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裏垢悪役令息
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ギヨームは寒さで目を覚ました。
朝露で湿った芝生の上に寝ていたせいで、亜麻布の部屋着は濡れて冷たくなっている。
体を震わせながら上体を起こすと、目の前には見たことのない景色が広がっていた。
ここはどこだ。なぜ外で寝ている?
ギヨームのいる狭い空間を取り囲むように、高層ビル群がそびえ立っている。その巨大な建築物に押し潰されそうな恐怖で、ギヨームはふらふらと立ち上がった。
ズキズキと痛む頭を押さえながら、あてもなくさまよう。
道行く人の服装も、周りの景色も、見たことのないものだった。
なぜわたしはこんなところにいる?
ギヨームは頭痛に顔を顰めながら、これまでのことを思い出す。
王女の婚約者でありながら、めぼしい王侯貴族の男を食いまくったこと、そのうちの一人が嫉妬から逆上して王宮に告発したこと、本来なら最悪でも投獄もしくは流刑で済むはずが、裁判に関わった男全員がギヨームと寝ていたため、死罪を宣告されたこと、衆人環視の中、断頭台に上って、そしてーー
そこまで思い出したギヨームは、ゴミが散乱する早朝の路上で、白目を剥いて卒倒した。
行き倒れとなったギヨームはその後、福祉施設に保護された。
体や脳には異常がないものの、支離滅裂な話を繰り返すギヨームは、最終的には記憶喪失の身元不明者として取り扱われた。
職員の助けで新たな戸籍を取得し、生活困窮者向けの施設に入所したギヨームは、現代日本で人生の再スタートを切った。
「山田さん、いいお天気ですね。お散歩に行きませんか?」
山田ことギヨームは職員の顔を冷ややかな目で一瞥すると、寝返りを打って背中を向けた。
職員の手口はわかっている。散歩と称して連れ出して、ハローワークに行かせるつもりだ。
「今日は気分が悪いから横になっています」
「山田さん、朝ごはん三杯もおかわりしてたよね。食べ過ぎて気分が悪くなったのかな?」
「貴様に何がわかる!」
職員は、キャンキャン喚くギヨームにため息をついて立ち上がった。
「せめて、お部屋片付けてくださいね。ゴミはゴミ箱にって言ってるでしょ。ポイ捨てはダメですよ。あとお風呂! いい加減入ってくださいね! 臭ってますよ!!」
職員が部屋を出たのを確認して、ギヨームはスマホを取り出した。
SNSを巡回し、動画を眺めてギヨームの一日は終わる。
ギヨームは現代日本に完全に適応していた。威風堂々たるヒキニートである。
そもそも、侯爵家令息のギヨームに労働させるなど、何を考えているのか。
絶対に働かないぞという強い意志の元、ギヨームはダラダラとスマホを眺めていた。
とはいえ、金は欲しい。
衣食住は保障されているものの、ギヨームが自由に使える金はほとんどなかった。
引きこもり生活に不満はないが、ここでは出会いがない。前の世界では性に奔放だったギヨームにとって、今の生活はフラストレーションが溜まる一方だ。
ギヨームはSNSのリストを開いた。
瞬時にタイムラインが肌色で埋め尽くされる。いわゆる裏垢を見ることで、ギヨームはなんとか体の疼きを鎮めていた。
裸の自撮りやオナニー動画を眺めていると、ふとあるハメ撮り投稿に目が留まった。
『完全版はこちらから購入できます!』
購入……? 販売しているのか?
リンク先に飛ぶと、さまざまな動画が結構な値段で販売されている。
ギヨームは天啓を得たような衝撃を受けた。
ギヨームは早速裏垢の運営について調べた。アダルトコンテンツの販売についても、関連法令を熟読し、法に抵触しないギリギリのラインを見極める。
前世では、社交界の黒薔薇と呼ばれたギヨームである。
顔出しでちょっとエッチな自撮りでも載せれば、遊んで暮らせる金が稼げるはずだと、皮算用を弾いてほくそ笑んだ。
「なぜだ!」
ギヨームは『3 フォロワー』の表示にわなわなと震えた。
裏垢を作って一週間。フォロワーもインプレッションも全く伸びず、ついに昨日はモザありとはいえ全裸の写真まで載せたのに、数字はピクリとも動かなかった。
クソッと悪態を吐きながら、他の裏垢男子の投稿を眺める。
こんなブスがフォロワー3万人? こいつは喘ぎ声が汚すぎる。これがフォロワー2万人なら、社交界の黒薔薇と言われたわたしの方が(以下略)
ぶつぶつと文句を垂れるギヨームだったが、ふとタイムラインをスワイプする手が止まった。
『待ってフォロワーめっちゃ増えてる汗 ミヤくん効果だ笑』
そのアカウントの呟きを遡ると、
『ミヤくん(@*******)との交尾、ビビるほど気持ち良かった! 超イケメンでエロい体最高…事後も優しくて惚れてまう…』
