われら名探偵部! どんな謎もヒラメキ解決☆

じゅん

文字の大きさ
上 下
8 / 32
2 試練その1、それから、その2

試練その1、それから、その2 3

しおりを挟む
「正解」
 美香センパイが手をたたいた。
「ようこそ、文芸部へ」
 大地センパイもそう言ってくれた。
「すごいな、オレは解けなかったんだよね。美香がヒントをくれないから」
「大地は三年なんだから、甘えないで」
「美香が塩対応すぎる……」
 大地センパイがしょんぼりとした。体は大きいのに、なんだか大型犬みたいでかわいい。
「これでここを、文芸・名探偵部にしていいんですよね!」
「せめて“探偵部”にしない?“名”って重要?」
「重要です!」
 わたしは大地センパイにキッパリと言い切った。
「そっか。じゃあ、マユカちゃんが本当に名探偵なら、“名探偵部”にしていいよ」
「どういうことですか?」
「これからマユカちゃんは、みんなから謎を募集して、解決する活動をしようとしているんだよな?」
「そうです」
 みんながわからない謎を解くのが、名探偵の役割だもの!
「だったら、オレが初めての依頼者になるよ。もしこの謎を解いてくれたら、“文芸・名探偵部”に名義を変更する」
 うれしいけど、またもやテストだ。
「今度はどんな暗号ですか?」
「オレは美香と違って、暗号は作れない。実際になくした物があって、困っているんだ」
「実際の事件!」
 すごい、ワクワクするよ!
「事件ってほどじゃないんだけどな」
 大地センパイは苦笑した。
「頭を使って疲れたでしょ。脳の疲れには、甘いものがいいわよ」
 美香センパイが全員に紙コップに入れた温かい紅茶と、テーブルの真ん中にチョコレートクッキーを置いてくれた。わあい!
 わたしはお礼を言って、さっそくチョコレートクッキーを食べた。
 甘くておいしい!
「今日、うちのおふくろが結婚指輪をなくしたんだ」
 大地センパイは左手の薬指をさしながら、説明を始めた。
「探したけどみつからないんだってさ。奮発して買ってもらった指輪だから、親父にバレるとヤバいって、ビクビクしてるよ」
「具体的に、いつなくしたんですか?」
 わたしは隼人からペンを借りて、暗号クイズが書いてあった紙を裏返しにして、メモを取る構えをした。
「指輪がないと気づいたのは、昼飯を作ろうとしたとき。昨日の夜、十二時に寝ようとしたときには指輪はあったはずだと言ってた。さっき電話があったんだ」
 わたしは横に長い線を引いて、一時間おきにチョンチョンと縦線をつけ、時間割りを作った。
「昨日寝た十二時から、今日お昼ご飯を作る十二時の、十二時間の間に指輪をなくしたっていうことですか?」
「そうなるな」
 大地センパイはうなずいた。
「センパイのお母さんの、その十二時間のスケジュールを教えてください」
「朝五時半に起床。朝飯と親父と兄貴の弁当を作って、自分も朝飯を食う。九時くらいから洗濯とか掃除とか家事をすませた」
 ふむふむと言いながら、わたしは紙に書いていった。
「十一時くらいに運動がてら公園を一周してからスーパーへ。で、帰ってきて、昼飯を作ろうとしたら、指輪がないことに気づいた」
「アチャー、外に出かけてるんだ」
 わたしはペチリとひたいをたたいた。
「そうなんだよ。外で落としてたらアウトだよな。警察に届けてるし、買い物に行くときに歩いた道は探したそうだけど、見つからなかったって」
「外で指輪を落としたら、音がしそうだけどね」
 美香センパイが言う。
 たしかに。そうしたら、やっぱり家でなくしてるのかな?
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

守護霊のお仕事なんて出来ません!

柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。 死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。 そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。 助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。 ・守護霊代行の仕事を手伝うか。 ・死亡手続きを進められるか。 究極の選択を迫られた未蘭。 守護霊代行の仕事を引き受けることに。 人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。 「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」 話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎ ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。

微笑みの梨乃亜姫

魚口ホワホワ
児童書・童話
 あるところに大きい金のシャチホコが、2つ付いたお城がありました。そのお城には、べっぴんさんでおてんばさんのお姫様がおりました。  そのお姫さまの名前は梨乃亜姫、ちょくちょくお城を抜け出して、不思議な術『ニコニコ』で城下町の世直しをする事が楽しみでした。  ひょんな事で、怪力の女中の美代と絶世の男前の忍者の伊吹と旅をする事になりました。波乱万丈…どうなるんでしょうか?

こちら御神楽学園心霊部!

緒方あきら
児童書・童話
取りつかれ体質の主人公、月城灯里が霊に憑かれた事を切っ掛けに心霊部に入部する。そこに数々の心霊体験が舞い込んでくる。事件を解決するごとに部員との絆は深まっていく。けれど、彼らにやってくる心霊事件は身の毛がよだつ恐ろしいものばかりで――。 灯里は取りつかれ体質で、事あるごとに幽霊に取りつかれる。 それがきっかけで学校の心霊部に入部する事になったが、いくつもの事件がやってきて――。 。 部屋に異音がなり、主人公を怯えさせる【トッテさん】。 前世から続く呪いにより死に導かれる生徒を救うが、彼にあげたお札は一週間でボロボロになってしまう【前世の名前】。 通ってはいけない道を通り、自分の影を失い、荒れた祠を修復し祈りを捧げて解決を試みる【竹林の道】。 どこまでもついて来る影が、家まで辿り着いたと安心した主人公の耳元に突然囁きかけてさっていく【楽しかった?】。 封印されていたものを解き放つと、それは江戸時代に封じられた幽霊。彼は門吉と名乗り主人公たちは土地神にするべく扱う【首無し地蔵】。 決して話してはいけない怪談を話してしまい、クラスメイトの背中に危険な影が現れ、咄嗟にこの話は嘘だったと弁明し霊を払う【嘘つき先生】。 事故死してさ迷う亡霊と出くわしてしまう。気付かぬふりをしてやり過ごすがすれ違い様に「見えてるくせに」と囁かれ襲われる【交差点】。 ひたすら振返らせようとする霊、駅まで着いたがトンネルを走る窓が鏡のようになり憑りついた霊の禍々しい姿を見る事になる【うしろ】。 都市伝説の噂を元に、エレベーターで消えてしまった生徒。記憶からさえもその存在を消す神隠し。心霊部は総出で生徒の救出を行った【異世界エレベーター】。 延々と名前を問う不気味な声【名前】。 10の怪異譚からなる心霊ホラー。心霊部の活躍は続いていく。 

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

みかんに殺された獣

あめ
児童書・童話
果物などの食べ物が何も無くなり、生きもののいなくなった森。 その森には1匹の獣と1つの果物。 異種族とかの次元じゃない、果実と生きもの。 そんな2人の切なく悲しいお話。 全10話です。 1話1話の文字数少なめ。

マサオの三輪車

よん
児童書・童話
Angel meets Boy. ゾゾとマサオと……もう一人の物語。

ひとなつの思い出

加地 里緒
児童書・童話
故郷の生贄伝承に立ち向かう大学生達の物語 数年ぶりに故郷へ帰った主人公が、故郷に伝わる"無作為だが条件付き"の神への生贄に条件から外れているのに選ばれてしまう。 それは偶然か必然か──

スクナビコナの冒険―小さな神が高天原を追放されネズミとともに地上に落っこちてしまった件―

七柱雄一
児童書・童話
 スクナビコナは人の手のひらに乗る程度の小さな体の神です。  またスクナビコナは日本神話に登場する神でもあるのですが、作者としては日本の神話などに関する予備知識があまりなくても、読み進められるように本作を書いていくことを心がけようと思っています。  まだまだ『アルファポリス』初心者の上に未熟者の作者ですが、一応プロを目指す方向でやっていくつもりでおります。  感想、ご指摘、批評、批判(もちろん誹謗、中傷のたぐいはご勘弁願いたいのですが)大歓迎でございます。  特に特定の読者層は想定しておらず、誰でも読めるものを目指した作品です。  また『小説家になろう』『カクヨム』でもこの小説を投稿しております。  ではぜひお楽しみください!

処理中です...