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胎動
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濡れて血を浴びた服を着替えると、酒場になっている一階に降りた。足は、自分でかけた治癒の術が上手くかかったからか固定しているからか、歩くくらいはできる。
すいているわけではないが混んでもいない店内には、シュム同様に宿で借りた服に着替えたカイが、一足先にグラスを干していた。夜にサングラスは怪しいが、微少とはいえ力を消耗するなら、むやみに姿を変えるのは避けたいところだ。
まあそのあたりは、実際のところは好みの問題になるのだが。
カイはシュムに気付き、一瞬驚いたようだった。
「ん? 何か変?」
途中で酒をたのみ、小テーブルを陣取った長身の友達の向かいに腰を落とす。テーブルに料理はなく、まだ出されていないか、そもそも注文していないか。
「いや、髪ほどいてると思って」
「こっちの方が乾きが早いからね。濡れたまま寝ると、傷むし」
「…気にするのか」
「少し気遣う程度にはね。油塗り込んだりとかはしないけど」
「ふぅん」
黒眼鏡ごしではあるが、しげしげと見られている気がして、何、と首を傾げる。
その間に酒が運ばれ、注文の確認をすると魚とポテトのフライだけということなので、野菜と肉の煮込みとパンをたのむ。ついでに、フライは大盛りに変更だ。
シュムの見かけの年齢より少しは年上だろう少年が、注文を小走りで告げに行くのを見送って、カイに視線を戻す。
「髪下ろしてるの、珍しい? パーティーのときは結い上げてたでしょ?」
パーティーといっても、実際のものではない。白昼夢じみた、幻術の中でのことだ。
「っていうか、寝起きはいつも下りてるし」
「あー、いや。すぐくくるだろ」
何故か、目を逸らした…ような気がする。眼鏡ごしではっきりとは判らないが。
料理が運ばれて来て、歓声を上げた。昼は携帯食で済ませたから、暖かいだけでも嬉しい。
「話変えるけど、この後どうする?」
「あ?」
揚げたてのフライにかじりつこうとしたところで、大口を開けたまま、わずかに首を傾げて返す。シュムは、パンをちぎって口に放り込んだ。
「多分、エヴァが来るよ。帰るなら送るけど?」
俗に言う魔物、学術的には契約の獣とも呼ばれるカイは、契約はしていないが、シュムに召喚されている。順当な戻り方は、シュムの魔法陣だ。
「帰った方がいいのか?」
すいているわけではないが混んでもいない店内には、シュム同様に宿で借りた服に着替えたカイが、一足先にグラスを干していた。夜にサングラスは怪しいが、微少とはいえ力を消耗するなら、むやみに姿を変えるのは避けたいところだ。
まあそのあたりは、実際のところは好みの問題になるのだが。
カイはシュムに気付き、一瞬驚いたようだった。
「ん? 何か変?」
途中で酒をたのみ、小テーブルを陣取った長身の友達の向かいに腰を落とす。テーブルに料理はなく、まだ出されていないか、そもそも注文していないか。
「いや、髪ほどいてると思って」
「こっちの方が乾きが早いからね。濡れたまま寝ると、傷むし」
「…気にするのか」
「少し気遣う程度にはね。油塗り込んだりとかはしないけど」
「ふぅん」
黒眼鏡ごしではあるが、しげしげと見られている気がして、何、と首を傾げる。
その間に酒が運ばれ、注文の確認をすると魚とポテトのフライだけということなので、野菜と肉の煮込みとパンをたのむ。ついでに、フライは大盛りに変更だ。
シュムの見かけの年齢より少しは年上だろう少年が、注文を小走りで告げに行くのを見送って、カイに視線を戻す。
「髪下ろしてるの、珍しい? パーティーのときは結い上げてたでしょ?」
パーティーといっても、実際のものではない。白昼夢じみた、幻術の中でのことだ。
「っていうか、寝起きはいつも下りてるし」
「あー、いや。すぐくくるだろ」
何故か、目を逸らした…ような気がする。眼鏡ごしではっきりとは判らないが。
料理が運ばれて来て、歓声を上げた。昼は携帯食で済ませたから、暖かいだけでも嬉しい。
「話変えるけど、この後どうする?」
「あ?」
揚げたてのフライにかじりつこうとしたところで、大口を開けたまま、わずかに首を傾げて返す。シュムは、パンをちぎって口に放り込んだ。
「多分、エヴァが来るよ。帰るなら送るけど?」
俗に言う魔物、学術的には契約の獣とも呼ばれるカイは、契約はしていないが、シュムに召喚されている。順当な戻り方は、シュムの魔法陣だ。
「帰った方がいいのか?」
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