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そう、大陸のやや北側に位置するこの王国は、王都でも初春までチラチラと雪が残るくらいの気温。元々北から流れてきた民族が国の始まりということもあるせいか、貴族・平民に関わらず総じて色素が薄い。血統を重んじる貴族は未だに銀髪、金髪、濃くても薄茶色が一般的。国民でも金髪から栗色が大多数で、南側の国境近くの領地でチラホラ濃茶や黒髪を見掛けるくらいである。
地域性と皆わかっているため、黒髪だからという忌避感や迫害はないものの、余所者感は否めないのも事実である。
そんな中で、先程の前王妃の子供はどう見ても純度100%の黒髪であったのだ。
「お肌の白さはお母様に似たのかしらね?真っ赤な唇に、黒髪……ね、もしかして前王妃様が亡くなられたのは」
「聡明なる王妃殿下、どうかそれ以上はご容赦くださいませ」
そう言って目をぎゅっと瞑ったミラは、昔語りを口にした。
アシェリードがまだ王子だった時分、幼い頃からの婚約者である公爵令嬢と話し合いの場を持って婚約を解消して、子爵令嬢だった前王妃を選んだのは有名な話である。
元々平民を母に持つ前王妃という事もあり、シンデレラストーリーに国民は沸いた。
ここまでの事はクリスティーナも知るところである。回避人生で高みの見物を決め込みながら「やっぱり来たな?シナリオめ…ふふふ」と、入る情報にほくそ笑んでいた。
しかしながら、教育の行き届いていない子爵令嬢をすぐに結婚させて妃に立てることができなかった。生まれてからずっと高等教育を施されてきた高位の令嬢と違って、半分平民で10歳で認知されて迎え入れられただけの子爵令嬢は教養どころか基本マナーも危うかったのである。
根気強く教育して2年、日の目はいつ見られるかと遅々として進まない進捗状況に教育係一同頭を悩ませているところにアシェリードは子爵令嬢の誘惑に負けて褥を共にしてしまう。
そして月のものが来ないと大騒ぎをしたために、誓約書を先に交わして、お腹が目立たぬうちにと結婚式を執り行った。その後は安全のためにと王宮の奥で秘される様に籠らせた。こうして公には出さないまでも、王太子妃として据えることになった。
産月が近くなったある日、国王陛下が急な病で亡くなってしまい、王太子であったアシェリードが若くして国王として立つこととなる。
王宮中が日々忙しなく動き回る中で、なし崩し的に王妃となってしまった彼女が令嬢の嗜みとして教えられていた刺繍を刺していた時のこと。
何を思ったのかふと立ち上がり、雪が降っていたにも関わらず窓を開け放ち、針で刺したらしい指先から小さく盛り上がった血を、ぽたりと雪に落として呟いた。
『ねぇ、この雪のように白くて、この血の様に赤くて、この窓枠のように黒く艶やかな髪の子供が欲しいわね…』
そう言ってうっそりと微笑んだ彼女はすぐ様医師に診せられた。マタニティブルーでは無いかと診断され、安静にする様にと言われただけだった。
そんな事もあった日も記憶が薄まりつつあった日、予定日より1、2ヶ月遅れて彼女は子供を産み落とした。
『見て!神様が私の願い通りの子を授けてくれたわ!』
「── 皆、絶句する中で、かのお方は歓喜に染まったお顔でそう叫ばれました」
──────────
<後書き>
昔語り部分が自分でもドン引きしてしまい、投稿するか悩んだポイントです(汗
ホラーじゃありませぇぇぇん◝(๑⁺д⁺๑)◞՞
地域性と皆わかっているため、黒髪だからという忌避感や迫害はないものの、余所者感は否めないのも事実である。
そんな中で、先程の前王妃の子供はどう見ても純度100%の黒髪であったのだ。
「お肌の白さはお母様に似たのかしらね?真っ赤な唇に、黒髪……ね、もしかして前王妃様が亡くなられたのは」
「聡明なる王妃殿下、どうかそれ以上はご容赦くださいませ」
そう言って目をぎゅっと瞑ったミラは、昔語りを口にした。
アシェリードがまだ王子だった時分、幼い頃からの婚約者である公爵令嬢と話し合いの場を持って婚約を解消して、子爵令嬢だった前王妃を選んだのは有名な話である。
元々平民を母に持つ前王妃という事もあり、シンデレラストーリーに国民は沸いた。
ここまでの事はクリスティーナも知るところである。回避人生で高みの見物を決め込みながら「やっぱり来たな?シナリオめ…ふふふ」と、入る情報にほくそ笑んでいた。
しかしながら、教育の行き届いていない子爵令嬢をすぐに結婚させて妃に立てることができなかった。生まれてからずっと高等教育を施されてきた高位の令嬢と違って、半分平民で10歳で認知されて迎え入れられただけの子爵令嬢は教養どころか基本マナーも危うかったのである。
根気強く教育して2年、日の目はいつ見られるかと遅々として進まない進捗状況に教育係一同頭を悩ませているところにアシェリードは子爵令嬢の誘惑に負けて褥を共にしてしまう。
そして月のものが来ないと大騒ぎをしたために、誓約書を先に交わして、お腹が目立たぬうちにと結婚式を執り行った。その後は安全のためにと王宮の奥で秘される様に籠らせた。こうして公には出さないまでも、王太子妃として据えることになった。
産月が近くなったある日、国王陛下が急な病で亡くなってしまい、王太子であったアシェリードが若くして国王として立つこととなる。
王宮中が日々忙しなく動き回る中で、なし崩し的に王妃となってしまった彼女が令嬢の嗜みとして教えられていた刺繍を刺していた時のこと。
何を思ったのかふと立ち上がり、雪が降っていたにも関わらず窓を開け放ち、針で刺したらしい指先から小さく盛り上がった血を、ぽたりと雪に落として呟いた。
『ねぇ、この雪のように白くて、この血の様に赤くて、この窓枠のように黒く艶やかな髪の子供が欲しいわね…』
そう言ってうっそりと微笑んだ彼女はすぐ様医師に診せられた。マタニティブルーでは無いかと診断され、安静にする様にと言われただけだった。
そんな事もあった日も記憶が薄まりつつあった日、予定日より1、2ヶ月遅れて彼女は子供を産み落とした。
『見て!神様が私の願い通りの子を授けてくれたわ!』
「── 皆、絶句する中で、かのお方は歓喜に染まったお顔でそう叫ばれました」
──────────
<後書き>
昔語り部分が自分でもドン引きしてしまい、投稿するか悩んだポイントです(汗
ホラーじゃありませぇぇぇん◝(๑⁺д⁺๑)◞՞
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