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耳まで真っ赤なスノウの可愛さにデレデレしながら、姫林檎の赤ワイン煮を完食したクリスティーナは、スティラに先程の非礼を詫びて感謝した。
「まぁあんたの格好見りゃ、一晩探したって分かるんだ。動転してるヤツに真面目に取り合うほど、浅い人生送ってないさ。気にしないで良い」
今は外套は脱いだとはいえ、飛び込んだ時の格好は割と薄汚れていたクリスティーナ。必死に子供を抱き抱える姿を見て、スティラもホッと一安心したものだ。
スティラに感謝を述べると、今度はリビングで寛ぐ子供達に近寄り目線を合わせるために膝をついた。
「貴方達がスノウを見つけてくれたのね。本当にありがとうございました」
「良いって、当たり前の事をしただけだから」
サロを始め、子供達は照れ臭そうにしながらはにかんだ。
「スノウが無事で本当に良かった。私の準備不足が悪いのだけれど」
「?」
隣に座るスノウの髪を優しく耳にかけてやると、クリスティーナは真剣な顔をスティラ達に向けた。
「実は、この子は迷子になった訳じゃないのです」
「── え?どう言うことだ?」
即座に声を上げたのは臨時リーダーと名乗ったサロだ。子供達はまだ理解が追いついていない顔で、スティラは静かに見通す様な瞳を向けている。
「何者かに部屋から連れ去られてしまって……幸運にも生きて見つけることができました。本当に皆様には感謝しています。
会ったばかりでこんな事を言うのは心苦しいのですが、スノウを暫く此方でお預かりしていただけないでしょうか?」
「!!」
スノウが驚いてクリスティーナを仰ぎ見る。その目は悲しみでいっぱいの目だった。
「寂しい思いをさせてごめんね、スノウ。
まだ犯人が見つかっていないの。そんな中に貴女を簡単に戻せないのよ」
「わ、私は平気っ!だから」
「ううん、私が平気じゃないの。犯人を見つけて安全を確保できないと…次も起こったら。それこそ国外に連れて行かれでもしたら……」
スノウもクリスティーナの目に後悔と悲しみの色を見つけたのか、徐々に諦めるかの様に俯いてしまう。クリスティーナがそっと小さな肩を引き寄せると、俯いたままのスノウを優しく抱きしめた。
そんな2人の様子をじっと見つめていたスティラは、小さく溜息を吐いた。
「まぁ……いいさね。その子は手際もいいしね。助手代わりでも置いてやるよ。護衛も置いていくんだろ?」
「えぇ、護衛と……ラケル、お願いできるかしら?」
「はい、畏まりました」
「男には薪割り頼むとしようかね」
使える人手は助かると、ニヤリとした笑みを浮かべ、スティラはクリスティーナへと了承の返事を返した。
「ありがとうございます。このお礼はもちろん致します。……スノウ、早く解決して戻るから、待っててくれる?」
「…………」
躊躇いがちに小さな手がクリスティーナの背に回って服をキュッと握り込んまれる。
スノウは、ややあってから小さく頷いた。
「任せてよクリスティーナさん、スノウは俺らの妹だ。皆んなで守って待っててやるよっ」
サロの心強い言葉に子供達も同調する様に頷き、クリスティーナは「お願いするわ」と微笑んだ。
「まぁあんたの格好見りゃ、一晩探したって分かるんだ。動転してるヤツに真面目に取り合うほど、浅い人生送ってないさ。気にしないで良い」
今は外套は脱いだとはいえ、飛び込んだ時の格好は割と薄汚れていたクリスティーナ。必死に子供を抱き抱える姿を見て、スティラもホッと一安心したものだ。
スティラに感謝を述べると、今度はリビングで寛ぐ子供達に近寄り目線を合わせるために膝をついた。
「貴方達がスノウを見つけてくれたのね。本当にありがとうございました」
「良いって、当たり前の事をしただけだから」
サロを始め、子供達は照れ臭そうにしながらはにかんだ。
「スノウが無事で本当に良かった。私の準備不足が悪いのだけれど」
「?」
隣に座るスノウの髪を優しく耳にかけてやると、クリスティーナは真剣な顔をスティラ達に向けた。
「実は、この子は迷子になった訳じゃないのです」
「── え?どう言うことだ?」
即座に声を上げたのは臨時リーダーと名乗ったサロだ。子供達はまだ理解が追いついていない顔で、スティラは静かに見通す様な瞳を向けている。
「何者かに部屋から連れ去られてしまって……幸運にも生きて見つけることができました。本当に皆様には感謝しています。
会ったばかりでこんな事を言うのは心苦しいのですが、スノウを暫く此方でお預かりしていただけないでしょうか?」
「!!」
スノウが驚いてクリスティーナを仰ぎ見る。その目は悲しみでいっぱいの目だった。
「寂しい思いをさせてごめんね、スノウ。
まだ犯人が見つかっていないの。そんな中に貴女を簡単に戻せないのよ」
「わ、私は平気っ!だから」
「ううん、私が平気じゃないの。犯人を見つけて安全を確保できないと…次も起こったら。それこそ国外に連れて行かれでもしたら……」
スノウもクリスティーナの目に後悔と悲しみの色を見つけたのか、徐々に諦めるかの様に俯いてしまう。クリスティーナがそっと小さな肩を引き寄せると、俯いたままのスノウを優しく抱きしめた。
そんな2人の様子をじっと見つめていたスティラは、小さく溜息を吐いた。
「まぁ……いいさね。その子は手際もいいしね。助手代わりでも置いてやるよ。護衛も置いていくんだろ?」
「えぇ、護衛と……ラケル、お願いできるかしら?」
「はい、畏まりました」
「男には薪割り頼むとしようかね」
使える人手は助かると、ニヤリとした笑みを浮かべ、スティラはクリスティーナへと了承の返事を返した。
「ありがとうございます。このお礼はもちろん致します。……スノウ、早く解決して戻るから、待っててくれる?」
「…………」
躊躇いがちに小さな手がクリスティーナの背に回って服をキュッと握り込んまれる。
スノウは、ややあってから小さく頷いた。
「任せてよクリスティーナさん、スノウは俺らの妹だ。皆んなで守って待っててやるよっ」
サロの心強い言葉に子供達も同調する様に頷き、クリスティーナは「お願いするわ」と微笑んだ。
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