上 下
23 / 32
4 盗まれた貴重品

盗まれた貴重品 5

しおりを挟む
「犯人は、その二人不良のどちらかだと」
 大地センパイが先をうながした。
「そうだ。腹いせに、ぼくの大切な人形を盗んだに違いない」
「生徒会室に人形があることは、生徒会メンバーと、その不良二人しか知らないんだったな」
「そうだ。厳密にいえば、警備員や生徒会の顧問の先生も知っているが、人形を盗むことはしないだろう」
「どうして、そう言い切れるんですか? それに、生徒会のメンバーの誰かが盗んだって可能性もあるじゃないですか」
 わたしはそう言った。
 確かにタイミングでいえば、不良さんの可能性が高いと思うけど、決めつけはよくないよね。
 すると生徒会長は、よくぞ聞いてくれたと言わんばかりに、胸を張った。
「それは、生徒会のメンバーや警備員には、美香の人形を渡しているからだ。盗む必要はない。すでに持っているのだから」
「紫苑……、そういうのを人に押しつけるな」
 大地センパイがひたいを押さえた。
「なにを言っているんだ、みんな喜んでいたぞ。大地も欲しいなら、作ってやらんでもない」
「いらないよ」
 生徒会長の妹愛があふれすぎてる!
「人形を盗むって、別に欲しいからって理由だけじゃないだろう。おまえに嫌がらせをしたいのだとしたら、誰だって可能性はある」
「その筆頭が、不良だろう。まず不良たちの可能性をつぶしてから、そのほかに目を向けるのが効率的だと、ぼくは思う。そのほかを考えるには、範囲が広すぎるからな」
 たしかに!
 なにかわたしも発言をしないと。わたしがいなくても、解決しちゃいそうだよ!
「質問です! どうして盗まれたのが日曜日だってわかるんですか?」
「もちろん、土曜日まではあって、月曜日になくなっていたからだ。この一週間、ぼくは盗まれた時間を絞っていた」
「絞れたのか?」
「ああ」
 生徒会長は大地センパイにうなずいてから、紙とペンを取り出した。
「ぼくが警備員に聞いた話をまとめると、犯行時刻がだいたいわかる。警備員の話が軸になるから、この警備員がウソを言っていたら、すべてが成り立たなくなる。ただ、ぼくは警備員と親しくしているし、ここは信用していいだろう」
「仕事を失うリスクをおかしてまで、おまえの人形を盗んだりしないだろうしな」
「ひっかかる言い方だが、そういう考えもあるな」
 わたしは生徒会長の手元をのぞきこんだ。昨日わたしが書いたような時間割を作っていく。
 生徒会長の爪はきれいにみがかれていて、指先まで形がよかった。ちょっぴり、触りたくなっちゃう手だよ。ピアニストの手とか、パティシエの手とか、ついつい見ちゃうよね。
「結論から先に言うと、日曜日の午後三時から五時半の間に盗まれた可能性が高い」
 生徒会長は表の午後三時~五時三十分のところに、「犯行」と書いた。
「マユカくんは、部室の鍵がどこにあるか、知っているかい?」
「いいえ」
 生徒会長に聞かれて、わたしは首を横に振った。
「正門にある、警備室に置いてあるんだ。生徒会室の鍵もそこで保管されている。もちろんここには、警備員が常駐している」
「マユカちゃんもこの部室を使う時には、警備室から鍵をもらって、自由に使っていいからね」
 ありがとうございますと、わたしは大地センパイにお礼を言った。
「日曜日にも部活があって、生徒の出入りは多い。警備員が正門にずっといるからといって、生徒の出入りで犯人を絞ることは不可能だ。そこで重要になるのが、警備員の巡回時間だ」
 生徒会長は表の、朝七時、午後三時、夜十時に「巡回」と書いた。
「平日と土曜日はまた時間が違うそうだが、日曜日は必ず、この時間に学校を回っていると言っていた。先週の日曜日もそうだった」
「あっ! 午後三時って、“犯行”と“巡回”が重なりますね!」
「そう。そこが重要なんだ」
 生徒会長は、器用にペンをクルクルと指の上で回した。なんかカッコいい。
「警備員が巡回するとき、一つ一つ部屋を開けて、部屋に変ったことがないか、なにも問題がないかをチェックする。だから警備員は、生徒会室の中の様子も見ている。午前中に生徒会室に入った時は、人形はあったそうだ。そして問題の、三時の巡回で……」
「人形がなくなっていたんですね?」
「いや、あった」
 なくなってないじゃん!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~

友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。 全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。

おちゅうしゃ

月尊優
児童書・童話
おちゅうしゃは痛(いた)い? おさない人はおちゅうしゃがこわかったと思(おも)います。 大人のひとは痛くないのかな? ふしぎでした。

お姫様の願い事

月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

ころころ どんぶらこ

文野志暢
児童書・童話
あるところに桃が川をどんぶらこと流れていました。 流れ着いた先はなんと……!?

あさがおと夏の夜

あさの紅茶
児童書・童話
夏休み、両親が共働きのため祖父母の家に預けられた小学六年生の真央。 代わり映えのない日々を過ごしているたが、ある夜のこと、困っているあさがおの妖精に出会う。 ――――マンネリ化した夏休みを過ごしているあなたへ贈りたい、ちょっぴり不思議な気持ちになれる夏の夜のお話。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

理想の王妃様

青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。 王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。 王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題! で、そんな二人がどーなったか? ざまぁ?ありです。 お気楽にお読みください。

ぬらりひょんと私

四宮 あか
児童書・童話
私の部屋で私の漫画を私より先に読んでいるやつがいた。 俺こういうものです。 差し出されたタブレットに開かれていたのはwiki…… 自己紹介、タブレットでwiki開くの? 私の部屋でくつろいでる変な奴は妖怪ぬらりひょんだったのだ。 ぬらりひょんの術を破った私は大変なことに巻き込まれた……

処理中です...