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2 試練その1、それから、その2
試練その1、それから、その2 1
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文芸部のパイプ椅子に座って、わたしと隼人は、美香センパイから渡されたA四の紙をのぞきこんでいる。
艮空弓必
一~三の間に、メッセージが隠されているよ!
「……うわ、これだけ? なにこれ?」
さっぱり意味がわからないよ!
「一から三ってことは、上から三つの漢字に意味があるの? そもそも、艮って字、まだ習ってないよ。なんて読むの?」
「音読みだと、こん、ごん。訓読みだと、うしとら。とどまるとか北東の方角のことを意味する」
隼人がスラスラと答えた。隼人って頭がいいんだよね。この学校の受験勉強も、隼人にみてもらったの。
「へえ。“良”って字とそっくりなのに、ぜんぜん意味が違うんだね」
「それ」
「ん?」
「艮なんてマニアックな字、普通は問題に出さないと思うんだ。似てる“良”ではダメで、“艮”にしなければならなかったのは、ヒントになりそうだ」
なるほどね。
「一から三だから、艮・空・弓の間ってことだよね」
「いや、それは違うだろ」
「どうして?」
「それじゃあ、四つめに“必”が書かれている意味がなくなるじゃないか」
「推理小説には、ミスリードがつきものだよ!」
ミスリードといういのは、わざとまぎらわしい情報を混ぜて、読者を勘違いさせるテクニックのことだよ。わたしはすぐにひっかかって、犯人を間違えちゃうんだ。
「これは推理小説じゃなくて、暗号クイズだろ」
そうだった。
「四つの漢字を全部使う。そして、一から三の間……」
わたしはうなった。むずかしいなあ。
「とりあえず、読みがなを書いてみよう」
艮 →音:こん、ごん
訓:うしとら
空 →音:くう
訓:そら、あ(ける)、から
弓 →音:きゅう
訓:ゆみ
必 →音:ひつ
訓:かなら(ず)
「この文字の、一から三文字目までを使って、言葉を作るってことかな?」
わたしはそう言って、言葉をつなごうとするけど、意味のある言葉にならない。
「もしや、単純に艮空弓必の順番に読むんじゃなくて、並び替えるのかな? 推理小説には、言葉を入れ替えて解く問題がよく出てくるんだ。アナグラムっていうんだよ」
「ちょいちょい推理小説の用語を混ぜるな」
「へへへ、つい」
わたしはポリポリとこめかみをかいた。だって、大好きなんだもん!
「あなた、推理小説が好きなの?」
わたしの正面に座っている美香センパイに声をかけられた。ちなみに、隼人の前に大地センパイがいる。
「はい! 有名な推理小説は、全部読んでると思います!」
「あら、言うわね。有名な推理小説なんて、読み切れないくらいあるのに」
美香センパイは笑った。
「私も好きなの。仲良くなれそうね」
うわあ、推理小説仲間ができる! センパイと仲良くなれたら、すごくうれしい!
そのためにも、この問題を解かなきゃ!
「ヒントがほしい?」
「いえ、だいじょうぶです!」
「ほしいです」
ほしいと言ったのは、隼人。
「なんでよっ」
「よみがなの一文字目から三文字目を入れ替えて言葉を作るとしたら、無数にパターンがありすぎて、そうとう時間がかかるだろ」
「そう、その言葉を聞いて、軌道修正しようと思ったの」
美香センパイは楽しそうに笑う。
「軌道修正ってことは、間違ってるってことですか?」
「そんなに難しく考えなくていいわ。答えは四文字よ」
「えっ、四文字しかないんですか?」
なんか、またよくわからなくなってきた。
艮空弓必
一~三の間に、メッセージが隠されているよ!
「……うわ、これだけ? なにこれ?」
さっぱり意味がわからないよ!
「一から三ってことは、上から三つの漢字に意味があるの? そもそも、艮って字、まだ習ってないよ。なんて読むの?」
「音読みだと、こん、ごん。訓読みだと、うしとら。とどまるとか北東の方角のことを意味する」
隼人がスラスラと答えた。隼人って頭がいいんだよね。この学校の受験勉強も、隼人にみてもらったの。
「へえ。“良”って字とそっくりなのに、ぜんぜん意味が違うんだね」
「それ」
「ん?」
「艮なんてマニアックな字、普通は問題に出さないと思うんだ。似てる“良”ではダメで、“艮”にしなければならなかったのは、ヒントになりそうだ」
なるほどね。
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「いや、それは違うだろ」
「どうして?」
「それじゃあ、四つめに“必”が書かれている意味がなくなるじゃないか」
「推理小説には、ミスリードがつきものだよ!」
ミスリードといういのは、わざとまぎらわしい情報を混ぜて、読者を勘違いさせるテクニックのことだよ。わたしはすぐにひっかかって、犯人を間違えちゃうんだ。
「これは推理小説じゃなくて、暗号クイズだろ」
そうだった。
「四つの漢字を全部使う。そして、一から三の間……」
わたしはうなった。むずかしいなあ。
「とりあえず、読みがなを書いてみよう」
艮 →音:こん、ごん
訓:うしとら
空 →音:くう
訓:そら、あ(ける)、から
弓 →音:きゅう
訓:ゆみ
必 →音:ひつ
訓:かなら(ず)
「この文字の、一から三文字目までを使って、言葉を作るってことかな?」
わたしはそう言って、言葉をつなごうとするけど、意味のある言葉にならない。
「もしや、単純に艮空弓必の順番に読むんじゃなくて、並び替えるのかな? 推理小説には、言葉を入れ替えて解く問題がよく出てくるんだ。アナグラムっていうんだよ」
「ちょいちょい推理小説の用語を混ぜるな」
「へへへ、つい」
わたしはポリポリとこめかみをかいた。だって、大好きなんだもん!
「あなた、推理小説が好きなの?」
わたしの正面に座っている美香センパイに声をかけられた。ちなみに、隼人の前に大地センパイがいる。
「はい! 有名な推理小説は、全部読んでると思います!」
「あら、言うわね。有名な推理小説なんて、読み切れないくらいあるのに」
美香センパイは笑った。
「私も好きなの。仲良くなれそうね」
うわあ、推理小説仲間ができる! センパイと仲良くなれたら、すごくうれしい!
そのためにも、この問題を解かなきゃ!
「ヒントがほしい?」
「いえ、だいじょうぶです!」
「ほしいです」
ほしいと言ったのは、隼人。
「なんでよっ」
「よみがなの一文字目から三文字目を入れ替えて言葉を作るとしたら、無数にパターンがありすぎて、そうとう時間がかかるだろ」
「そう、その言葉を聞いて、軌道修正しようと思ったの」
美香センパイは楽しそうに笑う。
「軌道修正ってことは、間違ってるってことですか?」
「そんなに難しく考えなくていいわ。答えは四文字よ」
「えっ、四文字しかないんですか?」
なんか、またよくわからなくなってきた。
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