転生令嬢の危機回避術の結果について。

ユウキ

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その頃王城では、クリスティーナの本日の予定を聞いていたアシェリードが悩ましげなため息を吐いていた。本人は気付いていないが、侍従は20回を超えた辺りで数えるのを辞めたほどだ。

生まれた日以来目にしていないスノウと会っているクリスティーナ。

あっけらかんと「世話をする」と言ってのけた彼女が、複雑な事情を負担に思っていないか、苦しんでいるのではないかと、すっかり政略結婚で王命でほぼゴリ押しで連れてきられたことなどポーンと忘れて、心が重たくなるのを感じて無意識にため息を量産しているのだ。

今や聡明さと女神のような美しさ、慈愛(?)に満ちたクリスティーナに疲れ切っていた心を鷲掴みにされたアシェリードは、彼女が不義の証であるスノウと会う事に、複雑な心境をどうする事もできずに持て余していた。


しかし王族であるアシェリードは表面上完璧に微笑を貼り付け謁見申請を順調に熟しているが、側近くに仕える者は玉座に座るアシェリードの雰囲気がどんよりと暗く重いことを肌で感じていた。


今日は秋晴れの快晴なはず……と何度か侍従や近衛が窓から見える天気をチェックしてしまうほどに、玉座を中心に色彩がトーンダウンして見える。

ここ最近まで艶々の上機嫌だった分、あまりの落差に周りの反応は敏感になっていた。


「何かお悩みみたいですね…」
「王妃殿下と何かあったんじゃ」
「実は今日の王妃殿下がアレと会っているらしくて」
「あぁー。ほんと慈悲深いよなぁ、生まれた子のせいじゃないわと言って、手ずから色々手配しているとか。ほんと女神」
「陛下としては気分の良い事じゃないかぁ」
「あの後は色々酷かったからなぁ」
「まぁ新たにお子が生まれたら陛下の気持ちも幾分治るんじゃ」

「早く治ってほしいなぁ~」

「ばか、声大きいぞ」
「あ、すまん」
「そろそろ時間だ。戻るぞ」


そんな事を近衛騎士2人が、誰もいない王城の廊下でボヤいていたのだが……


「アレ……が邪魔しているって事かしら。そうだわ。アレは生まれてはいけない存在だったもの」


物陰から静かに姿を表せた人物が、思案げに顎に指をかけながら呟く。


「ふふ、そうね。それが良いわ」


暗い笑みを浮かばせた人物は、気づかれないように足音を忍ばせ立ち去って行った。
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