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じゅう

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食事を食べ終えると、食器が消えてレイヴァンさんと同じティーカップが現れた
中に入っていたのは茶色い液体で、コーヒーのいい香りがする
私は甘い方が好きだなっと思っていると、急に現れた角砂糖が2つ勝手に入っていきティースプーンでかき混ぜられた

「あ、ありがとうございます…」
「甘党だったのだな」
「…前は多分違ったはずですけどね」

ブラックをよく飲んでた記憶がある
あの苦さが好きで、飲みすぎて中毒だと同僚に注意されたことがあったな

ティーカップを持ち、コーヒーを飲む
ほんのり苦くて、甘い

「そうか。覚えておこう」

今はなんでも飲めるだろうが、シャルクスになった時困らないようにと言うことだろう

「…」

レイヴァンさんはじっと此方を見ているだけだ
もしかしたら、何か言いたかったのかもしれないが
表情がないため読み取ることはできなかった

「で、先程の疑問は解決したか?」
「あ、はい。 コーヒーでした」

この世界のコーヒーも同じコーヒーなのかと
もう一度味わう

「…貴様の味覚にあったようでなによりだ」

たまに出てくるレイヴァンさんの優しさが少し嬉しい反面辛い
シャルクスのことを思っていっているのだろうけど
今は私がシャルクスだ

「レイヴァンさんって…、魔王なんですよね?」
「あぁ、そう呼ばれているな」
「…人間達を滅ぼそうとか考えてるんですか?」

あ、今のは表情が無くてもわかる
意味がわからないと言う雰囲気が伝わってきた

「はぁ、人間ではないのだから、そんな下らんことはしない」
「え、」
「確かに、令嬢には似たようなことを頼まれたが我はやりたいことをやれればそれでかまわない」

レイヴァンさんが手をくむ
性格には指の骨と骨が絡まっているだけだが

「争いなど下らん 一方通行な侵略などつまらん」
「…人は弱いと?」
「あぁ。 この世界の人間は特にな」

この世界では無い世界から来た私には人の強さも魔族の強さもよくわからないが
レイヴァンさんとであったときの周りにいた人々は顔を真っ青にしていた

初めて喋る骸をみた私よりも怖がっていたな、
あそこまで怖がる必要もないと思うのだが…

「…相変わらず、貴様は口に出すことをしないな」

私は考えていることがレイヴァンさんにはわかるのだったと思いだし、焦る

「あ、その…」
「だと言うのに様々な言葉を考える」

呆れられているのだろう
何度も読めることを聞かされているのに忘れてしまうことに

「人と言うものは、やはりめんどうだな」

レイヴァンさんはそう言うと姿を消した

テーブルの向かいに座っていた筈の場所には初めからなにも無かったかのように
椅子だけがあった

手に持っていた筈のティーカップもなく
夢でもみていたかのように、私だけが残された

「…レイヴァンさん…?」

寂しげに聞こえた先程の声が頭から離れることはなく
私はメロディが迎えにくるまで、そこから動けずにいた



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