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なな

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月が美しく輝いて私のために用意された部屋には光が射し込んでいた
連れてこられてから3日ほどたったが
私は何かするというわけではなく、お城の探検ばかりをしていた

3日ほど過ごしてわかったことは
ここでは月が太陽の役割であり、月はずっと空に浮いている
月が満ちて居るときが昼で欠けて、見えなくなると夜となっている
ご飯は悪くはないが、何を食べているのかわからない
とりあえず人間が食べて大丈夫なものを透明人間の料理長、ルーセントさんが作ってくれている
透明人間のため人からは嫌われており、人間界では過ごしにくいらしいが食べ物は人間と同じものじゃないとダメらしく
レイヴァンさんからの頼みを聞いたときは張り切って私のところまで挨拶しに来てくれた
今では仲良しである

ディーロンさんとは会ったときに挨拶をしてくれるくらいで
メロディさんは私が異世界人で魂だけ中に入ってしまったことを聞いてからは友達のように接してくれるようになった
人間の貴族というものが嫌いらしい
昔に惚れた男が貴族で恋仲だったがひどい捨てられ方をしたらしく魔族を嫌う人間や貴族が嫌だそうだ

「ね~ぇ~、シャルクス 今日もお城の探検?」
「ええ、まだ全てを覚えきれてなくって…」
「…別に入っちゃいけない所にさえ入らなければ怒られないわよ」
「私が知っておきたいんですよ」

メロディさんにそう言うと残念そうな顔をしたが
気を付けてねと言って消えた
彼女にも彼女の仕事があるからだ

ちなみに魔王の部下は多数おり、いくつかの部隊として別れている
部隊の数は5つ、それぞれを率いるリーダー格がおり
メロディ、ディーロン、バルバロス、ヴィンテッド、ルーセントの5人
料理長のルーセントさんの所しか、私は部隊について知らない

「皆さん、すごい人ばっかりらしいけど…」

この5人の中で苦手な方が一人いる
そんな方がそこにいた

「これはこれは令嬢様。 今日も魔王城の地図の作成ですか?」

この城にいる人間は私と料理長と彼であり
彼はシャルトと同じで元貴族である

「我々の情報を流すために作られているのですかね?」
「…私はレイヴァンさんの妻です。 そんなことはしませんわ」
「口ではなんとでも言えるのですよ」

私を睨むその目が嫌なのだ
気に入らないと言いたげな言葉が嫌なんだ
この体の持ち主を理解してても傷をつけようと行動するところが嫌だ

「私の前から消えてくれませんかね?」
「消えません。私はこの体を守らなくていけないので」

彼は己の体を実験に使い改造を繰り返し、人であるが人ではないなにかだ
詳しくは知らないし、知りたくもないし、関わりたくない

「あぁ、気持ち悪い 気分が悪くなる」
「ならば、通していただけますか? そうすれば貴方から見えなくなりますよ」
「……そう言うところが、」

なにかぶつぶつと言っているが私の耳には届かず、少し不気味に見えた

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