というコメントとともに、騎乗位でのハメ撮り動画が投稿されている。
ギヨームは何気なくミヤというアカウントへ飛んだ。
「フォロワー十万だと……!」
ミヤは人気の裏垢らしく、自己紹介には、
『試してみたい人はプロフ+写真付でDMください』
と書かれていた。
「これだ……!」
埋もれているギヨームのアカウントをバズらせたいなら、人気のアカウントから流入させればいい。
マスク姿しか確認できなかったが、顔は悪くはなさそうだ。ギヨームは早速、ミヤへDMを送った。
「なぜだ!!」
DMを送ってから一週間、ミヤからの返事はなかった。
『見落としている可能性があるので、返事がないって人は、何回か送ってみて』という投稿があったので、日に十通は送っているのに。
DMには、とびきりきれいに撮れた自撮りを添付した。五通目以降は、毎回撮り下ろしを送っている。あの画像を見て断るなんてあり得ない話だ。
クソッと爪を噛みながら、ギヨームはなんとか平常心を保とうとしていた。
ミヤは普段は、一般企業に勤務しているようだった。仕事の都合で忙しいこともあるだろう。
そう考えた次の瞬間、『ノンケ処女のメス堕ち』というミヤのハメ撮り動画が流れてきた。
「こ……こいつ……!」
ギヨームのDMを無視して、他の男と遊んでいるのか? いや、ノンケ処女さんの方が先に連絡していた可能性もある。ギヨームが無視されているなんてそんなことはーー
『今日はRさん(@*******)とデート! ハメ撮りアップは後日』
追い打ちをかけるようなその直後の呟きに、ギヨームは白目を剥いた。
ギヨームの元に、待ち望んでいたミヤからの返信が届いたのは、その二日後だった。
待ち合わせ場所のカフェにはマスクをしていないミヤがいた。思った通り、見た目は及第点だ。
ミヤは、向かいの席に座ったギヨームにチラッと不機嫌そうな視線を向けた。
「初めまして」
微笑みを湛えたエレガントな挨拶に、ミヤがチッと舌打ちする。
「不躾なお願いなのだが、ここの支払いは貴公持ちにしてもらえないだろうか」
席に着いて早々、不躾すぎる申し出をするギヨームに、ミヤは、はあ!? と呆れた声を出して、大きなため息をついた。
「どうでもいいけど、さっさと済まそう。あんたさ、いい加減クソリプやめてくんない?」
イライラした声で詰め寄るミヤに、ギヨームは首を傾げる。
「クソリプとは?」
ミヤはスマホの画面をギヨームの目の前に突き出す。そこには、ミヤの投稿に対するギヨームの呟きが表示されていた。
ーーこの受け、エロ垢のくせにブスすぎ
ーーわたしには理解できないけど、こういうネコがモテるのかな……顔も体もアレだよね
ーー腰使い下手くそすぎない…? ブスでテクもないとかかわいそう
ーーこいつら全員ブス
ーーま~~~たブスが顔出しエロ垢してる…
ーー需要ないでしょ。帰れ
ーーマスク越しにもブスなのがわかるの草
「スパム並みにDMは送ってくるし、引リツ空リプで悪口言うのも陰湿だし……俺だけならともかく、俺が遊んでる人のこと貶すのやめろよ」
貴様が返信しないからだ、と言いたかったが、ギヨームにも、そういう空気じゃないことを察する程度のデリカシーはあった。
「じゃあ、もう二度と関わらないでね」
伝票を持って立ち上がるミヤに、慌てて声をかける。
「ちょっと待ってくれ! わたしとのハメ撮りは……?」
ミヤはうんざりした表情でギヨームを見下ろすと、あのさあ……と口を開いた。
「悪いけど、趣味でやってることだから、俺がいいなって思う人にしか声かけないの。あんた顔はいいけど、性格最悪だしヒョロガリ過ぎ。細い子が好きな人もいるだろうけど、裏垢やるならもう少し鍛えたら? あと、風呂入った方がいいよ」
ミヤはそう言い捨てると、とっとと店を出てしまった。
どうせなら、ランチセットも頼めばよかった。
家に帰ったギヨームは、倒れ込むようにベッドに横たわった。ミヤからはブロックされた。
初めて男に振られた屈辱に震えながら、自分の過去を振り返る。
前世では、相手に応じた攻略法をとっていたのではなかったか? 処女厨には恥じらいのある初々しい男を、ビッチ好きには奔放で淫らな男を演じて籠絡してきた。それが元で断罪されることになるのだが……とにかく、今のギヨームは初心を忘れていた。
相手を堕とすには、まずリサーチから。
ギヨームは早速作った別垢から、ミヤの呟きを精査し始めた。
「本当に釣れたぞ! 所詮は性欲バカよ。やはりこの手の男は単純だな」
筋トレを始めて一カ月。うっすらと筋肉のついた上半身裸の自撮りをミヤに送ると、会いたいという返事が返ってきた。顔はギヨームだとわからないように、スタンプで加工している。
