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翌日からクリスティーナは、溜まった公務を素早く捌きながら王妃のお仕事である社交にも手をつける事にした。


「どう考えても犯人は貴族。少なくとも女の方はね」


裾から見えたと言う侍女服は王宮からの貸与品。
王宮に務める者の衣装は、最低限の枚数だけ渡される。ボロボロになったりした時に、申請書をあげた上で現品との交換で新品を渡す。数はきっちり管理されており、退職時には返却が義務付けられている物だった。

これは昔からの制度で、下手に売り捌かれて見知らぬ者が出入りできない様にするための処置でもある。


「そうでございますね。でも何故お茶会を?」
「正式に披露目もしたからと言うのと、犯人が何らかの思惑を持っているなら、これ幸いと接触すると思うのよ」
「危なくありませんか?」
「表立って何かはしないはず。それまでこちらが万全の準備を行えば良いのよっ!そうと決まれば魔術研究棟へ行くわよっ!」


チートアイテムを探してガサ入れして以来、少々王妃の来訪に警戒心抱いていた魔術研究棟は……



「こんな発想が……」
「こんな優れた物、作れるんでしょうか」
「いや、やれる。きっと王妃様は私たちの技術を信じて試練をお与えに……!!」

「「「やるぞぉぉ!ぅおおおお!!」」」


企画書と銘打ったクリスティーナの「こっちは急ぎで作ってリスト」と「出来たらいいな♪できるよね♪」グッズ仕様一覧を前に、その日から皆研究に昼夜を問わず、熱を入れ続けることになる。


1週間とちょっとで、とある魔導具のプロトタイプが完成した事を切っ掛けに、クリスティーナはお茶会を開くこととした。

派閥ごとに分けて開いた中規模のお茶会は、夫人と令嬢が参加する華やかな物だった。


「皆さま楽しんでいってね」


気さくに話し掛けるクリスティーナは可憐な微笑みを浮かべていても、その微笑みの下では「あぁん?お前か?」と前のめり気味でメンチを切る勢いで上から下までを値踏みしていた。

そうとは知らない夫人と令嬢達は「なんて気さくでよく目端のきく王妃殿下なのでしょう」と称賛の声をあげていたのだが、知らぬが花とはこの事だろうか。

しかしクリスティーナが思う通り、早く特定できるわけもなく、怪しいと思うと皆怪しく見えてくる。

王権派、新興派、最後の保守派のお茶会では、誰も彼も怪しく見え、少々げんなりして対人疲れも相まってやけっぱち気味になっていた。


「王妃殿下。拝謁に賜り光栄でございます。コルビン伯爵家、オダールの妻マリーデリアでございます。ご存知かもしれませんが、こちらは娘のハイデリシア。行儀見習いで上がらせていただいております」

「そう、初めましてかしら」
「はい、王宮では財務部の応接を担当しておりますので」

「そうなの。婚約者は王宮にお勤めの方かしら?」
「……騎士団に所属しております」
「王妃殿下、娘を宜しければお話相手に如何でしょう?娘も勉強になりますわ」

「そうねぇ……考えておくわ」


始終こんなやりとりが続けば、仕方ないとも言えた。
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