55 / 95
2005/4/9
しおりを挟む
母に、中途半端に想像力の豊かな子供だったわよぉ、と言われたことがある。
何故と訊くと、人に聞いた話に触発されて見えないものは沢山見たのに、何も言われずにそういったものを見たことはなかったんだから、と返された。
どうも母は、気付いていないらしい。
「人」というのは、母の義理の弟、私の叔父さん限定だったということに。
叔父は、色々な話を聞かせるのが好きだった。それは、古典小説だったり現在のものだったり、叔父の創作だったりした。
叔父の語りには、妙な力があったに違いない、と思う。
その証拠に、例えば、「桜の木の下に死体が埋まっている」という話は、叔父に聞かされる以前にも、どこかで耳にしていた。それでも、何も変わったことはなかったのだ。
それが、大きな桜の木の下で自殺した人がいて、それに味をしめてしまいそれどころか、他の桜たちにまでその味を教え――結果として、一本につき一人程度は埋まっていておかしくない、という叔父自作の話を聞かされて以来、私には、咲き誇る桜花の下に、黒い人影が見えるようになってしまった。
叔父自身、そんな能力に気付きながら、私を実験台にしていた節がある。
若々しい童顔の叔父は、現在、保父をしている。そこで、害にならない程度に、絵本を読み聞かせたりしているようだった。
――たまには、あの叔父に会いに行くのもいいかも知れない。
桜の季節、未だ人影が見えると訴えたら、果たしてどんな反応をするだろうか。もしかしたら、何かおごってくれるかも知れない。
何故と訊くと、人に聞いた話に触発されて見えないものは沢山見たのに、何も言われずにそういったものを見たことはなかったんだから、と返された。
どうも母は、気付いていないらしい。
「人」というのは、母の義理の弟、私の叔父さん限定だったということに。
叔父は、色々な話を聞かせるのが好きだった。それは、古典小説だったり現在のものだったり、叔父の創作だったりした。
叔父の語りには、妙な力があったに違いない、と思う。
その証拠に、例えば、「桜の木の下に死体が埋まっている」という話は、叔父に聞かされる以前にも、どこかで耳にしていた。それでも、何も変わったことはなかったのだ。
それが、大きな桜の木の下で自殺した人がいて、それに味をしめてしまいそれどころか、他の桜たちにまでその味を教え――結果として、一本につき一人程度は埋まっていておかしくない、という叔父自作の話を聞かされて以来、私には、咲き誇る桜花の下に、黒い人影が見えるようになってしまった。
叔父自身、そんな能力に気付きながら、私を実験台にしていた節がある。
若々しい童顔の叔父は、現在、保父をしている。そこで、害にならない程度に、絵本を読み聞かせたりしているようだった。
――たまには、あの叔父に会いに行くのもいいかも知れない。
桜の季節、未だ人影が見えると訴えたら、果たしてどんな反応をするだろうか。もしかしたら、何かおごってくれるかも知れない。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
神様のボートの上で
shiori
ライト文芸
”私の身体をあなたに託しました。あなたの思うように好きに生きてください”
(紹介文)
男子生徒から女生徒に入れ替わった男と、女生徒から猫に入れ替わった二人が中心に繰り広げるちょっと刺激的なサスペンス&ラブロマンス!
(あらすじ)
ごく平凡な男子学生である新島俊貴はとある昼休みに女子生徒とぶつかって身体が入れ替わってしまう
ぶつかった女子生徒、進藤ちづるに入れ替わってしまった新島俊貴は夢にまで見た女性の身体になり替わりつつも、次々と事件に巻き込まれていく
進藤ちづるの親友である”佐伯裕子”
クラス委員長の”山口未明”
クラスメイトであり新聞部に所属する”秋葉士郎”
自分の正体を隠しながら進藤ちづるに成り代わって彼らと慌ただしい日々を過ごしていく新島俊貴は本当の自分の机に進藤ちづるからと思われるメッセージを発見する。
そこには”私の身体をあなたに託しました。どうかあなたの思うように好きに生きてください”と書かれていた
”この入れ替わりは彼女が自発的に行ったこと?”
