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翌朝、まだ空が白み始めた頃にスノウは物音で目覚めた。
(フィナ……あ、昨日……今日洗うって言ってた)
丸まっていたスノウはもそもそと動き出し、毛布と掛け布の中から顔を出した。
まだ眠い目を擦りながらベッドを抜け出して、暖気が入るように開けていた扉からそっと様子を伺った。
暖炉の前ではサロが5つに分けた荷物をゴソゴソと探りながら確認していて、長テーブルの奥のキッチンではシュロがトントンと軽快な音を立てながら調理をしているようだった。
ふんわりと漂う香りが、朝の空腹を目覚めさせる。
クルルル~……
昨日はある意味よく運動したスノウのお腹は、とても元気な目覚めを迎えて元気なお返事を返した。
「お?おはようスノウ。早いな、眠れたか?」
「うん」
お腹を押さえて真っ赤なスノウに気付いたサロが笑顔で振り向いた。
「おはよぅスノウ。メシはもうちょっとかかるから暖炉で待ってて~」
シュロはエプロンで手を拭きながらにっこり笑う。自然と輪に入れてくれる雰囲気に戸惑いながら頷いたスノウは言われた通り暖炉の前に近づいた。
「んー?これか?今日も出るからな。あいつらの荷物チェックしてんだ。各自で任せるととんでもないもん突っ込むからなー」
「まぁ、俺もそうだったけど」と荷物を詰める手は休めないサロが苦笑する。
「皆……行っちゃうの?」
「スノウも行くぞ。スティラさんのとこだけど。街まで行くのに荷車とロバを借りた方が安心だからな」
ポンポンと頭を撫でられ、スノウはまた戸惑う。黒い髪を見ても、スノウを見ても誰も嫌な顔をしない。
優しくしてくれて、当たり前のように輪に入れてくれるのなんてクリスティーナだけだと思っていたから、どうして良いのか分からなかった。
(こういう時……確か……)
昨日も言ったら褒められた。
クリスティーナがスノウに、教えてくれた言葉。
『嬉しい時は嬉しいって言うのよ?勿論嫌な時はそう言うの。それでやって貰って嬉しかったらね、笑顔で──』
「あ……………あの、“ありがとう”っ」
ぎこちないかもしれないが、できる精一杯の笑顔を浮かべてスノウは真っ直ぐサロに感謝の気持ちを伝えた。
一方真正面から美幼女スマイルを受けたサロは
(ぐはっっっっっ可愛いヤツと思ってたけど、これはやばいっっっ!)
なんとか耐え切ったが、庇護欲スイッチ全開で押された結果…
「よし、今日からスノウは俺らの妹だ」
“俺の妹”の太鼓判を押したのだった。
(フィナ……あ、昨日……今日洗うって言ってた)
丸まっていたスノウはもそもそと動き出し、毛布と掛け布の中から顔を出した。
まだ眠い目を擦りながらベッドを抜け出して、暖気が入るように開けていた扉からそっと様子を伺った。
暖炉の前ではサロが5つに分けた荷物をゴソゴソと探りながら確認していて、長テーブルの奥のキッチンではシュロがトントンと軽快な音を立てながら調理をしているようだった。
ふんわりと漂う香りが、朝の空腹を目覚めさせる。
クルルル~……
昨日はある意味よく運動したスノウのお腹は、とても元気な目覚めを迎えて元気なお返事を返した。
「お?おはようスノウ。早いな、眠れたか?」
「うん」
お腹を押さえて真っ赤なスノウに気付いたサロが笑顔で振り向いた。
「おはよぅスノウ。メシはもうちょっとかかるから暖炉で待ってて~」
シュロはエプロンで手を拭きながらにっこり笑う。自然と輪に入れてくれる雰囲気に戸惑いながら頷いたスノウは言われた通り暖炉の前に近づいた。
「んー?これか?今日も出るからな。あいつらの荷物チェックしてんだ。各自で任せるととんでもないもん突っ込むからなー」
「まぁ、俺もそうだったけど」と荷物を詰める手は休めないサロが苦笑する。
「皆……行っちゃうの?」
「スノウも行くぞ。スティラさんのとこだけど。街まで行くのに荷車とロバを借りた方が安心だからな」
ポンポンと頭を撫でられ、スノウはまた戸惑う。黒い髪を見ても、スノウを見ても誰も嫌な顔をしない。
優しくしてくれて、当たり前のように輪に入れてくれるのなんてクリスティーナだけだと思っていたから、どうして良いのか分からなかった。
(こういう時……確か……)
昨日も言ったら褒められた。
クリスティーナがスノウに、教えてくれた言葉。
『嬉しい時は嬉しいって言うのよ?勿論嫌な時はそう言うの。それでやって貰って嬉しかったらね、笑顔で──』
「あ……………あの、“ありがとう”っ」
ぎこちないかもしれないが、できる精一杯の笑顔を浮かべてスノウは真っ直ぐサロに感謝の気持ちを伝えた。
一方真正面から美幼女スマイルを受けたサロは
(ぐはっっっっっ可愛いヤツと思ってたけど、これはやばいっっっ!)
なんとか耐え切ったが、庇護欲スイッチ全開で押された結果…
「よし、今日からスノウは俺らの妹だ」
“俺の妹”の太鼓判を押したのだった。
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