転生令嬢の危機回避術の結果について。

ユウキ

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一方、王妃の執務室に向かったクリスティーナは、執務机に備えられている鍵付きの引き出しを開け放った。

そこには8角形に描かれた帯状の塗装の真ん中に特殊な陣と、真ん中が小さな空洞となっている手のひらサイズの石板がある。それを取り出して、小さな小箱から石を取り出し空洞へと埋めるとカチリと嵌まる。



「如何ですか王妃殿下」



ラケルはクリスティーナの手元を覗き込んでヒュッと息を呑む。


手元にある石板は、魔術研究所の努力の結晶とも言えるもので、クリスティーナが小型化を命じて作らせたものだった。

魔獣から採れる魔石は、心臓の数と同じく1つだけ。
手のひらより小さめの魔石が多く、それを使用用途に応じて砕いて使うことが多い。小指の爪ほどの魔石の欠片で、室内灯の灯を2、3ヶ月保たせるほどの力を持つ。

そして研究の途中で、砕いた魔石はお互いを元は一つと示すように共鳴する性質を持っている事がわかった。それを応用して詳しい位置までは分からなくとも、かけらを持つもの同士の方向が分かるような仕組みを作った。

……のを、とんでもマジックな鏡を探すべく研究室の粗探しをしたクリスティーナが見つけたものであった。

真ん中の円陣は魔石が嵌め込まれることによって動き出し、共鳴する石の場所を解析する。その結果を外側を囲う8角形の帯状の部分に受け渡し、方向に合わせてじわりと赤く色を変えるものだ。


ラケルはクリスティーナがスノウのためにアレコレと発注する物の管理と進捗確認も行なっていたので、魔導具の仕組みは理解していた。

その魔導具が示す方向が、一番外側で色が薄い。近ければ強く共鳴するため色が濃くなり、円陣に近い内側寄りの部分が赤く染まる。

動作確認の時と反する動きを見せる石板が意味するところは──



「既に城外の可能性が高いわね」



同じ判断をしたクリスティーナに、キツく目を閉じたラケルは次の言葉をじっと待つ。


「先に着替えましょう。準備しなければ」
「畏まりました。数人呼びます」
「?貴女1人で良いわよ」
「私も準備いたします。お共させて下さいませ」
「……乗馬服は持ってるの?」
「勿論です」
「防寒はしっかり。遅れたら置いていくわ」
「ありがとうございます」


仕方なさそうに微笑んだクリスティーナに一礼してラケルは素早く下がっていった。侍女を数人呼び寄せて任せ、自身の着替えと準備に取り掛かった。
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