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夜会終えて、後軽く湯を流したクリスティーナ。
まだ「今日のスノウちゃん報告」を聞いていないなと思い、ミラに声をかけた。
「ミラ、アトリは?もう休んでしまったかしら?」
「そう……ですね。クロルと交代して報告に来るはずですが。報告せず休むことはないかと。確認させます」
「ええ。もし休んでしまっていたのなら、残念だけど明日でいいわ」
「畏まりました」
様子を見に行かせ、ミラの淹れたお茶に舌鼓を打っていると、見に行かせたクロルが慌てて戻ってきた。
「殿下っ……!大変でございますっっ!あ、ミラ様っ」
「どうしたのクロル、落ち着いてご報告なさい」
「はい、確認に行きましたところ何故かいつも居る騎士が居らず、中を確認するとその騎士が3名中で縛られた状態で……!アトリの姿もですが…………スノウ様のお姿もございませんっ」
「何ですって?!どういう……?!」
「分かったわ。ミラ、近衛騎士に報告して捜索するように手配を。クロルは近衛騎士を連れてスノウの部屋に行って縛られた騎士を解放して事情を聞いて。ラケルは供を。私は陛下にこのまま報告にあがります」
「「「はいっっ」」」
緊急事態にも関わらず、慌てずテキパキを指示を出すクリスティーナを見る侍女たちの目に尊敬の光が一層強く宿る。見習わなくては!と皆頭を振ると、クリスティーナの指示通りに動き出す。
当のクリスティーナは……
(えぇぇーーー?!スノウたーん?!!私動いてないのにどこ行ったのぉぉぉ?!!強制力?!早くない?!どういうことーー!)
表面に出さないだけで、心の中では大号泣だった。
私室から一旦廊下へ出てアシェリードの部屋の扉へ向かうと、近衛騎士が見える。
どんな時でも動じない彼らは、クリスティーナの姿を認めると、先に中へ来客を知らせ入室許可を取ってくれた。小さく黙礼すると扉前に辿り着いた時には扉が開かれて、クリスティーナを中へと誘った。
「陛下、お休み前に申し訳ございませんっ」
少し慌てた様子のクリスティーナに、軽く湯を浴びたアシェリードがソファーに腰掛けていた。
「クリスティーナ?どうした」
「スノウと私の専属侍女1名が行方不明です。また、付けていた護衛が縛られた状態で捨て置かれていたと報告が」
「なに……?それで指示は」
「ミラに近衛騎士へ捜索報告、現場にはクロルと近衛騎士数名を」
「そう……か。では報告を待とう」
「ええ。ここはお任せしますわ。私はスノウを探します」
報告だけして踵を返そうとしたクリスティーナをアシェリードは咄嗟に呼び止める。
「待て、闇雲に動いたところで」
「大丈夫ですわ。こんな事もあろうかと、準備はしておりましたので」
「準備……?」
「えぇ、なので失礼しますわねっ」
「待て待て待て待て、どこへいくっ」
尚も部屋を出て行こうとするクリスティーナを、アシェリードは堪らずその腕を取って引き留めた。クリスティーナは扉に体を向けたまま、顔だけアシェリードを振り向いた。
「私の執務室です」
「待て、もし城外だった場合どうするつもりだ?」
「追いますわよっ」
「しかしもう夜中だ、陽が登るまで待て。それにそこまでして何故探すのだっ」
アシェリードの心の中を重く沈める原因はクリスティーナも理解している。国王陛下だって聖人君子でない事くらい頭でわかっている。だからこそスノウの件でクリスティーナが何をしようとアシェリードの耳には入れなかった。
歩み寄れなどと言えないし、住み分けて平穏が保たれるならそれでいいと思っている。
しかし、それをクリスティーナにも同調しろというの違うんじゃないだろうか?と折角皺を寄せずに頑張っていた眉間にジワジワと皺が寄る。そして彼女の大好きな美幼女の深夜失踪にという事実が、「通常よりもちょっと細いよね?」と言われる堪忍袋の緒をスパーンと切れさせた。
「国の父と称す男が、幼女を見捨てる発言してんじゃないわよっ!!あの子はどんな生まれだろうと、この国に生きる一国民!そうでしょう?!大の大人が小ちゃい子相手にいつまでもウジウジしてんじゃないわよっ!三行半突きつけられたくなかったら、この手を離してドーンと構えて座って待ってなさいっ!」
