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最終話
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宮坂は、えげつないキスでヘロヘロになった俺から唇を離すと、あやすように背中を優しく撫でた。甘えてもたれかかると、ぎゅっと抱き寄せられる。
見上げると、とろけるような視線を向けられた。
「宮坂、もっと──」
「早く部活行かないと」
宮坂は俺の言葉を遮ると、体を離してさっさと走り出した。
……嘘だろ? もう完全にやる気なんだが。顔はのぼせてるし、腰は砕けてるし、なんなら勃ってるし、ケツは疼くし、部活どころじゃないんだが。
そう。ケツが疼く。
俺が攻めの可能性や、下手したら健全の可能性も考えていたが、そんなことなかった。
めちゃくちゃ受けだった。
宮坂に抱かれたいし、ケツに突っ込まれたい。
なんなんだよ、あいつ。ここはサボれよ! ほかほかの受けを置いてけぼりにするなんて、どんだけストイックなんだよ!
呆然とその場に立ち尽くすものの、宮坂が戻ってくる気配はまるでなかったので、仕方なく後を追いかけた。なんなら、性欲を発散させるために、過去一の運動量で練習した。
部活後、床にうずくまってぜえぜえ肩で息をしている俺の隣に、宮坂がしゃがむ。
「今日、気合い入ってたな」
お前のせいだよ。
俺は床に肘と膝をついた姿勢のまま、寝ぼけたことを言う宮坂を睨んだ。
不機嫌さを剥き出しにして凄んだはずなのに、宮坂は目が合うと顔を赤くした。
汗だくの四つん這い、荒い息、火照った肌、苦しそうな表情……事後じゃん。
宮坂は不自然に視線を逸らすと、
「……今日、家まで送って行ってもいいか?」
と呟いた。
帰り道はずっと、微妙な距離感でソワソワしていた。
もうちょっと近づいても大丈夫? 手を繋いでも平気? そう悩んで何もしないうちに、家に着いた。
普段は、学校から近くてラッキーと思っていたけど、今は家が徒歩一時間くらいの場所だったらいいのにと思った。
家の前で、じゃあ、と挨拶をするが、離れがたかった。もじもじと向かい合ったまま、時間が過ぎていく。
「……少し寄っていく? 今、家に誰もいないし」
しんと静まり返った家に、二人で入る。
「何か飲む? お茶くらいしかないかもだけど」
飲み物を取ってこようとする俺を、宮坂が見つめた。
キスされるなって思って目を瞑ると、宮坂の体温が近づいてくる。ドキドキしながらじっとしていると、おでこに何かが触れた。は?
呆れて目を開けると、真っ赤になった宮坂と目が合った。いや、かわいいけど……
首を伸ばして俺の方から宮坂にキスをした。
下手くそでぎこちないキスが、導かれるままに激しくなっていく。
息が上がり、立っていられなくなって宮坂の肩を掴むと、腰を抱き寄せられた。お互いの下半身が布越しに当たって、熱が交わる。
もつれるようにベッドに倒れ込み、さらに深く口づけを交わした。
「朋己」
キスの合間にそう呼ぶと、宮坂が驚いた顔で俺を見た。
「名前、知ってたんだ」
「そりゃ知ってるだろ」
宮坂は眉間に皺を寄せて、戸惑った表情で俺を見下ろした。
「……あんまり、名前で呼ばれるの好きじゃない」
「なんで? かわいいじゃん」
「かわいいからだよ」
弱りきった顔の宮坂へ、
「ともみ、ともみ、ともみ」
と何度も名前を呼んだ。
「朋己って名前、好きだよ」
「……暢大が呼んでくれるなら、俺も好きになるよ」
宮坂の重みで、ベッドが軋んだ。
啄むようなキスをしながら、大きな手が肌に触れる。
ドキドキはするけど、不安はなかった。宮坂が痛いことや苦しいことは絶対にせずに、ただ気持ちいいことしかしないと信じて疑わなかったし、俺の体は宮坂を受け入れて気持ち良くすることができるとわかっていたからだ。
「暢大、俺の恋人になって」
やる前に律儀に伝える宮坂に、思わず笑ってしまった。
「そんなの、今更だろ」
宮坂の指が中に入ってくる。
自分の声と思えない甘ったるい声が漏れて、知らないうちに脚を大きく広げていた。すけべな声を出して、すけべなポーズを取っていると思った。恥ずかしいけど、宮坂がそれに興奮しているのがわかって、更に喘いだ。
「朋己、もう……」
初めてだけど、俺の後ろはとろとろにふやけて、宮坂のものを受け入れた。熱くて硬くて、貫かれただけで俺は射精してしまった。
早すぎて恥ずかしい。でも気持ちいい。
宮坂が中にたくさん出すまで、俺は何度もイカされた。
「岩谷のことだけど……」
終わった後、ベッドにうつ伏せになった宮坂が呟いた。
デリカシーのなさに呆れて、脚を小突いた。
「ただのクラスメイトだよ。特別仲いいわけでもないし、何にもないって」
「いや、それは……仲良くてもいいんだ。岩谷と話すなとか、そんなこと言うつもりじゃないし……でも暢大が俺以外の人といちゃいちゃしてるのを見ると……」
宮坂はシーツに顔を埋めてもごもご言った。
「……ムカつく」
小さな子どもみたいな、拗ねた口調に思わず笑ってしまった。
心配しなくても、岩谷が推しカプの邪魔をすることはないよ。
見上げると、とろけるような視線を向けられた。
「宮坂、もっと──」
「早く部活行かないと」
宮坂は俺の言葉を遮ると、体を離してさっさと走り出した。
……嘘だろ? もう完全にやる気なんだが。顔はのぼせてるし、腰は砕けてるし、なんなら勃ってるし、ケツは疼くし、部活どころじゃないんだが。
そう。ケツが疼く。
俺が攻めの可能性や、下手したら健全の可能性も考えていたが、そんなことなかった。
めちゃくちゃ受けだった。
宮坂に抱かれたいし、ケツに突っ込まれたい。
なんなんだよ、あいつ。ここはサボれよ! ほかほかの受けを置いてけぼりにするなんて、どんだけストイックなんだよ!
