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初夜を終えた翌日。
「あのキラ顔の鬼畜め……」
掠れ声で呻きながら目覚めたクリスティーナは、指一本動かせなかい状況に「ぐぬぬ」と悔しく思いながら、ベッドの上で専属侍女であるミラに甲斐甲斐しく世話を焼かれていた。
「ホント、助かるわ……」
「使用人は家具でございます。感謝を述べていただく必要はございません」
「ありがとう」
「……いえ、勿体無いお言葉。国一番の美しい王妃殿下にお仕えできて、幸せでございます」
ミラの常に崩れない無表情の頬や目元がほんのり染まるのを見つけて、「あ、デレた」と心の中でガッツポーズを作ったクリスティーナは、その日の午後にやっとこさベッドから起き上がり、用意された中で最も緩めのエンパイアスタイルのデイドレスを見に纏う。
婚姻休暇として1週間の休みを貰ったクリスティーナだったが、初っ端からこれでは身が持たんと王族専用の庭園で空を仰いだ。
庭の奥にある小さな東屋で一休憩をしようと歩を進める中、クリスティーナは王妃の責務なんだからコレも頑張んなきゃかぁ~と少々頬を染めながら想いに耽る。
王妃の責務。
それは王の血を継ぐものを生み育てる事。この国の引き継ぐ王族を増やし、次代に引き継ぐ事である。
「責務……責務ねぇ」
なんだかずっと引っ掛かりを感じながら、手に持たされた扇子をシャラリと広げては閉じるを繰り返している内に東屋へとたどり着く。
「あら?」
そこには、小さな先客が居た。
その者はクリスティーナに気付いていなかったのか驚いて肩を跳ねさせ、パッと振り返って彼女を仰ぎ見た。
クリクリとした瞳とクリスティーナの瞳が絡み合う。
「……えーっと」
王妃の責務の一つは、王の子をなす事で。
「驚かせちゃったかしら?」
そう言えばとクリスティーナは思う。
隣国の学術院にいた時に耳にしたでは無いかと。
「ごめんなさいね」
前王妃様が1人子をお産みになったと。
だからこそ雄叫び(?)を上げて、羽を伸ばし切って羽ばたかせ、博士号まで取ったのではなかったか。
今、クリスティーナが居る場所は王族専用の庭。
ここはその奥に位置する東屋で。もちろん立ち入れる者は近衛騎士や専属の侍女と王族だけ。
「私はクリスティーナ。仲良くしてね?」
目を丸めたままの小さな先客に膝を折って目線を合わせ、殊更優しく微笑んでみせたクリスティーナだったが、大袈裟に一歩後ろへ後ずさった小さな先客の頭から、帽子がわりなのか、ベールがひらりと滑り落ちる。
「!!」
はてさて、息を呑んだのは何方だったのか。
小さな先客は落ちたベールを引っ掴むと、脱兎の如く走り去っていった。
「あのキラ顔の鬼畜め……」
掠れ声で呻きながら目覚めたクリスティーナは、指一本動かせなかい状況に「ぐぬぬ」と悔しく思いながら、ベッドの上で専属侍女であるミラに甲斐甲斐しく世話を焼かれていた。
「ホント、助かるわ……」
「使用人は家具でございます。感謝を述べていただく必要はございません」
「ありがとう」
「……いえ、勿体無いお言葉。国一番の美しい王妃殿下にお仕えできて、幸せでございます」
ミラの常に崩れない無表情の頬や目元がほんのり染まるのを見つけて、「あ、デレた」と心の中でガッツポーズを作ったクリスティーナは、その日の午後にやっとこさベッドから起き上がり、用意された中で最も緩めのエンパイアスタイルのデイドレスを見に纏う。
婚姻休暇として1週間の休みを貰ったクリスティーナだったが、初っ端からこれでは身が持たんと王族専用の庭園で空を仰いだ。
庭の奥にある小さな東屋で一休憩をしようと歩を進める中、クリスティーナは王妃の責務なんだからコレも頑張んなきゃかぁ~と少々頬を染めながら想いに耽る。
王妃の責務。
それは王の血を継ぐものを生み育てる事。この国の引き継ぐ王族を増やし、次代に引き継ぐ事である。
「責務……責務ねぇ」
なんだかずっと引っ掛かりを感じながら、手に持たされた扇子をシャラリと広げては閉じるを繰り返している内に東屋へとたどり着く。
「あら?」
そこには、小さな先客が居た。
その者はクリスティーナに気付いていなかったのか驚いて肩を跳ねさせ、パッと振り返って彼女を仰ぎ見た。
クリクリとした瞳とクリスティーナの瞳が絡み合う。
「……えーっと」
王妃の責務の一つは、王の子をなす事で。
「驚かせちゃったかしら?」
そう言えばとクリスティーナは思う。
隣国の学術院にいた時に耳にしたでは無いかと。
「ごめんなさいね」
前王妃様が1人子をお産みになったと。
だからこそ雄叫び(?)を上げて、羽を伸ばし切って羽ばたかせ、博士号まで取ったのではなかったか。
今、クリスティーナが居る場所は王族専用の庭。
ここはその奥に位置する東屋で。もちろん立ち入れる者は近衛騎士や専属の侍女と王族だけ。
「私はクリスティーナ。仲良くしてね?」
目を丸めたままの小さな先客に膝を折って目線を合わせ、殊更優しく微笑んでみせたクリスティーナだったが、大袈裟に一歩後ろへ後ずさった小さな先客の頭から、帽子がわりなのか、ベールがひらりと滑り落ちる。
「!!」
はてさて、息を呑んだのは何方だったのか。
小さな先客は落ちたベールを引っ掴むと、脱兎の如く走り去っていった。
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