「それにしても、騎士団のやつらがやっていた鍛錬はまるで無駄だな。うける」
最初はきつくてすぐにへこたれていた筋トレも、理論を理解して効率的にこなせるようになると、心身が健康になっていくのを感じた。
厚みが増して体の不調が解消されるのと同時に、もともとポジティブだった性格はさらに前向きになり、己に対する盤石の自信が漲るようになっていった。
ミヤとの絡みを足掛かりに、人気裏垢男子とのハメ撮り動画で収益を上げるーーギヨームの描く明るい未来がすぐそこにあった。
待ち合わせ場所でギヨームを見たミヤは、ゲっと鶏の断末魔のような声を上げた。
「なんか見たような顔だと思ったんだよな……」
加工して騙したことを棚に上げて、顔を忘れるなんて失礼な奴だと一瞬イラッとしたものの、ギヨームはすぐに笑顔を浮かべた。筋トレは心の余裕を生む。
「以前は大変失礼しました。どうしてもミヤさんのお相手をしたく、こんな手段をとってしまいました……」
俯き加減で眉を下げ、上目でミヤを見つめる。
普段の呟きから、ミヤは礼儀正しくて一見大人しそうなビッチが好みだと分析していた。
「いや、まあ……謝ってくれるならいいよ。あー……どうしようかな……」
ミヤは、特大地雷と寝るか、好みの男を振るかの二択で揺れているようだった。
ギヨームはミヤの耳元に顔を寄せると、
「もう準備してきてるので……ミヤさんの好きにされたいです」
と、囁いた。
ホテルの部屋に入った瞬間、ミヤに抱き寄せられて唇が重なる。ミヤが背中に手を回すのに合わせて、ギヨームもミヤの腰を抱いて引き寄せた。
荒々しく舌を絡ませると、ギヨームは鼻から抜けるような声を漏らした。後頭部を支えるミヤの手に力がこもる。急速に下半身に血が集まるのがわかった。
「あ、あの……シャワーとか……」
唇を離したタイミングでギヨームが声をかける。即ハメでも全然大丈夫なのだが、一応恥じらいを見せる。
「浴びたい? 一緒に入る?」
浴びたいかと聞かれれば、別に浴びたくはない。嫌々ながら施設で軽く風呂に入ってきたが、そもそもギヨームには入浴の習慣がないのだ。
「このままじゃだめですか?」
「俺はいいけど……」
ミヤの言葉に、ギヨームが床に跪く。見上げると、興奮した顔のミヤと目が合った。
視線を合わせたままミヤのズボンを下着ごとずらすと、ギヨームはエッと呟いて固まった。
ぼかし越しに見えるそれを、大きいだろうなと思ってはいたが、予想以上のサイズだった。
ギヨームが恐る恐る、重さを測るように両手で撫でると、ゆるく勃ち上がりつつあった陰茎はすぐに完勃ちした。
カリが高くて上反りで、真ん中部分が太くて全体に血管が浮いている。赤黒い凶悪なそれを見た瞬間、ギヨームの目の色が変わった。
瞳の中にハートが浮かんだみたいな、うっとりとした表情で亀頭を口に含むと、ちゅーっと音を立てて吸った。
舌を裏筋にペタッと貼り付けて、手を添えて唇を上下に動かす。久しぶりの味に、唾液が溢れて止まらない。
「やば……すぐイキそう……」
ミヤの腰が引けるのを抑え込むように、ギヨームが喉の奥まで咥える。狭い咽喉に締め付けられて、ミヤはあっさりと射精してしまった。出た後も舌で転がすようにして、精液を啜る。
はあはあと肩で息をしているミヤと目が合った。
ミヤはわざと髪をぐちゃぐちゃにするように、ギヨームの頭を掻き乱した、濡れた唇が緩く開き、白い歯と赤い舌が覗く姿は、どすけべかわいく見えるはずだ。
「……ベッド行く?」
ミヤが声をかけると、ギヨームは甘えるように抱きついた。縺れるようにしてベッドに倒れ込む。
「さっきの、すごく気持ちよかったよ」
ミヤにそう言われて、ギヨームは恥じらうように笑った。
当たり前だ。社交界の黒薔薇と言われた(以下略)
ミヤは流れるような手つきで、ギヨームの服を脱がしながら、首筋や胸を愛撫する。あっという間に下着だけになったギヨームは、不安そうな目でミヤを見つめた。
エロ自撮りを送りつけて、即フェラするような男に恥じらいなどないが、これはそういうプレイだ。
ミヤもわかっていて、意地悪そうな目で見つめながら、下着をずらした。なんの変哲もない黒のボクサーなのが不本意だが仕方がない。金が入ったらすけべ下着を買おう。
下着を脱がされ、ギヨームの陰茎が露わになる。じっと見つめられて、先走りを垂らしたものがひくひくと揺れた。
「……ミヤさんも脱いでください」
ギヨームの火照った視線を感じながら、ミヤが膝立ちになって上着を脱いだ。
ギヨームが手を伸ばして割れた腹筋をなぞると、再び勃ち上がりつつある陰茎が揺れる。
「あの……早く欲しいです」
罪を告発されてからこの方、禁欲生活を強いられてきたギヨームは我慢の限界を迎えていた。
