転生令嬢の危機回避術の結果について。

ユウキ

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森を最短ルートで出て、馬を駆け王城に戻った頃には夕刻も過ぎようかと言う頃だった。


クリスティーナは自室に戻ると、ミラに一旦報告をあげた。


「……!お二人共ご無事で何よりでございますっ」
「ラケルをつかせたわ。必要な物はこれに書いてあるから、用意してあの近衛騎士にお願いしてくれるかしら」
「はい、直ぐに…。王妃殿下は湯浴みの準備を致しますので、お着替えを先にいたしましょう」
「そうね……流石に疲れたわ」
「薬湯にしましょうか」
「嬉しいわっ!」


着替えを先に済ませたクリスティーナは、湯浴みの前にアシェリードの元に向かう事にした。勿論夫の顔を見たいとかいう殊勝な心からではない。面倒な事を極上リラックスタイムの後に設けたくないと言う一心からである。

国王の執務室に入ると、近衛騎士が何人か詰めており、報告が終わったところの様だった。近衛騎士の1人に森に追従した者がいるところを見ると、クリスティーナとスノウの件も含まれているのだろうことが窺えた。


「クリスティーナ、よくぞ無事戻った!」
「ご心配おかけしました。ところでアトリは……」
「あぁ。近衛騎士隊長、クリスティーナにも報告を」
「はっ。王妃殿下専属侍女であるアトリ嬢はリネン室の奥で発見されました。襲撃された様で頭部に打撲痕。手足は縛られてておりました。現在は医務室で療養中。意識は先程戻られ診察の結果、外傷以外に異常は無いとのことです」


クリスティーナは握りしめていた手の力を抜いた。身近に接していた人の安否が分かり、やっと心からホッと一息つけた。


「一応秘匿されている存在であるから、誘拐として公表することはできない。そこは分かって欲しい」
「ええ、理解しております。ですが、私の侍女を害したのです。最終的に私を狙った可能性が有るとして、捜査は続けてください」
「はっ。承知いたしました」


近衛騎士の報告では、まだ犯人の特定はできておらず、アトリを呼び出した下級侍女は「ミラ様がコレをアトリ様に渡して欲しいと頼まれたが、自分は外への用事があって行けそうにないから引き継いで欲しい」と言われたらしい。それならと引き受けて、アトリの居場所を人に尋ねて、スノウの部屋に来たのだそうだ。
頼まれた侍女は外套を纏っていたが、侍女服が裾から見えたので、納得して受け取ってしまったと供述した。


「スノウの部屋に訪れたと言う男女の1人でしょうか?」
「恐らくですが」
「特定は難しいですわね。夜会に紛れてしまったと考えると……」
「目的は果たしたのだろう。警戒はするが2度も手を出す可能性は低いのではないか?」

「いえ……スノウを亡き者にしたいのであれば、これまでチャンスは何度でもあったはずです。私が来る前ならもっと簡単でしたでしょう。何かの思惑があってスノウを害したのであれば、これから動くと思われますわ」


何が目的か分からない。

それが一番の懸念事項である。
秘匿されて居たとはいえ、スノウの存在は前王妃亡き今、現在の王妃クリスティーナに何の影響も及ぼさない存在。現国王としても血の繋がりがない子の存在を脅かされたからといっても、何の影響もないのだ。

クリスティーナに脅迫じみた交渉の席につかせるには良いカードとなったのだろうが、誘拐後に殺害目的で夜の森深くに遺棄したのであればそれも使うつもりがないという事。


「警戒は怠らず、調査を続けて」
「はっ」

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