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剃られる男

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 飯行かん? と誘われて、ラブホテルのバスルームでカミソリを握らされている。

 池上に連れられて行った和食の店は、雰囲気がよくて旨かった。

「この前、接待で使ってから、また来たいなと思ってて。でも、香月くんの方がいろんな店知ってそうだよね」
「いや、全然。それこそ仕事の付き合いとかじゃないと、外食しない」

 池上は注文のタイミングや店員への気遣いが手慣れていて、さすがは有名企業の会社員だなと思わせた。
 音楽制作ばかりしてきたせいで、年齢相当の社会常識がない自覚はある。対人折衝も個人事務所の社長兼マネージャーである弟に任せているので、自分にはできない池上の場慣れた振る舞いに、香月は素直に感心した。

「じゃあ何食ってんの? 自炊? 弟くん?」

 そう訊かれた香月は、返事に困って口籠った。

「……栄養バーとか、ゼリー飲料とか」

 えぇ……と呆れられて、思わず下を向く。
 弟には家事全般をしてもらっているが、料理は無理だと断られている。
 補助食品ばかり食べていては体に良くないとわかっているものの、食に執着がない香月にとって、手っ取り早く腹を満たせるのは都合がよかった。

「デリバリーでもいいんだけどさ、何食べるか考えるのが面倒なんだよ」
「えぇ~俺、デリヘルの嬢とかオプションとか選ぶのめちゃめちゃ好きだけど。すげえ真剣に悩む」

 こんな上品な店にいても、すぐに風俗ネタに話を持っていく池上へ、香月は呆れた顔を向けた。

「俺、行きたい店いろいろあるから、香月くん付き合ってよ」
「風俗の話?」
「飯の話だよ!」

 飯ならいいよ、と香月が答えると、池上は言いにくそうに、あのさ……と呟いた。

「早速だけど、このあと付き合って欲しいことがあって……」





 店を出た後、池上に連れられるままにラブホテルに入った。

「ちんちんバカになっちゃって、しばらく使うタイミングなさそうだから、この機会に脱毛しようと思って」

 浴槽の縁に腰掛けた池上の股間は、すでに無毛の状態だった。人ごとながら、エロ方面の思い切りの良さに若干心配になる。

「施術前に自分で剃毛しないといけないらしいんだけど、前はともかく後ろは無理じゃん。だから、香月くんに剃って欲しくて」

 真っ裸の池上は香月にカミソリを渡すと、バスタブに手をついて尻を向けた。香月は濡れないように服を脱いだものの、パンツだけは穿いている。

「池上くん、そんなに毛深くないじゃん」

 香月をバスルームに呼ぶ前に洗浄したのか、アナルの縁がぽってりと赤くなっている。その周辺にまばらに生えた陰毛を指先で撫でると、池上の腰が揺れた。

「毛がない方が清潔だし、性感エステでVIO脱毛もしてくれるところがあって、行ってみようかなって」

 しばらくちんちんは使わないと言ったそばから風俗通いを宣言されて、香月はげんなりと溜息をついた。

「……まあいいけど」

 香月はアメニティのシェービングクリームを肌に乗せ、カミソリを当てた。慎重に刃を滑らせていくと、脚の間から覗く池上の陰茎が緩く勃ち上がるのが見えた。

「他人に刃物向けられてんのに、よくそんな呑気に勃起できるね」

 池上は、エッと声を上げて後ろを振り返った。

「か、香月くんのこと、信用してるから……」

 そう言いながらも、池上のものはみるみる萎んでいく。 
 まばらに生えていただけの毛は、数回刃を当てるとすぐに剃り終えた。

「終わったよ」

 シャワーでクリームを洗い流すと、池上は拍子抜けしたような顔を香月へ向けた。

「えっと、あの……俺、もう準備してて……」

 香月が、そうなんだ、と知らんぷりをすると、池上はもじもじと俯いた。

「まあ、これはこれでいいかもね」

 香月は剃ったばかりの肌を撫でた。
 湿った肌に顔を寄せて、ぷっくりと盛り上がったアナルに舌を這わせる。

「えっ……♡あっ、や……♡♡」
「つるつるで舐めやすい」

 わざと音を立てて吸い付くと、池上は内腿を震わせた。垂れ下がっていた陰茎が、再び頭を擡げる。
 唾液で濡らした場所へ指を差し入れると、中がちゅぱちゅぱと吸い付いてきた。指を押し込んで絡みつく粘膜を擦り上げると、池上はぎゅっと体をこわばらせて指を締め付ける。