ゴムをつけようとするミヤの陰茎を掴んで、後ろにあてがう。ギヨームは膝を立てて上体を起こすと、入っていくところをじっと見つめた。
「あっ♡おっきい♡」
ミヤが太腿を掴んで腰を押し込むと、ずるっと陰茎が中に入った。熱くて柔らかい粘膜が、媚びるように絡み付く。ギヨームは腰を浮かせて、あー……とか細い声を上げた。
「でっか♡これ、やば……♡」
挿入されただけなのに、ギヨームはがくんと仰け反ると、ひくひくと痙攣した。
「あ、♡当たってる♡♡そこだめ♡♡♡」
当たってるというか、ギヨーム自身が当てにいっているのだが、『そこ』はカリが引っかかって、擦ると中が吸い付いてきた。
「奥、奥きて♡」
ギヨームがミヤの背後に脚を回してぐっと引き寄せた。勢いでくぽっと、入ってはいけない深い場所に嵌ったような感覚がした。
「うそ♡イク、あっ……♡待って♡♡やら、早い♡♡」
吸い付いて離さない粘膜の感触と、締め付けてうねるような中の動きに、思わずミヤの腰が止まる。ギヨームは声にならない喘ぎを漏らしながら、びくんと体を揺らした。
ミヤは挿入前に一度、フェラで抜いているのでまだ余裕があったが、ギヨームはミヤが動かなくても、勝手に痙攣しながら潮を吹いた。
汁まみれになって、虚な目でぴくぴくと痙攣しているギヨームを、ミヤがぎゅっと抱きしめた。くっついたまま、軽いキスをして、ゆっくりと腰の動きを再開する。
気持ち良すぎて辛いのに、ねだるように腰が揺れた。
「もう平気?」
返事はなかったが、ミヤが腰を動かすと、ギヨームは背中を反らしてぴくぴくと震えた。
「あっ、やば……♡やっぱ待って……♡」
ギヨームが力の入らない手でミヤの胸を押す。
「大丈夫、大丈夫」
ギヨームの反応がよかったところを責めるように、ミヤが腰を動かす。
「やだ……っ♡おぐ、ん゛♡し、ぬ゛♡♡しんじゃう♡♡♡」
逃げるようにずり上がるギヨームの腰を掴んで、奥に押し当てたままくぽくぽと嵌め突きする。
「ひっ……!! おくッや゛めてぇ……♡あ゛、ぉ…っ!?♡♡キて、る゛う゛ッ…ッ♡♡あ゛ッ、♡♡イ、くッ♡♡♡イッちゃ、あ゛あッ」
奥にどくどくと注がれる感覚に、宙に浮いた脚が空を蹴った。
イッた後、虚な表情でぜいぜい息を吐いていたギヨームが、覆い被さるミヤを押し退けてのっそりと体を起こした。
「貴様、酷いことするじゃないか」
「気持ちよさそうにしてたじゃん」
「そ、それは……こんなのは初めてだから……」
視線が合うと、ミヤがちゅっと音を立てて軽くキスをした。あんなにセックスで乱れまくったのに、挨拶のようなキスではにかむ表情に、ミヤの心がグラッと揺れる。
腰をさするギヨームの手に重ねて、ミヤも肌を撫でた。自然と、手が下に降りる。まだ濡れているそこに指を入れるとギヨームは脚を開いて受け入れた。
舌を絡めながらくちゅくちゅと指を抜き差しすると、ギヨームがぎゅっと抱きついてくる。
「ここ好き?」
ミヤの指がふっくらとしたしこりををなぞる。焦らすように指を動かすと、ギヨームもミヤの陰茎を扱いた。くっついてキスをしながらお互いに触り合っていると、燻るような快感がずっと続いて、多幸感がドバドバと溢れ出る。
「そうだ!」
ギヨームが、ハッと我に返ってミヤの体を押し返す。
「ハメ撮りは!?」
「撮ってないけど」
「なんだと!?!?」
何のためにこいつと寝たのか。
ギヨームが頭を抱えてうなだれていると、ミヤが顔を覗き込んでくる。
「よくなかった?」
「……よくなくはない」
ミヤは、落ち込むギヨームの頬にキスをすると、
「ハメ撮りが性癖っていうならともかく、リスクもあるんだし、あんた騙されやすそうだから、こういうのしない方がいいと思うよ」
と慰めた。
「くそ、ヤった後に風俗嬢に説教するおっさんか。貴様こそ、散々遊んだ上に金儲けしてるくせに! ずるいぞ!」
「いや、儲けてないし、今は付き合ってる相手がいないから遊んでるだけでーー」
「いいから撮影しろ!」
地団駄を踏むギヨームに呆れつつ、ミヤはスマホで撮影を始めるがーー
「あっ……♡っんんん……っ! あ゛ッ♡とまッでえ゛えぇ…ッ♡♡」
「手当たり次第裏垢に声かけないって約束するなら、止まってもいいけど」
「ひっ……!! ふか、あ゛ぁ♡ッふかいィッ♡♡約束す……♡♡」
「約束する?」
「す、るッ♡イッちゃ、あ゛あッ♡な、なん゛れ♡♡止まれッ……♡♡イ゛ッでッ♡♡♡イッ…ッッ♡♡♡♡」
その後、動画がアップされることはなく、しばらくしてミヤとギヨームのアカウントは、同じタイミングで削除された。
朝露で湿った芝生の上に寝ていたせいで、亜麻布の部屋着は濡れて冷たくなっている。
体を震わせながら上体を起こすと、目の前には見たことのない景色が広がっていた。
ここはどこだ。なぜ外で寝ている?
