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それは突然に
しおりを挟む「マリーネ令嬢、君との婚約は今この時をもって、破棄とさせていただく。」
この国で一番大きいであろうと言われている
城のホールには多くの貴族が集まっており
皆が皆、話に花をさかせていたであろうタイミングで、その言葉は発せられた
何事だと皆がホールの中央にいる人物を見る
先程まで賑やかだったが、今では誰一人話をしないで、中央の様子を伺っている
「……急にどういう事でしょうか?」
髪はこの国ではさほど珍しくもない茶黒で
一般的な色のオレンジかかった茶色の目
ドレスも回りの令嬢たちとそう代わりのなく、これといって目立つところのない令嬢である
もしも、その令嬢である私が周りとの違いを伝えるのならば
今、目の前にいるこの国の第一皇子アビス様の婚約者と言うことぐらいだ
私は持っていた扇子を広げ口元に持っていく
第一皇子であるアビス様と何故かその隣にいる何度か話をしたことのある令嬢を見ながら
「ひっ!」
別に睨んだわけではないのだが、その令嬢は私を見て怖がっている
「…マリーネ令嬢、シルリラ令嬢を睨むのをやめてくれ」
アビス皇子はいつもの調子で私にそう言ってきた
別に睨んでいないのだが、私はバレないようにため息をした後
彼女を見ないようにと意識する
「それで、何故急に婚約を破棄すると…?」
私は今までアビス皇子の婚約者として様々なことをしてきたつもりだ
王族の一人となってしまえば元の場所に帰ることも出来なくなるため
早めに家族との別れもしたし、家名も捨てた
両親のことも兄弟のことも、使用人も私によくしてくれてとても好きだったけど
婚約者としてなくなく捨てたというのに
その事を皇子も、国王も、ここにいる皆が知っている事だというのに
「…シルリラ令嬢が言ったのだ
私にはマリーネ令嬢ではなくシルリラ令嬢が必要なのだと」
「それで、皇子はそう思われたのですね?」
アビス皇子は肯定も否定もしなかった
彼はいつも、こうなのだ
何処か上の空で、自身では物事を決められない
黙りが多いのだ
「わ、私…、マリーネ様にいじめられて…」
何も言わなくなったアビス皇子の代わりになのか口を開き話し出すシルリラ令嬢
「…私が? いつ?」
「っ!! …こ、この間だって、紅茶を私の服にかけたじゃありませんか!」
数日前の勝手に私のお茶会に乱入してきたときの話をしているようだ
あの日は紅茶に毒が混入しており、
あ、もちろんその犯人は捕まえましたわ
たまたまシルリラ令嬢が飲もうとしていたところで私がその紅茶をとった際に溢れてしまった時の事を言っているのだろう
「あぁ、あの時ね」
「!! ほ、ほら!!」
私も別に訂正することなくそんなこともあったなぁくらいで返事をした
ちなみに、その際に一緒にお茶会をしていた令嬢たちは真実を知っているので
この話を不思議に思っているだろう
「そ、それに他にも!!」
その後のシルリラ令嬢の話は確かにそんな感じの事があったけど
実際とは違うという話だった
「こ、これでわかったでしょう!! 貴女が私をいじめていたってことが!!」
彼女はやってやったぜという顔をしている
私からしたら別にどうでもいい話だったのだが
「…そうですか、では アビス皇子。」
名前を呼ばれようやく、こちらを向く
相変わらずのここに居るようで居ない彼には呆れる
「! なにかな?」
「婚約の破棄は私は構いませんが…」
「!!」
「…そうか、では。」
シルリラ令嬢は嬉しそうに顔を笑顔へとかえ、アビス皇子に抱きつく
そんなシルリラ令嬢とは間反対と言うかのような表情をしているアビス皇子
「…皆の者、聞いたとおり 私、第一皇子アビス・カタロイトはマリーネ令嬢との婚約を破棄し、
シルリラ令嬢と婚姻を結ぶ」
「!! まぁ!! アビス皇子…」
シルリラ令嬢は婚約ではなく、婚姻と言われたことにとても喜んでいるようだ
静かに成り行きを見守っていた貴族たちが戸惑いつつも拍手を贈る
私はそんな賑わいムードの中その場を誰にもバレないように去った
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