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5戦目
1つ目の答え
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結局その本屋では『魔力のルーツを探る』以外に目ぼしい本が見つからず、それだけを買って宿に戻った。もちろん帰り道は店主に聞いた。
昼過ぎに宿に戻ってきたけど、エリアスさんは部屋から出てきていない様子で、少し心配になったのでドアをノックするも「ちょっと頭痛がするだけだからー、寝てれば治るから心配しないで―」と頑なに部屋に入れさせてくれなかった。
当の本人が心配するなと言っているし、部屋に入れないなら看病しようもないので、仕方なく諦めて昼飯は一人で食べる事にした。
そしてお昼も食べ終わった後、部屋に戻ってからは先ほど買った『魔力のルーツを探る』を読む事にした。
タケバヤシという人が書いたその本は、研究レポートとかよりももっと砕けた文章で書かれていて、正直良い情報はあまり載ってないかもなと最初は思っていた。しかし魔力の文字に関する話においては知らない情報が多く、研究所に帰ったらハシモトさんと情報を共有する価値があると思える部分も多かった。
そして読み進めていくと、セキヤが知りたがっていた情報の一つがそこに書かれていたのである。
『魔力に浮かび上がる文字は、その魔力がどういう効果を発揮するかを明確にしている。そしてこの文字数が多ければ多いほどより強力な効果を持つ魔法が使えるようになる。これは魔力の基本知識の一つである。ただし現在四文字以上の魔力というのは本当に極一部しか見受けられない。私は見つかっていないではなく見受けられないと表現しているが、ここに私の主張の全てが詰まっていると言って良い。カナイの数多くある研究所がそれぞれ魔力の事を日夜研究していて、四文字の魔力が数える程度しか見つかっていないと言うのはおかしいはずなのである。それだけ強力な魔素の塊が必要と言うのは頷けるが、魔法使いが複数人集まって魔力を集中させれば何かしらの魔力はできるはずだと思っている。つまり四文字の魔力と言うのはそれとは別に、公にできない問題を内包している可能性が高いと考えているのだ。そして私はその答えを一つ見付けたのである。』
セキヤは、波乱万丈の冒険活劇を読んでいるかのようなドキドキを感じつつ、次のページの答えに期待していた。そしてそれが非情な現実だと知った。
『私の叔母も魔力に精通している魔法使いだったのだが、先日彼女はこの世を去った。それは寿命でもなく事故でもなく、他殺だった。叔母を殺した犯人は叔母と相打ちしたために同じ場所で死んでいたのだが、実はその現場がおかしな事になっていたのである。犯人の死体はあるものの、叔母の死体が無かったのである。最初は叔母はどこかに逃げて生きていると思いたかったが、現実は違った。犯人は叔母を魔力剣で殺害していたため、叔母の魔力が剣に宿っていたのである。見た事のない魔力であり、そしてそれが叔母を象徴する魔力だったために、間違いなくそれが叔母だという事になった。その魔力が「魔法使為」。魔法を使える魔力だったのだ。』
その答えを見て、セキヤは全てを理解した。
――人を殺せば、簡単に強力な魔力が手に入るからか。
そこから先は四文字の魔力の有用性と、それが人殺しという最大のタブーによって手に入る可能性がある危険性が書かれていたが、セキヤにとってそれ以降は大体予想できる事しか書かれていなかった。
『魔法使為』、魔法を使える魔力。
その存在を見付けても素直に喜べるはずもなく、またその存在が自分の中では思ったより意外ではなかった事に驚いていた。
――まあ、魔物を倒して魔力が手に入るメカニズムを考えれば、あり得ない話じゃないよな。
魔物を倒して魔力を宿す事が出来るのは、魔物が魔素の塊で出来ているからに他ならない。つまり魔素を操っている魔法使いなら同じ事が出来ても不思議じゃないし、下手をすれば魔法使いでなくとも同じ事が可能かもしれない。
――そりゃ剣闘士に知られるわけにはいかないよな。
四文字の魔力は強力だが、『魔法使為』以上に強力な魔力があるとは中々思えない。それがもしも一般人を殺しても手に入るとなれば、この国はとっくに荒れ果てていてもおかしくない。そういう危険性を考えて、魔力に関する情報はある程度管理されているのだろう。そう考えれば、カナイのあの立地も頷ける。非人道的な手段で魔力が手に入る可能性をいち早く見つけ、それに対して先だって対策を立てる為なのだろう。もしかしたらこの本の著者の叔母が殺された事件を基にそういったシステムに変えたのかもしれないが、いずれにせよセキヤの追い求めていた魔法を使える魔力というのは、現状では諦めるしかないという結論だった。
――人を殺さずに手に入る方法か、もしくは全く別の魔力を探すか……。