ギヨームのいる狭い空間を取り囲むように、高層ビル群がそびえ立っている。その巨大な建築物に押し潰されそうな恐怖で、ギヨームはふらふらと立ち上がった。
ズキズキと痛む頭を押さえながら、あてもなくさまよう。
道行く人の服装も、周りの景色も、見たことのないものだった。
なぜわたしはこんなところにいる?
ギヨームは頭痛に顔を顰めながら、これまでのことを思い出す。
王女の婚約者でありながら、めぼしい王侯貴族の男を食いまくったこと、そのうちの一人が嫉妬から逆上して王宮に告発したこと、本来なら最悪でも投獄もしくは流刑で済むはずが、裁判に関わった男全員がギヨームと寝ていたため、死罪を宣告されたこと、衆人環視の中、断頭台に上って、そしてーー
そこまで思い出したギヨームは、ゴミが散乱する早朝の路上で、白目を剥いて卒倒した。
行き倒れとなったギヨームはその後、福祉施設に保護された。
体や脳には異常がないものの、支離滅裂な話を繰り返すギヨームは、最終的には記憶喪失の身元不明者として取り扱われた。
職員の助けで新たな戸籍を取得し、生活困窮者向けの施設に入所したギヨームは、現代日本で人生の再スタートを切った。
「山田さん、いいお天気ですね。お散歩に行きませんか?」
山田ことギヨームは職員の顔を冷ややかな目で一瞥すると、寝返りを打って背中を向けた。
職員の手口はわかっている。散歩と称して連れ出して、ハローワークに行かせるつもりだ。
「今日は気分が悪いから横になっています」
「山田さん、朝ごはん三杯もおかわりしてたよね。食べ過ぎて気分が悪くなったのかな?」
「貴様に何がわかる!」
職員は、キャンキャン喚くギヨームにため息をついて立ち上がった。
「せめて、お部屋片付けてくださいね。ゴミはゴミ箱にって言ってるでしょ。ポイ捨てはダメですよ。あとお風呂! いい加減入ってくださいね! 臭ってますよ!!」
職員が部屋を出たのを確認して、ギヨームはスマホを取り出した。
SNSを巡回し、動画を眺めてギヨームの一日は終わる。
ギヨームは現代日本に完全に適応していた。威風堂々たるヒキニートである。
そもそも、侯爵家令息のギヨームに労働させるなど、何を考えているのか。
絶対に働かないぞという強い意志の元、ギヨームはダラダラとスマホを眺めていた。
とはいえ、金は欲しい。
衣食住は保障されているものの、ギヨームが自由に使える金はほとんどなかった。
引きこもり生活に不満はないが、ここでは出会いがない。前の世界では性に奔放だったギヨームにとって、今の生活はフラストレーションが溜まる一方だ。
ギヨームはSNSのリストを開いた。
瞬時にタイムラインが肌色で埋め尽くされる。いわゆる裏垢を見ることで、ギヨームはなんとか体の疼きを鎮めていた。
裸の自撮りやオナニー動画を眺めていると、ふとあるハメ撮り投稿に目が留まった。
『完全版はこちらから購入できます!』
購入……? 販売しているのか?
リンク先に飛ぶと、さまざまな動画が結構な値段で販売されている。
ギヨームは天啓を得たような衝撃を受けた。
ギヨームは早速裏垢の運営について調べた。アダルトコンテンツの販売についても、関連法令を熟読し、法に抵触しないギリギリのラインを見極める。
前世では、社交界の黒薔薇と呼ばれたギヨームである。
顔出しでちょっとエッチな自撮りでも載せれば、遊んで暮らせる金が稼げるはずだと、皮算用を弾いてほくそ笑んだ。
「なぜだ!」
ギヨームは『3 フォロワー』の表示にわなわなと震えた。
裏垢を作って一週間。フォロワーもインプレッションも全く伸びず、ついに昨日はモザありとはいえ全裸の写真まで載せたのに、数字はピクリとも動かなかった。
クソッと悪態を吐きながら、他の裏垢男子の投稿を眺める。
こんなブスがフォロワー3万人? こいつは喘ぎ声が汚すぎる。これがフォロワー2万人なら、社交界の黒薔薇と言われたわたしの方が(以下略)
ぶつぶつと文句を垂れるギヨームだったが、ふとタイムラインをスワイプする手が止まった。
『待ってフォロワーめっちゃ増えてる汗 ミヤくん効果だ笑』
そのアカウントの呟きを遡ると、
『ミヤくん(@*******)との交尾、ビビるほど気持ち良かった! 超イケメンでエロい体最高…事後も優しくて惚れてまう…』
というコメントとともに、騎乗位でのハメ撮り動画が投稿されている。
ギヨームは何気なくミヤというアカウントへ飛んだ。
「フォロワー十万だと……!」
ミヤは人気の裏垢らしく、自己紹介には、
『試してみたい人はプロフ+写真付でDMください』
と書かれていた。
