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2 試練その1、それから、その2
試練その1、それから、その2 3
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「正解」
美香センパイが手をたたいた。
「ようこそ、文芸部へ」
大地センパイもそう言ってくれた。
「すごいな、オレは解けなかったんだよね。美香がヒントをくれないから」
「大地は三年なんだから、甘えないで」
「美香が塩対応すぎる……」
大地センパイがしょんぼりとした。体は大きいのに、なんだか大型犬みたいでかわいい。
「これでここを、文芸・名探偵部にしていいんですよね!」
「せめて“探偵部”にしない?“名”って重要?」
「重要です!」
わたしは大地センパイにキッパリと言い切った。
「そっか。じゃあ、マユカちゃんが本当に名探偵なら、“名探偵部”にしていいよ」
「どういうことですか?」
「これからマユカちゃんは、みんなから謎を募集して、解決する活動をしようとしているんだよな?」
「そうです」
みんながわからない謎を解くのが、名探偵の役割だもの!
「だったら、オレが初めての依頼者になるよ。もしこの謎を解いてくれたら、“文芸・名探偵部”に名義を変更する」
うれしいけど、またもやテストだ。
「今度はどんな暗号ですか?」
「オレは美香と違って、暗号は作れない。実際になくした物があって、困っているんだ」
「実際の事件!」
すごい、ワクワクするよ!
「事件ってほどじゃないんだけどな」
大地センパイは苦笑した。
「頭を使って疲れたでしょ。脳の疲れには、甘いものがいいわよ」
美香センパイが全員に紙コップに入れた温かい紅茶と、テーブルの真ん中にチョコレートクッキーを置いてくれた。わあい!
わたしはお礼を言って、さっそくチョコレートクッキーを食べた。
甘くておいしい!
「今日、うちのおふくろが結婚指輪をなくしたんだ」
大地センパイは左手の薬指をさしながら、説明を始めた。
「探したけどみつからないんだってさ。奮発して買ってもらった指輪だから、親父にバレるとヤバいって、ビクビクしてるよ」
「具体的に、いつなくしたんですか?」
わたしは隼人からペンを借りて、暗号クイズが書いてあった紙を裏返しにして、メモを取る構えをした。
「指輪がないと気づいたのは、昼飯を作ろうとしたとき。昨日の夜、十二時に寝ようとしたときには指輪はあったはずだと言ってた。さっき電話があったんだ」
わたしは横に長い線を引いて、一時間おきにチョンチョンと縦線をつけ、時間割りを作った。
「昨日寝た十二時から、今日お昼ご飯を作る十二時の、十二時間の間に指輪をなくしたっていうことですか?」
「そうなるな」
大地センパイはうなずいた。
「センパイのお母さんの、その十二時間のスケジュールを教えてください」
「朝五時半に起床。朝飯と親父と兄貴の弁当を作って、自分も朝飯を食う。九時くらいから洗濯とか掃除とか家事をすませた」
ふむふむと言いながら、わたしは紙に書いていった。
「十一時くらいに運動がてら公園を一周してからスーパーへ。で、帰ってきて、昼飯を作ろうとしたら、指輪がないことに気づいた」
「アチャー、外に出かけてるんだ」
わたしはペチリとひたいをたたいた。
「そうなんだよ。外で落としてたらアウトだよな。警察に届けてるし、買い物に行くときに歩いた道は探したそうだけど、見つからなかったって」
「外で指輪を落としたら、音がしそうだけどね」
美香センパイが言う。
たしかに。そうしたら、やっぱり家でなくしてるのかな?
美香センパイが手をたたいた。
「ようこそ、文芸部へ」
大地センパイもそう言ってくれた。
「すごいな、オレは解けなかったんだよね。美香がヒントをくれないから」
「大地は三年なんだから、甘えないで」
「美香が塩対応すぎる……」
大地センパイがしょんぼりとした。体は大きいのに、なんだか大型犬みたいでかわいい。
「これでここを、文芸・名探偵部にしていいんですよね!」
「せめて“探偵部”にしない?“名”って重要?」
「重要です!」
わたしは大地センパイにキッパリと言い切った。
「そっか。じゃあ、マユカちゃんが本当に名探偵なら、“名探偵部”にしていいよ」
「どういうことですか?」
「これからマユカちゃんは、みんなから謎を募集して、解決する活動をしようとしているんだよな?」
「そうです」
みんながわからない謎を解くのが、名探偵の役割だもの!
「だったら、オレが初めての依頼者になるよ。もしこの謎を解いてくれたら、“文芸・名探偵部”に名義を変更する」
うれしいけど、またもやテストだ。
「今度はどんな暗号ですか?」
「オレは美香と違って、暗号は作れない。実際になくした物があって、困っているんだ」
「実際の事件!」
すごい、ワクワクするよ!
「事件ってほどじゃないんだけどな」
大地センパイは苦笑した。
「頭を使って疲れたでしょ。脳の疲れには、甘いものがいいわよ」
美香センパイが全員に紙コップに入れた温かい紅茶と、テーブルの真ん中にチョコレートクッキーを置いてくれた。わあい!
わたしはお礼を言って、さっそくチョコレートクッキーを食べた。
甘くておいしい!
「今日、うちのおふくろが結婚指輪をなくしたんだ」
大地センパイは左手の薬指をさしながら、説明を始めた。
「探したけどみつからないんだってさ。奮発して買ってもらった指輪だから、親父にバレるとヤバいって、ビクビクしてるよ」
「具体的に、いつなくしたんですか?」
わたしは隼人からペンを借りて、暗号クイズが書いてあった紙を裏返しにして、メモを取る構えをした。
「指輪がないと気づいたのは、昼飯を作ろうとしたとき。昨日の夜、十二時に寝ようとしたときには指輪はあったはずだと言ってた。さっき電話があったんだ」
わたしは横に長い線を引いて、一時間おきにチョンチョンと縦線をつけ、時間割りを作った。
「昨日寝た十二時から、今日お昼ご飯を作る十二時の、十二時間の間に指輪をなくしたっていうことですか?」
「そうなるな」
大地センパイはうなずいた。
「センパイのお母さんの、その十二時間のスケジュールを教えてください」
「朝五時半に起床。朝飯と親父と兄貴の弁当を作って、自分も朝飯を食う。九時くらいから洗濯とか掃除とか家事をすませた」
ふむふむと言いながら、わたしは紙に書いていった。
「十一時くらいに運動がてら公園を一周してからスーパーへ。で、帰ってきて、昼飯を作ろうとしたら、指輪がないことに気づいた」
「アチャー、外に出かけてるんだ」
わたしはペチリとひたいをたたいた。
「そうなんだよ。外で落としてたらアウトだよな。警察に届けてるし、買い物に行くときに歩いた道は探したそうだけど、見つからなかったって」
「外で指輪を落としたら、音がしそうだけどね」
美香センパイが言う。
たしかに。そうしたら、やっぱり家でなくしてるのかな?
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