーと、その不良二人しか知らないんだったな」
「そうだ。厳密にいえば、警備員や生徒会の顧問の先生も知っているが、人形を盗むことはしないだろう」
「どうして、そう言い切れるんですか? それに、生徒会のメンバーの誰かが盗んだって可能性もあるじゃないですか」
わたしはそう言った。
確かにタイミングでいえば、不良さんの可能性が高いと思うけど、決めつけはよくないよね。
すると生徒会長は、よくぞ聞いてくれたと言わんばかりに、胸を張った。
「それは、生徒会のメンバーや警備員には、美香の人形を渡しているからだ。盗む必要はない。すでに持っているのだから」
「紫苑……、そういうのを人に押しつけるな」
大地センパイがひたいを押さえた。
「なにを言っているんだ、みんな喜んでいたぞ。大地も欲しいなら、作ってやらんでもない」
「いらないよ」
生徒会長の妹愛があふれすぎてる!
「人形を盗むって、別に欲しいからって理由だけじゃないだろう。おまえに嫌がらせをしたいのだとしたら、誰だって可能性はある」
「その筆頭が、不良だろう。まず不良たちの可能性をつぶしてから、そのほかに目を向けるのが効率的だと、ぼくは思う。そのほかを考えるには、範囲が広すぎるからな」
たしかに!
なにかわたしも発言をしないと。わたしがいなくても、解決しちゃいそうだよ!
「質問です! どうして盗まれたのが日曜日だってわかるんですか?」
「もちろん、土曜日まではあって、月曜日になくなっていたからだ。この一週間、ぼくは盗まれた時間を絞っていた」
「絞れたのか?」
「ああ」
生徒会長は大地センパイにうなずいてから、紙とペンを取り出した。
「ぼくが警備員に聞いた話をまとめると、犯行時刻がだいたいわかる。警備員の話が軸になるから、この警備員がウソを言っていたら、すべてが成り立たなくなる。ただ、ぼくは警備員と親しくしているし、ここは信用していいだろう」
「仕事を失うリスクをおかしてまで、おまえの人形を盗んだりしないだろうしな」
「ひっかかる言い方だが、そういう考えもあるな」
わたしは生徒会長の手元をのぞきこんだ。昨日わたしが書いたような時間割を作っていく。
生徒会長の爪はきれいにみがかれていて、指先まで形がよかった。ちょっぴり、触りたくなっちゃう手だよ。ピアニストの手とか、パティシエの手とか、ついつい見ちゃうよね。
「結論から先に言うと、日曜日の午後三時から五時半の間に盗まれた可能性が高い」
生徒会長は表の午後三時~五時三十分のところに、「犯行」と書いた。
「マユカくんは、部室の鍵がどこにあるか、知っているかい?」
「いいえ」
生徒会長に聞かれて、わたしは首を横に振った。
「正門にある、警備室に置いてあるんだ。生徒会室の鍵もそこで保管されている。もちろんここには、警備員が常駐している」
「マユカちゃんもこの部室を使う時には、警備室から鍵をもらって、自由に使っていいからね」
ありがとうございますと、わたしは大地センパイにお礼を言った。
「日曜日にも部活があって、生徒の出入りは多い。警備員が正門にずっといるからといって、生徒の出入りで犯人を絞ることは不可能だ。そこで重要になるのが、警備員の巡回時間だ」
生徒会長は表の、朝七時、午後三時、夜十時に「巡回」と書いた。
「平日と土曜日はまた時間が違うそうだが、日曜日は必ず、この時間に学校を回っていると言っていた。先週の日曜日もそうだった」
「あっ! 午後三時って、“犯行”と“巡回”が重なりますね!」
「そう。そこが重要なんだ」
生徒会長は、器用にペンをクルクルと指の上で回した。なんかカッコいい。
「警備員が巡回するとき、一つ一つ部屋を開けて、部屋に変ったことがないか、なにも問題がないかをチェックする。だから警備員は、生徒会室の中の様子も見ている。午前中に生徒会室に入った時は、人形はあったそうだ。そして問題の、三時の巡回で……」
「人形がなくなっていたんですね?」
「いや、あった」
なくなってないじゃん!
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