「これだ……!」
埋もれているギヨームのアカウントをバズらせたいなら、人気のアカウントから流入させればいい。
マスク姿しか確認できなかったが、顔は悪くはなさそうだ。ギヨームは早速、ミヤへDMを送った。
「なぜだ!!」
DMを送ってから一週間、ミヤからの返事はなかった。
『見落としている可能性があるので、返事がないって人は、何回か送ってみて』という投稿があったので、日に十通は送っているのに。
DMには、とびきりきれいに撮れた自撮りを添付した。五通目以降は、毎回撮り下ろしを送っている。あの画像を見て断るなんてあり得ない話だ。
クソッと爪を噛みながら、ギヨームはなんとか平常心を保とうとしていた。
ミヤは普段は、一般企業に勤務しているようだった。仕事の都合で忙しいこともあるだろう。
そう考えた次の瞬間、『ノンケ処女のメス堕ち』というミヤのハメ撮り動画が流れてきた。
「こ……こいつ……!」
ギヨームのDMを無視して、他の男と遊んでいるのか? いや、ノンケ処女さんの方が先に連絡していた可能性もある。ギヨームが無視されているなんてそんなことはーー
『今日はRさん(@*******)とデート! ハメ撮りアップは後日』
追い打ちをかけるようなその直後の呟きに、ギヨームは白目を剥いた。
ギヨームの元に、待ち望んでいたミヤからの返信が届いたのは、その二日後だった。
待ち合わせ場所のカフェにはマスクをしていないミヤがいた。思った通り、見た目は及第点だ。
ミヤは、向かいの席に座ったギヨームにチラッと不機嫌そうな視線を向けた。
「初めまして」
微笑みを湛えたエレガントな挨拶に、ミヤがチッと舌打ちする。
「不躾なお願いなのだが、ここの支払いは貴公持ちにしてもらえないだろうか」
席に着いて早々、不躾すぎる申し出をするギヨームに、ミヤは、はあ!? と呆れた声を出して、大きなため息をついた。
「どうでもいいけど、さっさと済まそう。あんたさ、いい加減クソリプやめてくんない?」
イライラした声で詰め寄るミヤに、ギヨームは首を傾げる。
「クソリプとは?」
ミヤはスマホの画面をギヨームの目の前に突き出す。そこには、ミヤの投稿に対するギヨームの呟きが表示されていた。
ーーこの受け、エロ垢のくせにブスすぎ
ーーわたしには理解できないけど、こういうネコがモテるのかな……顔も体もアレだよね
ーー腰使い下手くそすぎない…? ブスでテクもないとかかわいそう
ーーこいつら全員ブス
ーーま~~~たブスが顔出しエロ垢してる…
ーー需要ないでしょ。帰れ
ーーマスク越しにもブスなのがわかるの草
「スパム並みにDMは送ってくるし、引リツ空リプで悪口言うのも陰湿だし……俺だけならともかく、俺が遊んでる人のこと貶すのやめろよ」
貴様が返信しないからだ、と言いたかったが、ギヨームにも、そういう空気じゃないことを察する程度のデリカシーはあった。
「じゃあ、もう二度と関わらないでね」
伝票を持って立ち上がるミヤに、慌てて声をかける。
「ちょっと待ってくれ! わたしとのハメ撮りは……?」
ミヤはうんざりした表情でギヨームを見下ろすと、あのさあ……と口を開いた。
「悪いけど、趣味でやってることだから、俺がいいなって思う人にしか声かけないの。あんた顔はいいけど、性格最悪だしヒョロガリ過ぎ。細い子が好きな人もいるだろうけど、裏垢やるならもう少し鍛えたら? あと、風呂入った方がいいよ」
ミヤはそう言い捨てると、とっとと店を出てしまった。
どうせなら、ランチセットも頼めばよかった。
家に帰ったギヨームは、倒れ込むようにベッドに横たわった。ミヤからはブロックされた。
初めて男に振られた屈辱に震えながら、自分の過去を振り返る。
前世では、相手に応じた攻略法をとっていたのではなかったか? 処女厨には恥じらいのある初々しい男を、ビッチ好きには奔放で淫らな男を演じて籠絡してきた。それが元で断罪されることになるのだが……とにかく、今のギヨームは初心を忘れていた。
相手を堕とすには、まずリサーチから。
ギヨームは早速作った別垢から、ミヤの呟きを精査し始めた。
「本当に釣れたぞ! 所詮は性欲バカよ。やはりこの手の男は単純だな」
筋トレを始めて一カ月。うっすらと筋肉のついた上半身裸の自撮りをミヤに送ると、会いたいという返事が返ってきた。顔はギヨームだとわからないように、スタンプで加工している。
「それにしても、騎士団のやつらがやっていた鍛錬はまるで無駄だな。うける」
最初はきつくてすぐにへこたれていた筋トレも、理論を理解して効率的にこなせるようになると、心身が健康になっていくのを感じた。
