今更気付いてももう遅い。

ユウキ

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その後②

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波音を聴きながら、最後に見た彼を思い出していた。




『宰相……!』

王宮から出る為に足早に廊下を進んでいたところ、声をかけられた。仕方なく振り返ると、やつれた姿の殿下が護衛と従者を連れて走り寄ってきているところだった。


『何でしょう?殿下』
『ぃや……聞いておいて欲しかったんだ。あれから直ぐに調べ直した。皆の言う通り、オフィーリアは止めはしたが、指示を出したり加担した訳でもないと。“オフィーリアの為だと信じて”と……』
『頼んでもいませんが』

『そ、そうだ。そうなんだ。マーガレットも問い詰めた。そしたらあいつ……!』
『“オフィーリアがやったとは一言も言っていない”とでも吐きましたか?』
『その通りだ……その通りなんだが』


罪に問いにくいと、悔しそうに手を握りしめて俯く殿下からは、歯を食いしばる音が聞こえた。


『未必的故意』
『みひつ……?』
『人の死につながる事を実際に行わなくとも、それに繋がるかもしれないと知りながら、そうなっても良いと敢えて誤認させたり、誘導するような行為を繰り返す事です。……不確定な過失ですね。
まぁ、相手が誤認していると知りながら敢えて訂正せずに煽ったのなら確定の過失。
ですが、事実は殿下しか知り得ませんので、私は何とも言えませんが』

『そう…なのか』
『……そう躍起になられても、娘は帰っては来ませんがね……』

『ぐぅ……っ宰相っ本当に、す』
『要件がそれだけなら失礼致します』


謝らせたりはしない。簡単に荷を軽くさせてやるものかと、引き止める声を無視して足を進めた。
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