剣闘大会

tabuchimidori

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2戦目

火炎竜の住む山:中編

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「それでは準備の方は良いかな?」
 クガさんと剣闘大会の事で盛り上がって話す事三十分が経過した後に、いよいよ私は本題の魔力を得るための話を切り出した。
 火炎竜の『火炎』の魔力を手に入れるには、火炎竜が作り出す魔力体を剣で切り倒す必要があるとのことだった。その魔力体と戦うために今は家の外の庭にいる。庭もやはり規格外の大きさだった。
「はい、大丈夫です」
 魔力体は火炎竜から独立した生命体として行動を起こすと先ほど受けた説明を思い出す。要はこれから火炎竜の分身と戦うということだ。
 大きい分身体であればあるほど得られる魔力の強さも変わるという事だったが、さすがに最初に出会った時のサイズの火炎竜とは戦いにならないので、今の人とほとんど同じ大きさで魔力体を作ってもらう事にした。
 前回の鍛冶屋杯で手に入れた剣を抜いて構える。すでに『力』の魔力は入れてある。話では私の実力なら問題なく倒せるから緊張することはないと言っていた。そう言ってくれて個人的には嬉しかった。しかし竜というのは魔物の中でも最上級のレベルの存在だから、どうしても緊張してしまう。
 呼吸を整えるべく深呼吸をする。頭の中にヒリューとセキヤの顔が浮かぶ。二人との訓練を思い出して、平常心を取り戻す。
「それでは呼び出すぞ」
 火炎竜が片手で魔力を放出する。そこには火炎竜と同じ造形をした竜が火炎竜よりもさらに赤く発光していた。この魔力体は独立して行動するが、その意思は火炎竜が作り出す時にある程度決められて、その意思に反映するかのように色が変わるらしい。赤は攻撃性が高い意志を示している。
 作りだされた火炎竜は最初は目をつぶっていたが、その瞳が開かれてそして私の姿を捉えた瞬間に吠える。私を敵と認めての威嚇だった。
 私はそのヒリューにも勝る声量の方向にも怯むことなく一気に詰め寄る。火炎竜もすぐに戦闘態勢に入って私に向けて炎を吐いてきた。ブレスで火炎竜は自分の全面を万遍なく燃やす。私はすぐに右側へと転がり出てそのブレスを躱す。火炎竜は首を右に回すだけでその炎の攻撃を私に合わせてくる。
 ――ダメだ、ブレスを躱しきれない!
 一旦距離を置いてブレスの範囲から離れる。私との距離が空いたことで火炎竜はブレスを吐くのを止める。お互いに次の行動を読みあう形に睨みあう。私が後ろを取ろうと右に左に動くが、火炎竜はその動きにも付いてきて、必ず私と正面で迎え撃てるように立ち回る。
 ――思ってたより機敏だ……。
 そんな風に私が攻めあぐねていると火炎竜が今度は攻めに転じてくる。先ほどまでのブレスではなく火球を口から吐き出してくる。不意の攻撃だったけど、常に左右に動いていたので直撃は避けられた。裏でボンと破裂する音がしたのにヒヤッとする。
 ――あれ、これ食らったら死ぬんじゃない?
 火球の威力に少し怖気づきそうになるのを歯を食いしばって耐えることができた。火炎竜さんに対する信頼もあるけど、それ以上にヒリューとの訓練を思い出したからだ。
『エレアはちょっとビビり過ぎなんだよ。もっとガンガン行く姿勢も大事だと思うぜ』
 その発言の裏付けをしたセキヤの言葉も思い出した。
『相手が攻めてきた時は、こっちにとってもチャンスになるんだよ。向こうは攻める意識になるからね』
 よく見れば火球を生み出すのにはそれなりに時間が必要のようだ。今足を止めている私に対してすぐに火球を出せば良いのにそれをしてこなかったからだ。
 ――だったらまた出すまで動き回るだけだ!
 私が大きく右回りで火炎竜の背中を取ろうと駆け出す。火炎竜はその動きに合わせて身体を左へと向ける。そしてその後に『力』の魔力でさらに動きを速める。火炎竜はそのスピードに合わせてさらに身体を捻ると共に距離を置く。私の動きが早くなったことで距離を詰められることを避けるためだ。しかし距離が空けば私への攻撃方法はあの火球に限られる。私がずっと動き回って火炎竜のストレスを貯める。こちらからは攻めていかないで、向こうが火球を出すまでこの距離を保っているからだ。そして火炎竜は溜まらずその火球を吐き出してくる。
 ――今。
 私が動く先を見据えての火球は、私が寸前で方向転換したことで地面とぶつかる事となった。そして火球を放ったことでブレスを出せなくなった火炎竜は接近してきた私に前足で弾き飛ばそうとするが、その動きまで予想していた私は右足で踏み切って火炎竜の眼前で飛び上がる。そして上空から頭へと剣を振り下ろした。
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