婚約破棄ですか?別に構いませんが…、いいのでしょうか?

灯月

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この国について

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私には戻る家がなく、どうしようかと近くにあったベンチへと腰をおろした
ドレスが汚れるからと普段から座ることが許されておらず久々に座ったベンチはとても固かった

「……シルリラ様、本当に良かったのかしら」

確かシルリラ令嬢は別の国からやって来た留学生の一人だったはずだ
つまり、この国の事を知らないだろう

別に私は婚約破棄をされたからって怒っているわけでも悲しんでいるわけでもない
むしろ、婚約が破棄されて嬉しかったりする

アビス皇子のことが嫌いというわけではない
昔からあんな感じだったし、付かず離れずの関係で
向こうもこちらも決められたものだからとそれを受け入れていただけだ

「…まぁ、シルリラ様が決めたことのようだし 私にはどうしようも出来ないわよね」

この国には王族と一部の者しか知らない秘密がある
それは私が先程まで関わっていた王族との婚約の事が大きく関わっている

この国は一度消滅した国だ
国民の皆がその事を知っているし、何故そうなったのかも語り継がれている

昔々、この国をとても愛していた聖女がおりました。
聖女は様々な精霊と契約をし、この国をよい方向へと導いていました。
そんな聖女は国民に愛されていました。
王族は聖女を妃へと迎えもっと国を栄えさせようと考えておりました。
皇子との婚約を決め、皇子も聖女も幸せに暮らしていたある日、婚姻発表の日の前日に騒動が起こったのです。
それは、聖女の姉妹だと言う女性が現れ
聖女は私であって、その女に奪われたのだと伝えたのです。
聖女は困った表情をするだけで、消して否定をしなかったのです。
聖女の姉妹は様々なことを言いますが、聖女は一度も否定することなかった為か
だんだんと皆が聖女は偽物じゃないのかと思い始めたのです。
結局、聖女は婚約を破棄されて国から追い出されました。
聖女は悲しみながら、この国がよくなるのであればと居なくなってしまいました。
結局は聖女の姉妹だといった女は妃となり、数年がたった頃
精霊達が聖女がいなくなったことに気づき、この国は廃れていった。
そういう話だ。

だが、実際には違う
聖女はこの国に、この国の王族に殺された
聖女の姉妹だと言った女に惑わされて
そして、この国は滅ぼされた

「…」

何故、今また新たに国ができたのかは
王族との一部の者しか知らない

その一部の者は数100年に一度変わっていく
それはそのはずだ、関わった者は秘密を漏らしてはいけないからだ
伝えていいのは王族と婚約者として選ばれた者とその時の家族と護衛のみ

伝えようとした際に、呪いが発生し亡き者となってしまう
そんな呪いがかけられた秘密なのだ

「どうしたら、いいのかしら…」

秘密はもちろん、誰にも言っていないが
今後の事を考えるとこの秘密は持っていない方が幸せに生きれるであろう

「そういえば、シルリラ様て… 家族が居ないのでしたわね」

そのうえ、魔力が高く
光の魔法が使えると聞いたことがある

「…確かに、私よりも向いていたのね」

王族が欲しがっている妃は魔力が高く、貴族で、出来れば家名がなく、珍しい色を持つ、好かれやすい女性だ

シルリラ様はその条件にぴったりだったのだ

「…どうか、この国がいつまでも続きますように」

本当は私がこの国のためにする予定だったのだが、シルリラ令嬢がすることになったのだ
だからこそ、もう祈るしか出来ない

私は手を繋ぎ祈りを捧げる

この国のために、好きだった家族のために
どうか、平和であれと…、

「お嬢様!!」

祈りはじめたばかりだと言うのに
聞きなれた声がして私は驚き顔をあげると
やはり、知り合いだった

「あら、クロ そんなに焦らなくても私は逃げないわよ?」

怖い顔に大きな図体のわりに見た目とのギャップがすごく、心がとても優しい騎士だ
表情がコロコロ変わるのでついついからかってしまう

「そうやって、からかうのはお嬢様だけです…って、そうではなく!! 婚約破棄をされたと聞いたのですが!!」
「あら、はやいわね。」
「あぁ、そうでしたか!! よかった…、よかったぁ」

大男に泣かれても困るのだけど…

大きな涙を流しながら私の繋いでいる両手を包むように握ってきた
私が泣けない分泣いてくれているのだろう
やはり、とてもやさしい騎士だ

「お嬢様が、この国の母にならなくて…」

私は困った表情をした
クロがこの国の秘密を言ったことにも
この役割を本当に私がやらなくてよかったのかということに対しても
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