転生令嬢の危機回避術の結果について。

ユウキ

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「……これって回避」
「王家の印が押された王命だ」

「……結婚してましたってわけには」
「既に調査が入っているわよ。そもそも相手は誰?」

「……あ、処女じゃなくなれば」
「あと数時間でどうやるんだよ。て言うか貴族令嬢が、親の前で口にしていい言葉じゃないぞ」


ややパニックに陥ったまま端ない言葉を口にしたクリスティーナのおでこを、兄が指先で弾いて制裁を加える。クリスティーナはヒリヒリと痛むおでこを撫でつつ、現状を一言で言い表した。



「…………詰んだ」



まさに、その通りであった。



そうして手紙にあった通り、お迎えの先触れがあっという間にやってきてしまい、病み上がりにもかかわらず問題なしと医者から太鼓判を押されたクリスティーナは、王家からのお迎えの馬車に逃げる間もなく押し込められ、王宮へと連れて行かれたのだった。





有無を言わさず王宮の奥へ奥へと連れてこられ、服を剥ぎ取られ、風呂に入れられ磨かれ、その間に家から届いた数枚しかない中でも一応最も高価なドレスを着せられ、化粧をされて髪を整えられて飾り付けられたクリスティーナは、精神的にもヘトヘトになりながら王族の区域の一画へと連れてこられた。


「此方でお待ちです」


そう言ったのは、知らぬうちに彼女専属となったらしい王宮侍女長も兼任するミラ。
淡々とクリスティーナを褒める言葉には、本心が伺えないが、嘘を言っている目でもないのでクリスティーナは微妙な顔をしながら「はぁ…」とだけ返事をしたのだが。

淡々と仕事をこなす彼女の先導でついて行った先で、クリスティーナは先の言葉を言われてゴクリと喉を鳴らした。

思えば目立たないように、地味に野暮ったくを目指して居たため、髪はボサボサか敢えてのおさげスタイル、前髪は伸ばしっぱなしで顔を隠していたのだが、先程止める間も無く毛先を揃えられ、前髪も絶妙な感じに整えられてしまい、視界が実に明瞭となってしまっていた。

スースーするオデコが気になって前髪をちょいちょいと弄っているうちに、侍女のミラが中の侍従とやり取りを終えて礼を取りながらススっと下がっていった。

それと同時に重厚な扉がゆっくりと開かれ、クリスティーナは覚悟を固め切る事なく、促されるまま室内へと恐々足を踏み入れた。

サロンには上部分が半円になっているテラス窓が大きくとられていて、そこから美しい花々が咲き誇る庭が見える。その窓近くにテーブルと2脚の椅子が置かれ、茶器や花瓶が置かれている。

どうやらお茶をしながら話を進められるようだと、クリスティーナは状況を見て理解する。

窓際に佇んで景色を眺めていた人物がクリスティーナの近づく気配に反応してゆっくりと振り返る。
それに合わせてクリスティーナは深々と腰を落としたカーテシーをしながら頭を垂れてみせた。

王族に対する淑女の最敬礼だ。


「よい、ここは公ではない。顔を上げて楽にしてくれ」
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