転生令嬢の危機回避術の結果について。

ユウキ

文字の大きさ
上 下
12 / 63

12.

しおりを挟む
淡々と語り終えたミラ。

感情を交えない語り口だからか、余計にその時の惨状が浮き彫りになるようで、クリスティーナは手にした扇子で顔半分を覆い隠したけれど、ドン引きした目と顔色までは隠しようがない。

何故その後直ぐではなく、少し間を置いて前王妃が亡くなったか、何故アシェリードが亡くなった愛していたはずの妻を鼻で嘲笑うのか、国内の高位の未婚の令嬢に拘ったか、とっても納得がいったクリスティーナは、想定外のヘヴィ─さに溜息を吐いた。


「当たり前だけど、私、浮気はするのもされるのも嫌いなの。まぁ陛下は場合によっては側室を娶らなきゃいけなくなるかもしれないけど。私は絶対にしないと、誓うわ」

「美しく聡明、かつ貞淑な王妃殿下にお仕え出来ること史上の喜び、また、永遠の忠誠をもって一層お仕え申し上げます」

「じゃ、貴女の下に有能な部下を3人選んで早急につけなさい。多忙すぎる侍女なんてまるで私が虐めているみたいに見えるじゃない。全体の管理、あの子の周りも調査するわよ」

「早急に手配いたします」


ほんの僅かに緩むミラの瞳を見て、クリスティーナは主人らしく鷹揚に頷いて見せる。
しかし、内心は先程の重たい事実に疲れが倍増して早々にベッドへ帰ることを決意していたのであった。

部屋に戻るなり、クリスティーナは早々に着替えて休む準備をした。

甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるミラが、上掛けをめくってくれて、ベッドに潜り込みながら聞き忘れていたなと思っていたことをふと口にする。


「そう言えばあの子、なんていう名前なの?」


ミラは直ぐに返答をする。


「スノウ様とお呼びしております。彼のお方はスノーホワイトと名付けられておりましたが、それでは少し支障がございますので」


「そ……う、スノウ。ありがとう」


ぎこちない動作だったが、クリスティーナはなんとかベッドの中へと身を滑り込ませる。
上掛けをぎゅっと握り込んで頭まで被せると、気遣ったミラは一礼してから静かに部屋から下がって行った。

一方室内…いや、上掛けの中のクリスティーナは、頭を抱えていた。



「そっちーーーーー?!?!?!童話そっちー?!乙女ゲームあっちじゃなかったのーーーー?!」



人生の舵取りの失敗点に関して、盛大に頭を抱えてたのであった。
しおりを挟む
感想 97

あなたにおすすめの小説

巻き戻ったから切れてみた

こもろう
恋愛
昔からの恋人を隠していた婚約者に断罪された私。気がついたら巻き戻っていたからブチ切れた! 軽~く読み飛ばし推奨です。

余命1年の侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
余命を宣告されたその日に、主人に離婚を言い渡されました

もう終わってますわ

こもろう
恋愛
聖女ローラとばかり親しく付き合うの婚約者メルヴィン王子。 爪弾きにされた令嬢エメラインは覚悟を決めて立ち上がる。

愛など初めからありませんが。

ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。 お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。 「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」 「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」 「……何を言っている?」 仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに? ✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
マーベル子爵とサブル侯爵の手から逃げていたイリヤは、なぜか悪女とか毒婦とか呼ばれるようになっていた。そのため、なかなか仕事も決まらない。運よく見つけた求人は家庭教師であるが、仕事先は王城である。 嬉々として王城を訪れると、本当の仕事は聖女の母親役とのこと。一か月前に聖女召喚の儀で召喚された聖女は、生後半年の赤ん坊であり、宰相クライブの養女となっていた。 イリヤは聖女マリアンヌの母親になるためクライブと(契約)結婚をしたが、結婚したその日の夜、彼はイリヤの身体を求めてきて――。 娘の聖女マリアンヌを立派な淑女に育てあげる使命に燃えている契約母イリヤと、そんな彼女が気になっている毒舌宰相クライブのちょっとずれている(契約)結婚、そして聖女マリアンヌの成長の物語。

処理中です...