「あっ……♡や、イ、ッ♡♡……! あぅ……もっと、お……くッ……♡♡♡」

 冷たい浴室の床にぺったりと尻をついた池上は、熱い吐息とともに、香月くん……♡と名前を呼んだ。

「香月くん♡早く──……」

 池上はとろんとした、物欲しそうな目を香月の股間に向けると、へっ? と間の抜けた声を上げた。





「パイパン嫌いなら、先に言ってよ~」

 ベッドの縁に腰を下ろした香月を、裸のままカーペットに座り込んだ池上が見上げる。

「嫌いってわけじゃないけど……だいたい池上くん、俺に聞く前にもうつるつるにしてたし」

 池上の無毛の股間へ、香月がチラッと視線をやった。

「……毛がある方が、男とヤってるって感じがするじゃん」
「ああ、そっち……」

 池上も、自分の股間を覗き込む。

「あと、毛がないと子どもとヤってるみたいで罪悪感がヤバい」
「こんなズル剥けのガキいないだろ!」

 池上は香月の脚の間に入り込んで、シーツの上に頭を乗せた。目の前のものは、大人しく下着の中に収まっている。

「……フェラする?」

 下から覗き込んでくる池上に、香月は、は? と声を漏らした。

「え……下手そうだからいい」

 池上は不服そうな表情をするが、香月は眉を顰めて腰を引いた。

「だって池上くん、フェラなんてしたことないでしょ」
「やったことはないけど、されたことはめちゃくちゃあるから! ディープラーニングしてるから!」

 そういう意味じゃないんだけどなぁ……と、香月は困ったように池上を見下ろした。

「いや、そもそもできんの?」
「クンニと思えば余裕っしょ!」
「そのペニクリでアンアンよがってんのは誰だよ」

 香月は諦めてパンツを脱いだ。
 くたりと萎えた陰茎を手に取った池上は、やはり抵抗があるのか、躊躇うように唇を寄せる。

「よく考えたら、俺クンニ好きじゃないし、滅多にやんねえわ」
「じゃあ、しなくていいって」
「やるよ! やるけどさぁ……」

 おずおずと口に含んだものの、困ったように見上げてくる頬を、香月はペチンッと少し強めに叩いた。
 そんなことをされるとは思っていなかったのか、池上は動揺した表情で香月を見た。その目が、じわっと潤む。
 池上の口の中で、香月のものが大きくなった。

「歯立てないでね。舌と唇はペタって付けて……ん、上手。喉開ける?」

 口調は優しいが、容赦ない手つきで後頭部を押さえつけ、喉の奥を犯す。耳や顎を撫でると、池上は涙の溜まった目で香月を見上げた。

「疲れたら手を使うのもアリだけど、俺、手コキはあんまり好きじゃないからさ。もうちょっと頑張れる?」

 池上は苦しそうな表情で、健気に香月の言葉に従った。香月は涙や涎を労わるように拭いながら、つま先で池上の股間をつついた。

「こんなに辛そうなのに、ガチガチに勃起してるじゃん」

 喘ぎ声が漏れて歯を立てそうになるのを、池上が慌てて堪える。雑な足コキに、びくびくと体を震わせながらあっさりと射精してしまった。
 ずるっと口の中から陰茎を抜かれ、思わずおえっと咽せる。
 池上は、はあはあと息を吐きながら、香月の太腿に頭を乗せた。

「……香月くんは、時々意地悪だよね」

 涙が滲んだ目で、拗ねたように見上げられる。

「M性感にハマってから、ゲイ向けのマチアプ入れたりもしたけど、やっぱり男とヤルのは怖くてさ……さっきも、ちょっと怖かった……」

 香月は、ちょっとやり過ぎたかと反省して、ごめんと謝った。ヘッドボードへ手を伸ばしてティッシュを数枚抜き取り、池上の顔を拭く。

「でも、香月くんだと怖くても気持ちいいんだよ。だから怖いことでも、香月くんの好きにされたい」

 太腿に頭を乗せた池上が、目の前にある、まだ硬いままの陰茎を見つめる。おずおずと唇を寄せて、ちゅっと先端に触れると、へへっと照れたように笑った。
 愛撫ともいえない程度の刺激だったが、さっきのイラマチオよりずっと興奮した。

 香月は池上を抱き起こすと、ベッドに横たえた。

「あんまりそういうこと、軽々しく言わない方がいいよ」

 危ういなあと思いながら、香月は池上の脚を開いた。





「余計なお世話かもだけど、脱毛するなら風俗じゃなくて、ちゃんとしたサロン行った方がいいと思うよ」

 精液に塗れた池上の股間を眺めながら、香月が言った。確かに、毛がないと手入れが楽だろうなとは思った。

「あ、ヌキ目的だから、ちゃんと脱毛できなくてもいい! ていうか、脱毛完了しちゃうと通う目的がなくなるから、むしろ脱毛できない方がいい!」

 呆れた表情を浮かべる香月へ、池上がもじもじと恥じらうような視線を向ける。

「でも、脱毛はやっぱりいいかな……」

 せっかく剃ったのに、と香月が言うと、池上は言いづらそうに口を開いた。

「……手入れしてない尻を香月くんに見られるのが恥ずかしくてさ……」
「見られるのは嫌で、剃られるのはいいのかよ」
「あれはプレイみたいなもんじゃん!」

 香月が呆れていると、池上は、でも……と、ニコッと笑った。

「でも、香月くんが毛がある方がいいって言うなら、脱毛なしの普通の性感エステにする!」

 香月は、あっそう、と呟いて、池上のOラインを撫でた。

「え……♡もう無理だよぉ……♡」

 そう言いながら股を開く池上を一瞥して、香月が起き上がった。

「チクチクするから、生えそろうまでセックスはナシね」
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