今更気付いてももう遅い。

ユウキ

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その後③

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元々権力欲のある親族が多い為に、譲位自体はすんなりと済んだ。
伯爵位を持つ分家筋に話を振ると、喜び勇んでやって来た。必要書類にサインを入れさせると、屋敷の譲渡は2カ月後として告げる。

個人資産を全て商業ギルドへ預けて、どこからでも出せる小切手帳に変えた。

その足で王宮の爵位管理の部門へ赴いて、爵位移譲の書類を最速で処理させる。
辞職の件が伝わっていないのか、受けた文官は心底驚いていた様だった。


葬儀からもうすぐ1ヶ月……

全ての手配を終え、オフィーリアの母の墓前に彼女の好きだった花を携えて片膝をつく。


『……すまない、そばを離れる事になった。オフィーリアの幸せの為と、君は許してくれるだろうか…?』


小さく漏れた謝罪に応える様に、柔らかな風が頬を撫でる。サワサワと花束が揺れ、妻の好きだったイベリスの花から砂糖菓子に似た甘い香りが包んだ時


『ふふ、誓いを忘れたのかしら?旦那様。“死が2人を別つまで”……ちゃんと守ったのだから、旦那様も死ぬだなんて言わないでくださいな。これからはオフィーリアが居るわ。いつまでも引きずってはダメ。貴方の進む道に笑顔がありますように……空の上からずっと……』



……妻の最期の言葉が蘇る。頬に触れて最後の愛を捧げられた、病に苦しいはずなのに柔らかく微笑んでみせた妻の姿を鮮明に。


『あぁ…別たれたとも、愛しているよ。オフィーリアを必ず幸せにして見せる。見守っていてくれるかい?』


妻のあの微笑みに応える様に微笑み、口付けを落とした花を捧げる。墓前を後にした石畳には、小さな水滴の跡がいつまでも残っていた。


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