まだ「今日のスノウちゃん報告」を聞いていないなと思い、ミラに声をかけた。
「ミラ、アトリは?もう休んでしまったかしら?」
「そう……ですね。クロルと交代して報告に来るはずですが。報告せず休むことはないかと。確認させます」
「ええ。もし休んでしまっていたのなら、残念だけど明日でいいわ」
「畏まりました」
様子を見に行かせ、ミラの淹れたお茶に舌鼓を打っていると、見に行かせたクロルが慌てて戻ってきた。
「殿下っ……!大変でございますっっ!あ、ミラ様っ」
「どうしたのクロル、落ち着いてご報告なさい」
「はい、確認に行きましたところ何故かいつも居る騎士が居らず、中を確認するとその騎士が3名中で縛られた状態で……!アトリの姿もですが…………スノウ様のお姿もございませんっ」
「何ですって?!どういう……?!」
「分かったわ。ミラ、近衛騎士に報告して捜索するように手配を。クロルは近衛騎士を連れてスノウの部屋に行って縛られた騎士を解放して事情を聞いて。ラケルは供を。私は陛下にこのまま報告にあがります」
「「「はいっっ」」」
緊急事態にも関わらず、慌てずテキパキを指示を出すクリスティーナを見る侍女たちの目に尊敬の光が一層強く宿る。見習わなくては!と皆頭を振ると、クリスティーナの指示通りに動き出す。
当のクリスティーナは……
(えぇぇーーー?!スノウたーん?!!私動いてないのにどこ行ったのぉぉぉ?!!強制力?!早くない?!どういうことーー!)
表面に出さないだけで、心の中では大号泣だった。
私室から一旦廊下へ出てアシェリードの部屋の扉へ向かうと、近衛騎士が見える。
どんな時でも動じない彼らは、クリスティーナの姿を認めると、先に中へ来客を知らせ入室許可を取ってくれた。小さく黙礼すると扉前に辿り着いた時には扉が開かれて、クリスティーナを中へと誘った。
「陛下、お休み前に申し訳ございませんっ」
少し慌てた様子のクリスティーナに、軽く湯を浴びたアシェリードがソファーに腰掛けていた。
「クリスティーナ?どうした」
「スノウと私の専属侍女1名が行方不明です。また、付けていた護衛が縛られた状態で捨て置かれていたと報告が」
「なに……?それで指示は」
「ミラに近衛騎士へ捜索報告、現場にはクロルと近衛騎士数名を」
「そう……か。では報告を待とう」
「ええ。ここはお任せしますわ。私はスノウを探します」
報告だけして踵を返そうとしたクリスティーナをアシェリードは咄嗟に呼び止める。
「待て、闇雲に動いたところで」
「大丈夫ですわ。こんな事もあろうかと、準備はしておりましたので」
「準備……?」
「えぇ、なので失礼しますわねっ」
「待て待て待て待て、どこへいくっ」
尚も部屋を出て行こうとするクリスティーナを、アシェリードは堪らずその腕を取って引き留めた。クリスティーナは扉に体を向けたまま、顔だけアシェリードを振り向いた。
「私の執務室です」
「待て、もし城外だった場合どうするつもりだ?」
「追いますわよっ」
「しかしもう夜中だ、陽が登るまで待て。それにそこまでして何故探すのだっ」
アシェリードの心の中を重く沈める原因はクリスティーナも理解している。国王陛下だって聖人君子でない事くらい頭でわかっている。だからこそスノウの件でクリスティーナが何をしようとアシェリードの耳には入れなかった。
歩み寄れなどと言えないし、住み分けて平穏が保たれるならそれでいいと思っている。
しかし、それをクリスティーナにも同調しろというの違うんじゃないだろうか?と折角皺を寄せずに頑張っていた眉間にジワジワと皺が寄る。そして彼女の大好きな美幼女の深夜失踪にという事実が、「通常よりもちょっと細いよね?」と言われる堪忍袋の緒をスパーンと切れさせた。
「国の父と称す男が、幼女を見捨てる発言してんじゃないわよっ!!あの子はどんな生まれだろうと、この国に生きる一国民!そうでしょう?!大の大人が小ちゃい子相手にいつまでもウジウジしてんじゃないわよっ!三行半突きつけられたくなかったら、この手を離してドーンと構えて座って待ってなさいっ!」
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