呆然とその場に立ち尽くすものの、宮坂が戻ってくる気配はまるでなかったので、仕方なく後を追いかけた。なんなら、性欲を発散させるために、過去一の運動量で練習した。
部活後、床にうずくまってぜえぜえ肩で息をしている俺の隣に、宮坂がしゃがむ。
「今日、気合い入ってたな」
お前のせいだよ。
俺は床に肘と膝をついた姿勢のまま、寝ぼけたことを言う宮坂を睨んだ。
不機嫌さを剥き出しにして凄んだはずなのに、宮坂は目が合うと顔を赤くした。
汗だくの四つん這い、荒い息、火照った肌、苦しそうな表情……事後じゃん。
宮坂は不自然に視線を逸らすと、
「……今日、家まで送って行ってもいいか?」
と呟いた。
帰り道はずっと、微妙な距離感でソワソワしていた。
もうちょっと近づいても大丈夫? 手を繋いでも平気? そう悩んで何もしないうちに、家に着いた。
普段は、学校から近くてラッキーと思っていたけど、今は家が徒歩一時間くらいの場所だったらいいのにと思った。
家の前で、じゃあ、と挨拶をするが、離れがたかった。もじもじと向かい合ったまま、時間が過ぎていく。
「……少し寄っていく? 今、家に誰もいないし」
しんと静まり返った家に、二人で入る。
「何か飲む? お茶くらいしかないかもだけど」
飲み物を取ってこようとする俺を、宮坂が見つめた。
キスされるなって思って目を瞑ると、宮坂の体温が近づいてくる。ドキドキしながらじっとしていると、おでこに何かが触れた。は?
呆れて目を開けると、真っ赤になった宮坂と目が合った。いや、かわいいけど……
首を伸ばして俺の方から宮坂にキスをした。
下手くそでぎこちないキスが、導かれるままに激しくなっていく。
息が上がり、立っていられなくなって宮坂の肩を掴むと、腰を抱き寄せられた。お互いの下半身が布越しに当たって、熱が交わる。
もつれるようにベッドに倒れ込み、さらに深く口づけを交わした。
「朋己」
キスの合間にそう呼ぶと、宮坂が驚いた顔で俺を見た。
「名前、知ってたんだ」
「そりゃ知ってるだろ」
宮坂は眉間に皺を寄せて、戸惑った表情で俺を見下ろした。
「……あんまり、名前で呼ばれるの好きじゃない」
「なんで? かわいいじゃん」
「かわいいからだよ」
弱りきった顔の宮坂へ、
「ともみ、ともみ、ともみ」
と何度も名前を呼んだ。
「朋己って名前、好きだよ」
「……暢大が呼んでくれるなら、俺も好きになるよ」
宮坂の重みで、ベッドが軋んだ。
啄むようなキスをしながら、大きな手が肌に触れる。
ドキドキはするけど、不安はなかった。宮坂が痛いことや苦しいことは絶対にせずに、ただ気持ちいいことしかしないと信じて疑わなかったし、俺の体は宮坂を受け入れて気持ち良くすることができるとわかっていたからだ。
「暢大、俺の恋人になって」
やる前に律儀に伝える宮坂に、思わず笑ってしまった。
「そんなの、今更だろ」
宮坂の指が中に入ってくる。
自分の声と思えない甘ったるい声が漏れて、知らないうちに脚を大きく広げていた。すけべな声を出して、すけべなポーズを取っていると思った。恥ずかしいけど、宮坂がそれに興奮しているのがわかって、更に喘いだ。
「朋己、もう……」
初めてだけど、俺の後ろはとろとろにふやけて、宮坂のものを受け入れた。熱くて硬くて、貫かれただけで俺は射精してしまった。
早すぎて恥ずかしい。でも気持ちいい。
宮坂が中にたくさん出すまで、俺は何度もイカされた。
「岩谷のことだけど……」
終わった後、ベッドにうつ伏せになった宮坂が呟いた。
デリカシーのなさに呆れて、脚を小突いた。
「ただのクラスメイトだよ。特別仲いいわけでもないし、何にもないって」
「いや、それは……仲良くてもいいんだ。岩谷と話すなとか、そんなこと言うつもりじゃないし……でも暢大が俺以外の人といちゃいちゃしてるのを見ると……」
宮坂はシーツに顔を埋めてもごもご言った。
「……ムカつく」
小さな子どもみたいな、拗ねた口調に思わず笑ってしまった。
心配しなくても、岩谷が推しカプの邪魔をすることはないよ。
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