これからの事をどうしようかと考えようとしたが、本を一冊読み終わった疲労感が眠気を誘っていて、一旦ベッドで横になるかとセキヤは昼寝をする事にした。
昼過ぎに宿に戻ってきたけど、エリアスさんは部屋から出てきていない様子で、少し心配になったのでドアをノックするも「ちょっと頭痛がするだけだからー、寝てれば治るから心配しないで―」と頑なに部屋に入れさせてくれなかった。
当の本人が心配するなと言っているし、部屋に入れないなら看病しようもないので、仕方なく諦めて昼飯は一人で食べる事にした。
そしてお昼も食べ終わった後、部屋に戻ってからは先ほど買った『魔力のルーツを探る』を読む事にした。
タケバヤシという人が書いたその本は、研究レポートとかよりももっと砕けた文章で書かれていて、正直良い情報はあまり載ってないかもなと最初は思っていた。しかし魔力の文字に関する話においては知らない情報が多く、研究所に帰ったらハシモトさんと情報を共有する価値があると思える部分も多かった。
そして読み進めていくと、セキヤが知りたがっていた情報の一つがそこに書かれていたのである。
『魔力に浮かび上がる文字は、その魔力がどういう効果を発揮するかを明確にしている。そしてこの文字数が多ければ多いほどより強力な効果を持つ魔法が使えるようになる。これは魔力の基本知識の一つである。ただし現在四文字以上の魔力というのは本当に極一部しか見受けられない。私は見つかっていないではなく見受けられないと表現しているが、ここに私の主張の全てが詰まっていると言って良い。カナイの数多くある研究所がそれぞれ魔力の事を日夜研究していて、四文字の魔力が数える程度しか見つかっていないと言うのはおかしいはずなのである。それだけ強力な魔素の塊が必要と言うのは頷けるが、魔法使いが複数人集まって魔力を集中させれば何かしらの魔力はできるはずだと思っている。つまり四文字の魔力と言うのはそれとは別に、公にできない問題を内包している可能性が高いと考えているのだ。そして私はその答えを一つ見付けたのである。』
セキヤは、波乱万丈の冒険活劇を読んでいるかのようなドキドキを感じつつ、次のページの答えに期待していた。そしてそれが非情な現実だと知った。
『私の叔母も魔力に精通している魔法使いだったのだが、先日彼女はこの世を去った。それは寿命でもなく事故でもなく、他殺だった。叔母を殺した犯人は叔母と相打ちしたために同じ場所で死んでいたのだが、実はその現場がおかしな事になっていたのである。犯人の死体はあるものの、叔母の死体が無かったのである。最初は叔母はどこかに逃げて生きていると思いたかったが、現実は違った。犯人は叔母を魔力剣で殺害していたため、叔母の魔力が剣に宿っていたのである。見た事のない魔力であり、そしてそれが叔母を象徴する魔力だったために、間違いなくそれが叔母だという事になった。その魔力が「魔法使為」。魔法を使える魔力だったのだ。』
その答えを見て、セキヤは全てを理解した。
――人を殺せば、簡単に強力な魔力が手に入るからか。
そこから先は四文字の魔力の有用性と、それが人殺しという最大のタブーによって手に入る可能性がある危険性が書かれていたが、セキヤにとってそれ以降は大体予想できる事しか書かれていなかった。
『魔法使為』、魔法を使える魔力。
その存在を見付けても素直に喜べるはずもなく、またその存在が自分の中では思ったより意外ではなかった事に驚いていた。
――まあ、魔物を倒して魔力が手に入るメカニズムを考えれば、あり得ない話じゃないよな。
魔物を倒して魔力を宿す事が出来るのは、魔物が魔素の塊で出来ているからに他ならない。つまり魔素を操っている魔法使いなら同じ事が出来ても不思議じゃないし、下手をすれば魔法使いでなくとも同じ事が可能かもしれない。
――そりゃ剣闘士に知られるわけにはいかないよな。
四文字の魔力は強力だが、『魔法使為』以上に強力な魔力があるとは中々思えない。それがもしも一般人を殺しても手に入るとなれば、この国はとっくに荒れ果てていてもおかしくない。そういう危険性を考えて、魔力に関する情報はある程度管理されているのだろう。そう考えれば、カナイのあの立地も頷ける。非人道的な手段で魔力が手に入る可能性をいち早く見つけ、それに対して先だって対策を立てる為なのだろう。もしかしたらこの本の著者の叔母が殺された事件を基にそういったシステムに変えたのかもしれないが、いずれにせよセキヤの追い求めていた魔法を使える魔力というのは、現状では諦めるしかないという結論だった。
――人を殺さずに手に入る方法か、もしくは全く別の魔力を探すか……。
これからの事をどうしようかと考えようとしたが、本を一冊読み終わった疲労感が眠気を誘っていて、一旦ベッドで横になるかとセキヤは昼寝をする事にした。
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