厚みが増して体の不調が解消されるのと同時に、もともとポジティブだった性格はさらに前向きになり、己に対する盤石の自信が漲るようになっていった。
ミヤとの絡みを足掛かりに、人気裏垢男子とのハメ撮り動画で収益を上げるーーギヨームの描く明るい未来がすぐそこにあった。
待ち合わせ場所でギヨームを見たミヤは、ゲっと鶏の断末魔のような声を上げた。
「なんか見たような顔だと思ったんだよな……」
加工して騙したことを棚に上げて、顔を忘れるなんて失礼な奴だと一瞬イラッとしたものの、ギヨームはすぐに笑顔を浮かべた。筋トレは心の余裕を生む。
「以前は大変失礼しました。どうしてもミヤさんのお相手をしたく、こんな手段をとってしまいました……」
俯き加減で眉を下げ、上目でミヤを見つめる。
普段の呟きから、ミヤは礼儀正しくて一見大人しそうなビッチが好みだと分析していた。
「いや、まあ……謝ってくれるならいいよ。あー……どうしようかな……」
ミヤは、特大地雷と寝るか、好みの男を振るかの二択で揺れているようだった。
ギヨームはミヤの耳元に顔を寄せると、
「もう準備してきてるので……ミヤさんの好きにされたいです」
と、囁いた。
ホテルの部屋に入った瞬間、ミヤに抱き寄せられて唇が重なる。ミヤが背中に手を回すのに合わせて、ギヨームもミヤの腰を抱いて引き寄せた。
荒々しく舌を絡ませると、ギヨームは鼻から抜けるような声を漏らした。後頭部を支えるミヤの手に力がこもる。急速に下半身に血が集まるのがわかった。
「あ、あの……シャワーとか……」
唇を離したタイミングでギヨームが声をかける。即ハメでも全然大丈夫なのだが、一応恥じらいを見せる。
「浴びたい? 一緒に入る?」
浴びたいかと聞かれれば、別に浴びたくはない。嫌々ながら施設で軽く風呂に入ってきたが、そもそもギヨームには入浴の習慣がないのだ。
「このままじゃだめですか?」
「俺はいいけど……」
ミヤの言葉に、ギヨームが床に跪く。見上げると、興奮した顔のミヤと目が合った。
視線を合わせたままミヤのズボンを下着ごとずらすと、ギヨームはエッと呟いて固まった。
ぼかし越しに見えるそれを、大きいだろうなと思ってはいたが、予想以上のサイズだった。
ギヨームが恐る恐る、重さを測るように両手で撫でると、ゆるく勃ち上がりつつあった陰茎はすぐに完勃ちした。
カリが高くて上反りで、真ん中部分が太くて全体に血管が浮いている。赤黒い凶悪なそれを見た瞬間、ギヨームの目の色が変わった。
瞳の中にハートが浮かんだみたいな、うっとりとした表情で亀頭を口に含むと、ちゅーっと音を立てて吸った。
舌を裏筋にペタッと貼り付けて、手を添えて唇を上下に動かす。久しぶりの味に、唾液が溢れて止まらない。
「やば……すぐイキそう……」
ミヤの腰が引けるのを抑え込むように、ギヨームが喉の奥まで咥える。狭い咽喉に締め付けられて、ミヤはあっさりと射精してしまった。出た後も舌で転がすようにして、精液を啜る。
はあはあと肩で息をしているミヤと目が合った。
ミヤはわざと髪をぐちゃぐちゃにするように、ギヨームの頭を掻き乱した、濡れた唇が緩く開き、白い歯と赤い舌が覗く姿は、どすけべかわいく見えるはずだ。
「……ベッド行く?」
ミヤが声をかけると、ギヨームは甘えるように抱きついた。縺れるようにしてベッドに倒れ込む。
「さっきの、すごく気持ちよかったよ」
ミヤにそう言われて、ギヨームは恥じらうように笑った。
当たり前だ。社交界の黒薔薇と言われた(以下略)
ミヤは流れるような手つきで、ギヨームの服を脱がしながら、首筋や胸を愛撫する。あっという間に下着だけになったギヨームは、不安そうな目でミヤを見つめた。
エロ自撮りを送りつけて、即フェラするような男に恥じらいなどないが、これはそういうプレイだ。
ミヤもわかっていて、意地悪そうな目で見つめながら、下着をずらした。なんの変哲もない黒のボクサーなのが不本意だが仕方がない。金が入ったらすけべ下着を買おう。
下着を脱がされ、ギヨームの陰茎が露わになる。じっと見つめられて、先走りを垂らしたものがひくひくと揺れた。
「……ミヤさんも脱いでください」
ギヨームの火照った視線を感じながら、ミヤが膝立ちになって上着を脱いだ。
ギヨームが手を伸ばして割れた腹筋をなぞると、再び勃ち上がりつつある陰茎が揺れる。
「あの……早く欲しいです」
罪を告発されてからこの方、禁欲生活を強いられてきたギヨームは我慢の限界を迎えていた。
ゴムをつけようとするミヤの陰茎を掴んで、後ろにあてがう。ギヨームは膝を立てて上体を起こすと、入っていくところをじっと見つめた。
