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<前書き>
◎前回スキップした方用
見知らぬ男女に連れ去られてしまったスノウ。
放り出されたそこは深い森の中だった。
銃をぶっ放し始める気狂いのおっさんから逃げ出すべく、恐怖の最中真っ暗な森の中を逃走!
─────────────────────
夜の森を闇雲に走り続けるスノウ。
もう背後から銃声は聞こえなくなっても、パニックに陥った子供に判断はできない。何度か転けたが、抱き締めているぬいぐるみがクッションがわりになってちょっと擦りむく以外の大きな怪我をしなかったのが幸いか。
何処をどう走ったか、体力が尽きかけスノウは大きな木の根源にある窪みに隠れる様に蹲った。
上がる息を落ち着け、冷たい空気を肺いっぱいに吸い込む。
シンと静まり返る中にホーホーと鳴き声が何処からか響く。もうあの恐ろしい音は聞こえない。土で汚れたぬいぐるみの汚れを払ってぎゅっと抱きしめると、ジンワリと熱が伝わった。
(ハァ……ハァ……ティナさ…ま。怖い……なんで……怖い…よぉ…!)
土で汚れていてもスノウはぬいぐるみに顔を埋めて、声を上げずに震えて泣く。
声を上げたら見つかるかもしれないから。また怖い目を向けられるから。
いつもそう、スノウはどんな時だって1人で、声を殺すことを強いれ、その環境に順応するしかなかった。
人は側に居た。けれどスノウは、今森にたった1人でいる様にずっと孤独だった。
初めて嫌な顔をしなかったのはクリスティーナ。手を取ったのもクリスティーナ。
抱き締められる事を知ったスノウは、記憶の中の温もりに縋るように、強く腕の中のぬいぐるみ抱きしめ、疲れからかそのまま眠りについてしまった。
いつの間に眠ってしまったのか、スノウはガサリという音に反応して辺りを見回した。
だけど目が暗闇に慣れてきても、真っ暗な森では居るのかどうかも分からない。
肌が縮む様な寒さの中、ぼんやりとした月明かりで輪郭だけが薄らと浮かび上がる木々。
何かの息遣いが迫る様な暗闇に、スノウが身を震わせた時、声が聞こえた気がした。
スノウはそっと立ち上がり、身を低くしながら木の根元から周囲を窺った。やはり微かに聞こえてくる音に耳を澄ませ、一歩一歩警戒しながら近づいていく。
すると緩やかな傾斜の先に、小さな灯りがゆらゆらと動き連れ立って木々の間を動いている。
よく見るとそれは灯りを持った人で、そのまま何処かへ向かっている様だった。
真っ暗な森の中で見えた光に、スノウは無意識に引き寄せられてふらりと近づいていく。
見失わない様に足取りは段々と早まり、音も気にせず追っていく。
光がだんだん大きくなり、ランタンの形がはっきりと見えた時、持っている人たちもはっきり見えた。
「……っ、野生の動物じゃないみたいだな。誰だ?」
ランタンを持った人物はよく照らして見える様に高く掲げてスノウを見遣る。
手にはナイフや斧を持った人達は、光に照らされはっきりと浮かび上がるスノウを目に入れて構えていた武器を下げた。
「…………ぁ、スノ、ウ」
「ちっこいな。こんな夜に何してんだ?」
「ぅお、なんかボロボロだなお前。大丈夫か?」
「ぅわー、迷子じゃないのか~?」
ランタンを持った人達は声をかけながらスノウに近づいていく。勢いに押されて一歩後ずさったが、目に嫌悪の色がない事を見て取り逃げ出したい気持ちをぬいぐるみをぎゅっと抱き締めて耐えた。
「迷子は保護しないとな。ちょうどこれから戻るとこだったんだよ」
「お前上着は?寒いし風邪引く前に行くぞ」
初対面で怖くなかったのは、嫌悪の色がなかったこともあるが
「家に小ちゃくなった上着あったから貸してやるよ」
気安く声をかける人物が、スノウと身長がそこまで大きく離れない、子供であったからでもある。
「あり……がと」
◎前回スキップした方用
見知らぬ男女に連れ去られてしまったスノウ。
放り出されたそこは深い森の中だった。
銃をぶっ放し始める気狂いのおっさんから逃げ出すべく、恐怖の最中真っ暗な森の中を逃走!
