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サイドストーリー・王子の後悔
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父である国王に呼ばれ、応接室へと向かう。
入った先では、父と母がソファーへと並んで座り、息子の到着を待っていた。
「遅れました」
「いや……またやつれたか?ちゃんと寝てるのか?」
「…………。ご用件は」
「ええ、そろそろ2ヶ月も経つことですし、新しい婚約者を選定しておかなくてはならないでしょう?王室に入るための勉強もありますし」
やつれた息子を前に、取り繕った笑顔で用件を述べた王妃だが、息子はピクリとも反応を返さなかった。
「……両陛下にお願い申し上げます。私は二度と婚約者を持つことを拒否します」
「なっ!それではどうやって血を繋ぐのですっ!」
「その役目は弟にお願いいたします。私は辺境でも何処でも構いません。将来は臣籍降下し、臣下としてこの国を支えます」
「お前は王家としての義務も権利も全て放棄するというのか!」
「どうしてそんなっ!」
息子の宣言を聞いた国王夫妻は、カッとなって息子を問い詰めるが、その昏い瞳に見返されると息をのんだ。
「私には無理だ……誰かの手を再び取るなど……抱ける気もしない。ハハ、無理でしょうこんなでは……どうしようもありません」
「お前っ……もう忘れろ。不幸な行き違い…事故だと思え」
「無理です。私が、無知で愚かな私が、大事な人を死なせました。事故などと、思えるはずもありません」
「どうしてそう頑固なの……苦しいだけではこの先どうしていくつもりです?1人きりでどうするつもりなの。忘れる努力も必要ではなくて?」
「いっそ私の事をお忘れください。王家の一員として公務は致します。それ以上は……」
俯いて唇を噛み締めた息子の手が、震えていることに気付いた国王は、これ以上は言うまいと「もう良い下がれ」と声をかけた。
ゆらりと立ち上がった殿下は、臣下の礼を取ると、応接室を去っていった。
「……あれはもう無理だ。諦めて好きにさせよう」
「諦めるには早いですわっ、時間が経てばきっと……!」
「時間をかけても難しいだろう。それに回復を待ってから見繕っていては、色々無理がある。もう下の子へ期待をかけた方が良い」
「見捨てるのですかっ!」
「我らは王家。悠長に待つ事を許されぬ立場。常に最善を選び備えておかなければならない。……それだけだ」
「……申し訳ございません、先に失礼いたしますわ」
顔色を悪くした王妃は立ち上がると、足早に応接室から出ていった。
「仕方ない。仕方ないではないか…」
誰もいなくなった部屋で、国王の呟きが小さく響いていた。
第一王子の臣籍降下は一年後に発表された。
辺境ではなく、一代限りの公爵家を新たに興しての降下となった。
彼は生涯伴侶を持たず、厳しい目で王家を見守り、公平な目で見極める姿勢から、法務官として生涯を捧げる。
生涯独り身ではあったが、彼の常に公平であろうとする姿勢は周囲の尊敬を集め、慕う人々に囲まれるようになった。
いつかの彼女の様に。
入った先では、父と母がソファーへと並んで座り、息子の到着を待っていた。
「遅れました」
「いや……またやつれたか?ちゃんと寝てるのか?」
「…………。ご用件は」
「ええ、そろそろ2ヶ月も経つことですし、新しい婚約者を選定しておかなくてはならないでしょう?王室に入るための勉強もありますし」
やつれた息子を前に、取り繕った笑顔で用件を述べた王妃だが、息子はピクリとも反応を返さなかった。
「……両陛下にお願い申し上げます。私は二度と婚約者を持つことを拒否します」
「なっ!それではどうやって血を繋ぐのですっ!」
「その役目は弟にお願いいたします。私は辺境でも何処でも構いません。将来は臣籍降下し、臣下としてこの国を支えます」
「お前は王家としての義務も権利も全て放棄するというのか!」
「どうしてそんなっ!」
息子の宣言を聞いた国王夫妻は、カッとなって息子を問い詰めるが、その昏い瞳に見返されると息をのんだ。
「私には無理だ……誰かの手を再び取るなど……抱ける気もしない。ハハ、無理でしょうこんなでは……どうしようもありません」
「お前っ……もう忘れろ。不幸な行き違い…事故だと思え」
「無理です。私が、無知で愚かな私が、大事な人を死なせました。事故などと、思えるはずもありません」
「どうしてそう頑固なの……苦しいだけではこの先どうしていくつもりです?1人きりでどうするつもりなの。忘れる努力も必要ではなくて?」
「いっそ私の事をお忘れください。王家の一員として公務は致します。それ以上は……」
俯いて唇を噛み締めた息子の手が、震えていることに気付いた国王は、これ以上は言うまいと「もう良い下がれ」と声をかけた。
ゆらりと立ち上がった殿下は、臣下の礼を取ると、応接室を去っていった。
「……あれはもう無理だ。諦めて好きにさせよう」
「諦めるには早いですわっ、時間が経てばきっと……!」
「時間をかけても難しいだろう。それに回復を待ってから見繕っていては、色々無理がある。もう下の子へ期待をかけた方が良い」
「見捨てるのですかっ!」
「我らは王家。悠長に待つ事を許されぬ立場。常に最善を選び備えておかなければならない。……それだけだ」
「……申し訳ございません、先に失礼いたしますわ」
顔色を悪くした王妃は立ち上がると、足早に応接室から出ていった。
「仕方ない。仕方ないではないか…」
誰もいなくなった部屋で、国王の呟きが小さく響いていた。
第一王子の臣籍降下は一年後に発表された。
辺境ではなく、一代限りの公爵家を新たに興しての降下となった。
彼は生涯伴侶を持たず、厳しい目で王家を見守り、公平な目で見極める姿勢から、法務官として生涯を捧げる。
生涯独り身ではあったが、彼の常に公平であろうとする姿勢は周囲の尊敬を集め、慕う人々に囲まれるようになった。
いつかの彼女の様に。
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