「あっ♡おっきい♡」
ミヤが太腿を掴んで腰を押し込むと、ずるっと陰茎が中に入った。熱くて柔らかい粘膜が、媚びるように絡み付く。ギヨームは腰を浮かせて、あー……とか細い声を上げた。
「でっか♡これ、やば……♡」
挿入されただけなのに、ギヨームはがくんと仰け反ると、ひくひくと痙攣した。
「あ、♡当たってる♡♡そこだめ♡♡♡」
当たってるというか、ギヨーム自身が当てにいっているのだが、『そこ』はカリが引っかかって、擦ると中が吸い付いてきた。
「奥、奥きて♡」
ギヨームがミヤの背後に脚を回してぐっと引き寄せた。勢いでくぽっと、入ってはいけない深い場所に嵌ったような感覚がした。
「うそ♡イク、あっ……♡待って♡♡やら、早い♡♡」
吸い付いて離さない粘膜の感触と、締め付けてうねるような中の動きに、思わずミヤの腰が止まる。ギヨームは声にならない喘ぎを漏らしながら、びくんと体を揺らした。
ミヤは挿入前に一度、フェラで抜いているのでまだ余裕があったが、ギヨームはミヤが動かなくても、勝手に痙攣しながら潮を吹いた。
汁まみれになって、虚な目でぴくぴくと痙攣しているギヨームを、ミヤがぎゅっと抱きしめた。くっついたまま、軽いキスをして、ゆっくりと腰の動きを再開する。
気持ち良すぎて辛いのに、ねだるように腰が揺れた。
「もう平気?」
返事はなかったが、ミヤが腰を動かすと、ギヨームは背中を反らしてぴくぴくと震えた。
「あっ、やば……♡やっぱ待って……♡」
ギヨームが力の入らない手でミヤの胸を押す。
「大丈夫、大丈夫」
ギヨームの反応がよかったところを責めるように、ミヤが腰を動かす。
「やだ……っ♡おぐ、ん゛♡し、ぬ゛♡♡しんじゃう♡♡♡」
逃げるようにずり上がるギヨームの腰を掴んで、奥に押し当てたままくぽくぽと嵌め突きする。
「ひっ……!! おくッや゛めてぇ……♡あ゛、ぉ…っ!?♡♡キて、る゛う゛ッ…ッ♡♡あ゛ッ、♡♡イ、くッ♡♡♡イッちゃ、あ゛あッ」
奥にどくどくと注がれる感覚に、宙に浮いた脚が空を蹴った。
イッた後、虚な表情でぜいぜい息を吐いていたギヨームが、覆い被さるミヤを押し退けてのっそりと体を起こした。
「貴様、酷いことするじゃないか」
「気持ちよさそうにしてたじゃん」
「そ、それは……こんなのは初めてだから……」
視線が合うと、ミヤがちゅっと音を立てて軽くキスをした。あんなにセックスで乱れまくったのに、挨拶のようなキスではにかむ表情に、ミヤの心がグラッと揺れる。
腰をさするギヨームの手に重ねて、ミヤも肌を撫でた。自然と、手が下に降りる。まだ濡れているそこに指を入れるとギヨームは脚を開いて受け入れた。
舌を絡めながらくちゅくちゅと指を抜き差しすると、ギヨームがぎゅっと抱きついてくる。
「ここ好き?」
ミヤの指がふっくらとしたしこりををなぞる。焦らすように指を動かすと、ギヨームもミヤの陰茎を扱いた。くっついてキスをしながらお互いに触り合っていると、燻るような快感がずっと続いて、多幸感がドバドバと溢れ出る。
「そうだ!」
ギヨームが、ハッと我に返ってミヤの体を押し返す。
「ハメ撮りは!?」
「撮ってないけど」
「なんだと!?!?」
何のためにこいつと寝たのか。
ギヨームが頭を抱えてうなだれていると、ミヤが顔を覗き込んでくる。
「よくなかった?」
「……よくなくはない」
ミヤは、落ち込むギヨームの頬にキスをすると、
「ハメ撮りが性癖っていうならともかく、リスクもあるんだし、あんた騙されやすそうだから、こういうのしない方がいいと思うよ」
と慰めた。
「くそ、ヤった後に風俗嬢に説教するおっさんか。貴様こそ、散々遊んだ上に金儲けしてるくせに! ずるいぞ!」
「いや、儲けてないし、今は付き合ってる相手がいないから遊んでるだけでーー」
「いいから撮影しろ!」
地団駄を踏むギヨームに呆れつつ、ミヤはスマホで撮影を始めるがーー
「あっ……♡っんんん……っ! あ゛ッ♡とまッでえ゛えぇ…ッ♡♡」
「手当たり次第裏垢に声かけないって約束するなら、止まってもいいけど」
「ひっ……!! ふか、あ゛ぁ♡ッふかいィッ♡♡約束す……♡♡」
「約束する?」
「す、るッ♡イッちゃ、あ゛あッ♡な、なん゛れ♡♡止まれッ……♡♡イ゛ッでッ♡♡♡イッ…ッッ♡♡♡♡」
その後、動画がアップされることはなく、しばらくしてミヤとギヨームのアカウントは、同じタイミングで削除された。
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