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それからは怒涛のような忙しさで日々は流れていった。
まず、マーガレットは全て捏造であると確認が取れ、偽証罪、不敬罪合わせて貴族裁判へかけられて平民となり、王都への生涯立ち入り禁止。辺境の開拓地へと強制労働者として送られる事となった。
兄スヴェルトは王族除籍。マーガレットと同じく辺境の村へと一兵士として送られた。頑張り次第では、小さな役職も得られるのでは無いだろうか?と王妃様は仰っていた。
弟ヴィンセントは、どんなに陛下や王妃様へ泣いて縋っても帝国への無期限遊学は覆らず、数人の使用人を連れて旅立った。
騎士団長子息は、騎士団長が長男へと後を引き継がせると、問題を起こした息子の首根っこを掴んで領地へ引っ込み、毎日「訓練」と言う名の地獄を見ているのだとか。
宰相子息も同じく、領地へと送り込まれたが、領主屋敷にほぼ軟禁状態で、朝から晩まで仕事の山に放り込まれているそうだ。
そして現在、俺は。
「─エリアルト、王太子として立つことを命ずる」
立太子の儀の真っ最中である。
今でも、何故こうなったか全く意味がわからない。
神妙そうな顔で、父から剣を賜ってはいるが、胸を張って振り返って見渡してはいるが、やはり内面は消化不良であった。
式が終わって、夜会までの休息や準備のための控え室に入ってカウチで横になって思案にくれた。
夜会の準備も終わってぼんやり窓の外を眺めていると、着替えが終わったユリアンナが顔を見せる。
「ユリアンナ、すまない。迎えに行けずに」
「いいえ、当然のことですわ。立太子の儀、ご立派でございました。改めておめでとうございます」
「ありがとう。そのドレス、着てくれて嬉しいよ。とてもよく似合っている」
「ありがとうございます。両親も褒めてくださいましたわ。それで、先程何かお悩みでしたか?」
「……あぁ、いや。そうだね。まだ実感が湧かなくてね」
「……そうでしたの。帝国が恋しいのかと思いましたわ」
「まぁ恋しいと言えば恋しいが……って、彼方に恋人とかは一切いないからね?!」
「ふふ、安心しましたわ」
クスクスと笑みをこぼすユリアンナの手を取ってカウチへと誘う。
「なんというか、予想とは違いすぎた現実に追いついていない……という所かな」
「まぁ…私もですわ」
「そうか、そうだね。本当にあの時は、兄が失礼した」
「もう終わった事ですので、謝らないでくださいませ」
「すまな…いや、うん。ありがとうユリアンナ。何と言うか、私の中では表舞台に立つ予定も無かったから、戸惑いしかなくてね」
「やはり、お戻りになる気は無かったのですか?」
「うん、兄上が結婚して子を成して後継に憂いがなくなれば、王位継承権を放棄して一文官として働くのも良いかと考えていたんだ。彼方には友人も、興味のそそられる産業もあったから」
「では、今の状況は……不本意ですわね」
「本意かどうかで言われればそうだけど、人のせいのするつもりはないよ。もう隠れておく理由が全てなくなってしまった事だし、新たな場所で好きなことをしつつ頑張っていこうと思っている。君のことも、手放す気もないしね」
「エリアルト様……瑕者ですがよろしくお願いしますわ」
「その瑕を埋めてあまりあるほどに、大事にすると誓うよ」
「ふふ、嬉しいですわ。破棄されて、私、幸運だったかもしれませんね」
そう言って俺の手の上に重なった小さく白い手に、もう片方の手を重ねて包んだ。
「その部分に関しては、俺も同意見だ」
まず、マーガレットは全て捏造であると確認が取れ、偽証罪、不敬罪合わせて貴族裁判へかけられて平民となり、王都への生涯立ち入り禁止。辺境の開拓地へと強制労働者として送られる事となった。
兄スヴェルトは王族除籍。マーガレットと同じく辺境の村へと一兵士として送られた。頑張り次第では、小さな役職も得られるのでは無いだろうか?と王妃様は仰っていた。
弟ヴィンセントは、どんなに陛下や王妃様へ泣いて縋っても帝国への無期限遊学は覆らず、数人の使用人を連れて旅立った。
騎士団長子息は、騎士団長が長男へと後を引き継がせると、問題を起こした息子の首根っこを掴んで領地へ引っ込み、毎日「訓練」と言う名の地獄を見ているのだとか。
宰相子息も同じく、領地へと送り込まれたが、領主屋敷にほぼ軟禁状態で、朝から晩まで仕事の山に放り込まれているそうだ。
そして現在、俺は。
「─エリアルト、王太子として立つことを命ずる」
立太子の儀の真っ最中である。
今でも、何故こうなったか全く意味がわからない。
神妙そうな顔で、父から剣を賜ってはいるが、胸を張って振り返って見渡してはいるが、やはり内面は消化不良であった。
式が終わって、夜会までの休息や準備のための控え室に入ってカウチで横になって思案にくれた。
夜会の準備も終わってぼんやり窓の外を眺めていると、着替えが終わったユリアンナが顔を見せる。
「ユリアンナ、すまない。迎えに行けずに」
「いいえ、当然のことですわ。立太子の儀、ご立派でございました。改めておめでとうございます」
「ありがとう。そのドレス、着てくれて嬉しいよ。とてもよく似合っている」
「ありがとうございます。両親も褒めてくださいましたわ。それで、先程何かお悩みでしたか?」
「……あぁ、いや。そうだね。まだ実感が湧かなくてね」
「……そうでしたの。帝国が恋しいのかと思いましたわ」
「まぁ恋しいと言えば恋しいが……って、彼方に恋人とかは一切いないからね?!」
「ふふ、安心しましたわ」
クスクスと笑みをこぼすユリアンナの手を取ってカウチへと誘う。
「なんというか、予想とは違いすぎた現実に追いついていない……という所かな」
「まぁ…私もですわ」
「そうか、そうだね。本当にあの時は、兄が失礼した」
「もう終わった事ですので、謝らないでくださいませ」
「すまな…いや、うん。ありがとうユリアンナ。何と言うか、私の中では表舞台に立つ予定も無かったから、戸惑いしかなくてね」
「やはり、お戻りになる気は無かったのですか?」
「うん、兄上が結婚して子を成して後継に憂いがなくなれば、王位継承権を放棄して一文官として働くのも良いかと考えていたんだ。彼方には友人も、興味のそそられる産業もあったから」
「では、今の状況は……不本意ですわね」
「本意かどうかで言われればそうだけど、人のせいのするつもりはないよ。もう隠れておく理由が全てなくなってしまった事だし、新たな場所で好きなことをしつつ頑張っていこうと思っている。君のことも、手放す気もないしね」
「エリアルト様……瑕者ですがよろしくお願いしますわ」
「その瑕を埋めてあまりあるほどに、大事にすると誓うよ」
「ふふ、嬉しいですわ。破棄されて、私、幸運だったかもしれませんね」
そう言って俺の手の上に重なった小さく白い手に、もう片方の手を重ねて包んだ。
「その部分に関しては、俺も同意見だ」
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