─────────────────────
夜の森を闇雲に走り続けるスノウ。
もう背後から銃声は聞こえなくなっても、パニックに陥った子供に判断はできない。何度か転けたが、抱き締めているぬいぐるみがクッションがわりになってちょっと擦りむく以外の大きな怪我をしなかったのが幸いか。
何処をどう走ったか、体力が尽きかけスノウは大きな木の根源にある窪みに隠れる様に蹲った。
上がる息を落ち着け、冷たい空気を肺いっぱいに吸い込む。
シンと静まり返る中にホーホーと鳴き声が何処からか響く。もうあの恐ろしい音は聞こえない。土で汚れたぬいぐるみの汚れを払ってぎゅっと抱きしめると、ジンワリと熱が伝わった。
(ハァ……ハァ……ティナさ…ま。怖い……なんで……怖い…よぉ…!)
土で汚れていてもスノウはぬいぐるみに顔を埋めて、声を上げずに震えて泣く。
声を上げたら見つかるかもしれないから。また怖い目を向けられるから。
いつもそう、スノウはどんな時だって1人で、声を殺すことを強いれ、その環境に順応するしかなかった。
人は側に居た。けれどスノウは、今森にたった1人でいる様にずっと孤独だった。
初めて嫌な顔をしなかったのはクリスティーナ。手を取ったのもクリスティーナ。
抱き締められる事を知ったスノウは、記憶の中の温もりに縋るように、強く腕の中のぬいぐるみ抱きしめ、疲れからかそのまま眠りについてしまった。
いつの間に眠ってしまったのか、スノウはガサリという音に反応して辺りを見回した。
だけど目が暗闇に慣れてきても、真っ暗な森では居るのかどうかも分からない。
肌が縮む様な寒さの中、ぼんやりとした月明かりで輪郭だけが薄らと浮かび上がる木々。
何かの息遣いが迫る様な暗闇に、スノウが身を震わせた時、声が聞こえた気がした。
スノウはそっと立ち上がり、身を低くしながら木の根元から周囲を窺った。やはり微かに聞こえてくる音に耳を澄ませ、一歩一歩警戒しながら近づいていく。
すると緩やかな傾斜の先に、小さな灯りがゆらゆらと動き連れ立って木々の間を動いている。
よく見るとそれは灯りを持った人で、そのまま何処かへ向かっている様だった。
真っ暗な森の中で見えた光に、スノウは無意識に引き寄せられてふらりと近づいていく。
見失わない様に足取りは段々と早まり、音も気にせず追っていく。
光がだんだん大きくなり、ランタンの形がはっきりと見えた時、持っている人たちもはっきり見えた。
「……っ、野生の動物じゃないみたいだな。誰だ?」
ランタンを持った人物はよく照らして見える様に高く掲げてスノウを見遣る。
手にはナイフや斧を持った人達は、光に照らされはっきりと浮かび上がるスノウを目に入れて構えていた武器を下げた。
「…………ぁ、スノ、ウ」
「ちっこいな。こんな夜に何してんだ?」
「ぅお、なんかボロボロだなお前。大丈夫か?」
「ぅわー、迷子じゃないのか~?」
ランタンを持った人達は声をかけながらスノウに近づいていく。勢いに押されて一歩後ずさったが、目に嫌悪の色がない事を見て取り逃げ出したい気持ちをぬいぐるみをぎゅっと抱き締めて耐えた。
「迷子は保護しないとな。ちょうどこれから戻るとこだったんだよ」
「お前上着は?寒いし風邪引く前に行くぞ」
初対面で怖くなかったのは、嫌悪の色がなかったこともあるが
「家に小ちゃくなった上着あったから貸してやるよ」
気安く声をかける人物が、スノウと身長がそこまで大きく離れない、子供であったからでもある。
「あり……がと」
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