転生令嬢の危機回避術の結果について。

ユウキ

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「─ さて…この度のこと、急で申し訳なかった」
「いえ……」

「元老院が決定してね。いつの間にか君を選び出して、候補に名前が上がったと思ったらあっという間だったよ。色々忙しくしていただろうに……しかし君以上に適した人物も居ないのも確か。難しいポストだと思うが、受け入れてくれると嬉しい」


ド直球に本題を投げてよこしたアシェリードに、クリスティーナは「ん゛ん゛っ」と詰まりそうになる喉を叱咤して何とか誤魔化してみた。


「コホン、失礼いたしました。
私を評価してくださったこと、嬉しく思いますが……力不足かと。亡くなられた王妃様を思いますと、私なんかでは」


しおらしく、遠慮と見せかけた断りの序章を紡ぎ始めるクリスティーナ。しかしアシェリードはフッと自嘲するような笑みを漏らして続く言葉を止めさせた。


「あぁ、あれは民に人気があったからな」


その鼻でちょっぴり嘲るような息遣いに、クリスティーナは気のせい?と目を瞬かせた。


「まぁ、君の功績はユイマール侯爵領でも周知の事実。国内でその仕組みを徐々に広げていけば、君の人気はあっという間にアレを超えるだろう」



やはり気のせいではないのだろう。アシェリードが愛しんで居たはずの前王妃を「アレ」と言い放ったのだ。何があったかは知らないが、故人を鼻で嗤うのは如何なものかと眉を寄せる。


「あの、私以外にも……」

「君を逃すと他はデビュー前くらいになる。これでも25になる。開きすぎる年齢は侮られやすいし、流石に趣味じゃ無い」

「…そ、ですか」

「これは王命だ。披露目は来年春先。それまでに王族として色々学んでもらう事になる。よろしく頼む」


ここに至って、クリスティーナは自分に退路がないことに気付く。それでもクリスティーナの口は、今までの回避癖のせいか返す言葉がどうしても、


「……謹んで、お……受け、いた……し、ます」


辿々しくなるのは、「NO!」と叫びだしたくなるのを気力で押さえ込んでいるからで。何とかギリギリ「YES」と絞り出せた事は、心の底から褒めてあげてほしいものである。
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