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もしここに彼の侍従がいたのなら、「せっかく咲いた花が枯れていくぅ~」とまた胃のあたりを抑えたのだろうが、そんなもんは知らんとばかりににっこり笑顔でクリスティーナは続ける。
「色々事情がお有りかと思いますが、ちゃんとどうなさるか決まるまで、私が面倒を見ようと思いますの」
「そんな必要は」
甘い新婚生活1日目に、まさかの前妻の子との対面話し。いつかは説明しなくてはならないだろうと考えていたが、今ここでじゃなくても良かったんじゃないだろうか?とアシェリードは思う。
それに不義の証である子の行方は、未だに決めかねている悩みの種でもある。
「いいえ、王妃となりましたからには必要な事だわ」
「いやしかしアレは─」
「“スノウ”と言うのよ?子の誕生で罪が明かされたからと言って、生まれ落ちた子に何の罪があるのかしら?」
「っそうだが」
この国で崇めている神である豊穣の女神は子殺しを禁じている。経緯はどうあれ、生まれた無垢な子は慈しむべしという教えである。
王に即位して間も無いこのタイミングで発覚した、絶対表に出せないスキャンダルの原因が未だに持て余されて後回しにされている由縁でもある。
「お任せくださいませ。悪い様にはいたしません。……それにルートは潰さないと」
「ん?最後はなんと?」
「いえいえ、あ、もう一つお伝えしたい事が」
「……なんだ」
「私、浮気・不倫はするのもされるのも死ぬほど嫌いなの。まぁ、場合によっては側室を娶るのは仕方ない事だけど。嫁いだからには貴方への貞節を生涯誓いますわ」
正直なところクリスティーナは、仕事と製薬業とアシェリードで手一杯でそんな事できる訳ねーだろ!という気持ちでいっぱいではある。
その前に王妃が不貞を働くと基本的に一発アウトなのだが、それを横に置いたとしても厄災の種を自らばら撒くほど気狂いでもない。
これを態々口にしてアシェリードに誓ったのは、前の女と一緒にしてくれるなという気持ちもあったのかもしれないが、自ら選んだ女の裏切りに深く傷ついたであろう男に、他者が選んで後釜に収まってしまったとはいえ、少しずつでも信頼して欲しかったのかもしれなかった。
何を言われたのかと、すっかり国王としての顔で聞いていたアシェリードは目を瞬かせた。
「だから、よろしくお願いしますね旦那様?」
花が咲く様に笑って、アシェリードの頬に手を添えてそう言ったクリスティーナは、アシェリードにとてつも無い衝撃を与えた。
………………結果
「え?ぅわ、アシェリード様、ちょっとタンマタンマ!」
「其方が悪い」
「え、ちょっなんでっ、あっっっ」
昨夜の二の舞……いや、それ以上の夜となったのであった。
「色々事情がお有りかと思いますが、ちゃんとどうなさるか決まるまで、私が面倒を見ようと思いますの」
「そんな必要は」
甘い新婚生活1日目に、まさかの前妻の子との対面話し。いつかは説明しなくてはならないだろうと考えていたが、今ここでじゃなくても良かったんじゃないだろうか?とアシェリードは思う。
それに不義の証である子の行方は、未だに決めかねている悩みの種でもある。
「いいえ、王妃となりましたからには必要な事だわ」
「いやしかしアレは─」
「“スノウ”と言うのよ?子の誕生で罪が明かされたからと言って、生まれ落ちた子に何の罪があるのかしら?」
「っそうだが」
この国で崇めている神である豊穣の女神は子殺しを禁じている。経緯はどうあれ、生まれた無垢な子は慈しむべしという教えである。
王に即位して間も無いこのタイミングで発覚した、絶対表に出せないスキャンダルの原因が未だに持て余されて後回しにされている由縁でもある。
「お任せくださいませ。悪い様にはいたしません。……それにルートは潰さないと」
「ん?最後はなんと?」
「いえいえ、あ、もう一つお伝えしたい事が」
「……なんだ」
「私、浮気・不倫はするのもされるのも死ぬほど嫌いなの。まぁ、場合によっては側室を娶るのは仕方ない事だけど。嫁いだからには貴方への貞節を生涯誓いますわ」
正直なところクリスティーナは、仕事と製薬業とアシェリードで手一杯でそんな事できる訳ねーだろ!という気持ちでいっぱいではある。
その前に王妃が不貞を働くと基本的に一発アウトなのだが、それを横に置いたとしても厄災の種を自らばら撒くほど気狂いでもない。
これを態々口にしてアシェリードに誓ったのは、前の女と一緒にしてくれるなという気持ちもあったのかもしれないが、自ら選んだ女の裏切りに深く傷ついたであろう男に、他者が選んで後釜に収まってしまったとはいえ、少しずつでも信頼して欲しかったのかもしれなかった。
何を言われたのかと、すっかり国王としての顔で聞いていたアシェリードは目を瞬かせた。
「だから、よろしくお願いしますね旦那様?」
花が咲く様に笑って、アシェリードの頬に手を添えてそう言ったクリスティーナは、アシェリードにとてつも無い衝撃を与えた。
………………結果
「え?ぅわ、アシェリード様、ちょっとタンマタンマ!」
「其方が悪い」
「え、ちょっなんでっ、あっっっ」
昨夜の二の舞……いや、それ以上の夜となったのであった。
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