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翌日からクリスティーナの生活は、とっても厳しいものへと変わる。


早朝に起こされて身支度を済ませると、最新の情報を聞かされながら朝食。王族マナーに始まり王侯貴族の派閥とパワーバランス、軽くお昼を摂ると、近年諸外国との力関係をみっちりetc、etc……


「クリスティーナ様はその他3ヶ国語、計算やマナーはしっかりされておりますので、教える事も少なくって楽ですわ」


とは、とある教育係談。
引きこもりアピールで本や勉強に精を出していなかったら……と、こっそり青ざめたのは言うまでもない。


クリスティーナは勉強漬けの毎日の中、何とか隙間時間を見出しては自分で起こした事業の調整や、ユイマール侯爵家と打ち合わせ、薬の品質をチェック、新薬製作の方向性を決定……などなど。

おはようからおやすみまで、目も回るほどの忙しさとはこの事か。と妙なテンションで納得しつつ、「何か忘れてるなぁ」という引っ掛かりを頭の片隅に覚えながらも怒涛の日々がすぎていく。

そしてあっという間の1年が過ぎて、クリスティーナはこの国の国王陛下であるアシェリードと結婚式を挙げた。

後妻という事もあり、主だった高位貴族と重職に就く者、そしてユイマール侯爵家の一家という、王族にしては慎ましやかな式であった。


婚約期間中の1年でクリスティーナとアシェリードはそこそこ距離を近づけていくことに成功していた。時間が空けば顔を出しにくるアシェリードの努力のお陰でもある。

と言っても、クリスティーナにとって、豆粒くらいに遠くで一度見かけたことのある程度の相手が、ちょくちょく顔を合わしてお茶を飲む程度の知り合いになったくらいの親しさだったが。

しかしながら式を挙げて口づけを交わした時には「あらやだチューしちゃったわ」と少々照れた。宴を終えた後に身を整えられて入れられた先で


「美しい……クリスティーナ。僕は幸せ者だな、聡明で美しい君を迎えることができて……」
「陛下……」
「アシェリードと呼んでくれ……2人だけの時は敬称も無しだ」
「ア、アシェリード……さま」
「ふふ、まだ夜は始まったばかりだ。いっぱい呼んで僕のクリスティーナ」


妖艶に微笑むアシェリードに覆い被さられながら、「あ、夫になったんだったわこの人」と、やっとこさ認識したのであった。
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