われら名探偵部! どんな謎もヒラメキ解決☆

じゅん

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3 まだまだ続くよ! 試練その3

まだまだ続くよ! 試練その3 3

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 一本一本、☆印がないか調べるのは不可能だよ。
 少なくても、今日中にすべての木を見て回ることはできそうもない。
「生徒会長、ほかにヒントはないんですか? それだけじゃ、さすがにムリです!」
 生徒会長はフェンス越しに校庭を見下ろしながら、
「仲間外れの木」
 とつぶやいた。
「仲間外れの木?」
「そう。カプセルを掘り返すのだから、もちろん目立つ木の下に埋めようと考えたよ」
 それは冬の寒い日で、生徒会長と美香センパイはコートを着ていた。

 ――この木がいいね。仲間外れの木だから、とてもわかりやすいよ。

 生徒会長はそう言って、その木の下にカプセルを埋めることに決めたという。
「なにが仲間外れだったのか……。ただ、太い木の幹から顔を上げていくと、緑の葉の隙間から太陽が輝いて見えたのは覚えてる」
「太くて、葉っぱがはえた木」
 わたしは周囲を見渡した。
 そんなの、全部じゃん!
「あと、ランダムにはえているんじゃなくて、きちんと並んで植えられている木だったと思う」
 そうなると、雑木林みたいにたくさん木が生い茂っている場所じゃなくて、道沿いとかに植えられている木が対象になりそう。
 でも、それだって、かなり多いよ。
「なるほど、だいぶ絞られてきたね」
「えっ⁉」
 隼人の言葉に、わたしはびっくりしてしまった。
「もう、わかったの?」
「少しはね」
「教えて! あっ、待って。ヒントをちょうだい!」
 まだぜんぜんわからないんだもん。もっと考えたいよ。
「説明すると、ちょっと長くなるかも」
「いいよ。むしろお願いします!」
 わたしは両手でこぶしをにぎって隼人に頼んだ。
「じゃあ、樹木の基本のキからいこうか」
 隼人が空を見上げたので、わたしもつられた。雲の少ない青空が広がっていて、日差しは優しく風も柔らかい。夕方に近づいているから日が傾いて、わたしたちの影は長く伸びている。
「まずは、樹木の種類を知っておく必要がある。分類の仕方はいくつもあるけれど、オーソドックスでわかりやすいものとして、常緑樹と落葉樹、針葉樹と広葉樹の組み合わせで、四種類にわけることができる」
 小学校で習ったような気もするけど、忘れてた。
「常緑樹は一年中緑の葉をつけている木、落葉樹は秋に紅葉して冬に葉が落ちる木、針葉樹はクリスマスツリーのような傘型の木で、広葉樹は枝を横に伸ばして木のてっぺんにも丸みがあるトランプのクラブみたいな形。ざっくりした特徴だけどね」
「なるほど、わかりやすい」
 さすが隼人! 頭の中に辞書でも入ってるんじゃないかな。
 センパイたちも、黙って隼人の説明を聞いている。
「四つの特徴を組み合わせた樹木として、常緑針葉樹、落葉針葉樹、常緑広葉樹、落葉広葉樹に分類されるけど、この学校には全ての種類があって、これだけで絞り込むのは無理そうだ」
 うん、いまのところなんとかついていけてる、かな?
 とにかく、冬に葉が落ちる木とそうじゃない木があって、その中にも、とがった木とふんわりした木があるってことだもんね。
「もうひとつ、学校にある樹木の役割について考えると、絞り込みやすくなる」
「木に、役割なんてあるの?」
 隼人はコクリとうなずいた。
「前に本で読んだんだ。それまでおれも、どうして学校に木がたくさんあるのかなんて、考えたことがなかった。敷地を囲うようにしている木は、校内を隠すための目隠しかな、くらいには思っていたけど」
 隼人の話をまとめると、こんな感じだった。
 校舎周辺でいえば、一日中強い日差しが当たる南側には、夏は強い日差しをさえぎり、冬は葉を落として太陽の光を教室に届けることができる落葉樹を植える。
 校舎と民家が近い場所には、火事が起きても火の粉を防ぐために、防火樹としての役割を果たす常緑広葉樹がピッタリ。
 校庭の周辺には、大気汚染や風に強い常緑樹が選ばれる。
 そして、卒業式や入学式では欠かせない桜が、門や体育館の周辺などに植えられる。
 ……だって!
 樹木はただそこにあるだけではなくて、ちゃんと役割があるんだね。
 なんでも植えればいいってわけじゃなかったんだ。
「そうして見ると、この学校の木も、ルールにしたがって植えられていることがわかる」
 隼人が指をさす方向に目を向けた。
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