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3 まだまだ続くよ! 試練その3
まだまだ続くよ! 試練その3 2
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「ぼくが小学校一年生の時に埋めた、タイムカプセルの場所を探してほしい」
「兄さん!」
クールに見えていた美香センパイが、あわてたように立ち上がった。
「兄さん、それは探さないでって言ったじゃない!」
「そう言われたって、美香のメッセージを読みたいよ」
「ははっ、また始まった」
大地センパイは笑って椅子に座り、チョコレートクッキーを口に入れた。
「どういうことですか?」
「この二人は、将来の自分に向けてメッセージを書いて、タイムカプセルとして埋めたんだ。紫苑が小学一年生で、美香が年長のときだな。で、紫苑が中学一年生になったら掘り返そうと決めていた」
「掘り返したんですか?」
「その場所がわからないから、こうなってるんだろ」
大地センパイは親指で涼風兄妹をさした。
「少なくても、紫苑はな」
ちょっとひっかかる言い方だな。
「美香センパイは、埋めた場所を覚えているってことですか?」
「おそらく。でも、かたくなに場所を言わないんだよ」
なるほど。
なにを書いたのか覚えていれば、いまさら見たくないって気持ちにもなるかもしれない。昔の自分からのメッセージって、なんか照れくさそうだよね。
「生徒会長、わたしと隼人で、タイムカプセルを見つけ出します! 覚えていることを詳しく教えてください」
「ちょっと、マユカちゃんっ」
「タイムカプセルを見つけないと、生徒会長が入部してくれなくて、廃部になっちゃうんですよ! 恥ずかしいのは我慢してください」
美香センパイは言葉に詰まったように口を閉ざした。
ナマイキ言ってごめんなさい、美香センパイ。これもすべて、名探偵部のためなんです!
「説明しやすくなると思うから、屋上に行こうか」
生徒会長はそう言って歩き出した。
わたしたちは部室棟から出て、五人でぞろぞろと校舎の屋上に向かった。
誰もいない屋上は、高いフェンスで囲われている。
校庭からは運動部の掛け声や、吹奏楽部の音楽も聞こえてくる。
生徒会長はフェンスに手をかけて、校庭を見下ろした。
この学校は小学校から大学まで揃っているから、たくさんの木の奥に、その校舎が小さく見える。
「ぼくは小学校からここの学校に通っているから、掘り出すタイミングに合わせて、中学校の校舎ある敷地内に、タイムカプセルを埋めることにしたんだ。……たぶん」
「たぶん?」
「小学一年生だったからね、間違えて、高校や大学の敷地に埋めてしまったかもしれない。少なくても、小学校の敷地ではないはずだけど」
「えっ……」
あの、ものすごく、探す範囲が広いんですけど。
わたしはブワリと、冷汗がふき出した。
「タイムカプセルは木の下に埋めた。その木には目印に、根元の近くに☆印を刻んでおいた」
「木の下に埋めたんですね?」
「そう」
「どの種類の木ですか?」
「それがわかれば、ぼくだってもう見つけている」
うわあ、想像以上に難しそうだよ!
「ちなみに、小学校から大学まで、すべての敷地を合わせると四万坪以上ある」
ぼそりと隼人がわたしに言った。
四万坪がぜんぜんイメージできないけど、とにかく広いのは、今見てるからわかるよ!
その、ものすごく広い敷地に、木は無数にはえている。何千本……何万本もあるかもしれない。
一本一本、☆印がないか調べるのは不可能だよ。
少なくても、今日中にすべての木を見て回ることはできそうもない。
「兄さん!」
クールに見えていた美香センパイが、あわてたように立ち上がった。
「兄さん、それは探さないでって言ったじゃない!」
「そう言われたって、美香のメッセージを読みたいよ」
「ははっ、また始まった」
大地センパイは笑って椅子に座り、チョコレートクッキーを口に入れた。
「どういうことですか?」
「この二人は、将来の自分に向けてメッセージを書いて、タイムカプセルとして埋めたんだ。紫苑が小学一年生で、美香が年長のときだな。で、紫苑が中学一年生になったら掘り返そうと決めていた」
「掘り返したんですか?」
「その場所がわからないから、こうなってるんだろ」
大地センパイは親指で涼風兄妹をさした。
「少なくても、紫苑はな」
ちょっとひっかかる言い方だな。
「美香センパイは、埋めた場所を覚えているってことですか?」
「おそらく。でも、かたくなに場所を言わないんだよ」
なるほど。
なにを書いたのか覚えていれば、いまさら見たくないって気持ちにもなるかもしれない。昔の自分からのメッセージって、なんか照れくさそうだよね。
「生徒会長、わたしと隼人で、タイムカプセルを見つけ出します! 覚えていることを詳しく教えてください」
「ちょっと、マユカちゃんっ」
「タイムカプセルを見つけないと、生徒会長が入部してくれなくて、廃部になっちゃうんですよ! 恥ずかしいのは我慢してください」
美香センパイは言葉に詰まったように口を閉ざした。
ナマイキ言ってごめんなさい、美香センパイ。これもすべて、名探偵部のためなんです!
「説明しやすくなると思うから、屋上に行こうか」
生徒会長はそう言って歩き出した。
わたしたちは部室棟から出て、五人でぞろぞろと校舎の屋上に向かった。
誰もいない屋上は、高いフェンスで囲われている。
校庭からは運動部の掛け声や、吹奏楽部の音楽も聞こえてくる。
生徒会長はフェンスに手をかけて、校庭を見下ろした。
この学校は小学校から大学まで揃っているから、たくさんの木の奥に、その校舎が小さく見える。
「ぼくは小学校からここの学校に通っているから、掘り出すタイミングに合わせて、中学校の校舎ある敷地内に、タイムカプセルを埋めることにしたんだ。……たぶん」
「たぶん?」
「小学一年生だったからね、間違えて、高校や大学の敷地に埋めてしまったかもしれない。少なくても、小学校の敷地ではないはずだけど」
「えっ……」
あの、ものすごく、探す範囲が広いんですけど。
わたしはブワリと、冷汗がふき出した。
「タイムカプセルは木の下に埋めた。その木には目印に、根元の近くに☆印を刻んでおいた」
「木の下に埋めたんですね?」
「そう」
「どの種類の木ですか?」
「それがわかれば、ぼくだってもう見つけている」
うわあ、想像以上に難しそうだよ!
「ちなみに、小学校から大学まで、すべての敷地を合わせると四万坪以上ある」
ぼそりと隼人がわたしに言った。
四万坪がぜんぜんイメージできないけど、とにかく広いのは、今見てるからわかるよ!
その、ものすごく広い敷地に、木は無数にはえている。何千本……何万本もあるかもしれない。
一本一本、☆印がないか調べるのは不可能だよ。
少なくても、今日中にすべての木を見て回ることはできそうもない。
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