”だとすればその目的とは一体何なのか?”
多くの謎に頭を悩ませる新島俊貴の元に一匹の猫がやってくる、言葉をしゃべる摩訶不思議な猫、その正体はなんと自分と入れ替わったはずの進藤ちづるだった
来野∋31
gaction9969
ライト文芸
いまの僕は、ほんとの僕じゃあないんだッ!!(ほんとだった
何をやっても冴えない中学二年男子、来野アシタカは、双子の妹アスナとの離れる格差と近づく距離感に悩むお年頃。そんなある日、横断歩道にて車に突っ込まれた正にのその瞬間、自分の脳内のインナースペースに何故か引き込まれてしまうのでした。
そこは自分とそっくりの姿かたちをした人格たちが三十一もの頭数でいる不可思議な空間……日替わりで移行していくという摩訶不思議な多重人格たちに、有無を言わさず担ぎ上げられたその日の主人格こと「来野サーティーン」は、ひとまず友好的な八人を統合し、ひとりひとつずつ与えられた能力を発動させて現実での危機を乗り越えるものの、しかしてそれは自分の内での人格覇権を得るための闘いの幕開けに過ぎないのでした……
コント【レレレンジャー・レッドの憂鬱】
たんぽぽ。
ライト文芸
正義のヒーロー・レレレンジャーのリーダー・レッドは悩んでいた。部下が問題児だらけなのだ。
スパイス・カレーに目覚めた巨漢のイエロー、怪人を利用して小金を稼ぐ子持ち主婦のピンク、バカップルのブラックとグリーン。
……レレレンジャーは今日も怪人を退治する! 市民の為に! 平和の為に! ……と言うのは建前で、何よりもまず己のサラリーの為に‼︎
(会話のみで進みます)
リトライ;リバース;リサイクル
四十九院紙縞
ライト文芸
まだ寒さの残る4月の深夜、「俺」は大量殺人現場で目を覚ました。状況証拠は「俺」自身が犯人だと物語っていたが、「俺」はこの場で目を覚ます以前の記憶を失っており、確証は持てない。そこに新たに姿を現したのは、死神を連想させる大鎌を携えた少女だった。少女は「俺」に向かい、「やっと見つけた――殺人鬼!」と言い放つ。結果、「俺」は「業務妨害の殺人鬼」として拘束され、地下牢に幽閉されてしまうのだった。
「これは平々凡々な、どこにでもある恋の話だ。
とある少年が、とある少女に恋をした。そんな話。
きっと、ずっと忘れられないものになる。」
【※一部文字化けがありますが、お使いの端末は正常です】
灰墟になった地方都市でペストコントロールやってます 世界に必要な3つのこと (仮)
@taka29
ライト文芸
発症すると深層心理のエネルギーが異形に変じて野放図に暴れ回る奇病、その世界的な大流行から20年。物語は北陸のとある地方都市から始まる。
10秒で読めるちょっと怖い話。
絢郷水沙
ホラー
ほんのりと不条理なギャグが香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)
【アルファポリスで稼ぐ】新社会人が1年間で会社を辞めるために収益UPを目指してみた。
紫蘭
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスでの収益報告、どうやったら収益を上げられるのかの試行錯誤を日々アップします。
アルファポリスのインセンティブの仕組み。
ど素人がどの程度のポイントを貰えるのか。
どの新人賞に応募すればいいのか、各新人賞の詳細と傾向。
実際に新人賞に応募していくまでの過程。
春から新社会人。それなりに希望を持って入社式に向かったはずなのに、そうそうに向いてないことを自覚しました。学生時代から書くことが好きだったこともあり、いつでも仕事を辞められるように、まずはインセンティブのあるアルファポリスで小説とエッセイの投稿を始めて見ました。(そんなに甘いわけが無い)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる