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ユイマール侯爵家は代々穏健派の貴族であり、性格も穏やかな者が多く、美しい容貌も相まって他の貴族からの注目を集めていた。
その中で唯一変わり者の次女であり末っ子でもあるクリスティーナは、幼い頃急に鏡に映った自分を見て青ざめて呟いた。
「ktkr、異世界転生……?!」
「何ですって?お嬢様……?」
様子の変わった彼女に心配そうな目を向ける使用人を押しのけて、クリスティーナは1人部屋に篭る。
心配した家族が翌日クリスティーナの部屋に様子を見にくると、彼女は意を決したかのように拳を握り込んで言い放った。
「私、前世を思い出しましたの!異世界転生ですの。宿命(お約束)に抗う為、今世では慎ましく、目立たずをモットーに生きますわ!」
それを聞いた両親と兄姉は呆気に取られ……
「お医者様を呼んでちょうだいっ!クリスティーナが病気よっ!!」
「あぁ、風邪なんてなかなか引かないものにかかったのか……」
「何か変なもの食べたのではなくて?あれほどお庭の花壇には入るなって言ったのに」
「医者は頭の方も診れる方にしなさい」
口々に何か言いつつ、クリスティーナをベッドへ押し込めようとした。
── そして数時間掛け、医者や何やという騒ぎも落ち着き、信じ難いが前世を思い出したクリスティーナの言葉をほんの少し信じることにした家族は、それとは別に彼女が語る“今後の計画”に眉を顰めた。
「私、結婚はせずに領地のためになる事に身を捧げますわ!」
「馬鹿言うんじゃありません」
当然の如くまずは一蹴されたが、クリスティーナが社交の第一歩である母と姉と一緒にお茶会、王家のお茶会を始めとした交流会を悉く欠席し、図書室に引きこもる事で13歳を超えたあたりで「好きにしなさい」と父が諦めた。
と言うのも、姉が公爵家に嫁ぐ事が決まり、兄が貿易港を持つ領地の伯爵令嬢と婚約した事で、そこまでの政略を必要としなかったことも大きかった。それに末っ子が可愛いと言う気持ちもちょっぴりあったのかもしれない。
その内協力するようになり、のらりくらりと婚約の打診を躱し続けること数年。薬学を熱心に学んでいるかと思うと、社交デビューである15歳になると、
「あ、学術院の試験あるからパスで」
と軽ぅーい言葉で断って隣国の名高い学術院にあれよあれよと言う間に合格して旅立って行った。
クリスティーナが国外留学中に王太子殿下がその時婚約者だったご令嬢と結婚。翌年には懐妊の報せが国中に渡り、子の誕生に国中が祝い寿いだ。
クリスティーナはその吉報を隣国で受け取り、「解禁だー!」と雄叫び(?)を上げて思う存分羽を羽ばたかせて学びまくり、調子に乗ったついでに博士号まで取得した。
特定の薬草の入手ルートを確保して、領地への還元方法を根回しして整え、運用し出した矢先の王妃打診であった。
まさに寝耳に水。青天の霹靂。
これが健康優良児が目を剥いて倒れた顛末である。
その中で唯一変わり者の次女であり末っ子でもあるクリスティーナは、幼い頃急に鏡に映った自分を見て青ざめて呟いた。
「ktkr、異世界転生……?!」
「何ですって?お嬢様……?」
様子の変わった彼女に心配そうな目を向ける使用人を押しのけて、クリスティーナは1人部屋に篭る。
心配した家族が翌日クリスティーナの部屋に様子を見にくると、彼女は意を決したかのように拳を握り込んで言い放った。
「私、前世を思い出しましたの!異世界転生ですの。宿命(お約束)に抗う為、今世では慎ましく、目立たずをモットーに生きますわ!」
それを聞いた両親と兄姉は呆気に取られ……
「お医者様を呼んでちょうだいっ!クリスティーナが病気よっ!!」
「あぁ、風邪なんてなかなか引かないものにかかったのか……」
「何か変なもの食べたのではなくて?あれほどお庭の花壇には入るなって言ったのに」
「医者は頭の方も診れる方にしなさい」
口々に何か言いつつ、クリスティーナをベッドへ押し込めようとした。
── そして数時間掛け、医者や何やという騒ぎも落ち着き、信じ難いが前世を思い出したクリスティーナの言葉をほんの少し信じることにした家族は、それとは別に彼女が語る“今後の計画”に眉を顰めた。
「私、結婚はせずに領地のためになる事に身を捧げますわ!」
「馬鹿言うんじゃありません」
当然の如くまずは一蹴されたが、クリスティーナが社交の第一歩である母と姉と一緒にお茶会、王家のお茶会を始めとした交流会を悉く欠席し、図書室に引きこもる事で13歳を超えたあたりで「好きにしなさい」と父が諦めた。
と言うのも、姉が公爵家に嫁ぐ事が決まり、兄が貿易港を持つ領地の伯爵令嬢と婚約した事で、そこまでの政略を必要としなかったことも大きかった。それに末っ子が可愛いと言う気持ちもちょっぴりあったのかもしれない。
その内協力するようになり、のらりくらりと婚約の打診を躱し続けること数年。薬学を熱心に学んでいるかと思うと、社交デビューである15歳になると、
「あ、学術院の試験あるからパスで」
と軽ぅーい言葉で断って隣国の名高い学術院にあれよあれよと言う間に合格して旅立って行った。
クリスティーナが国外留学中に王太子殿下がその時婚約者だったご令嬢と結婚。翌年には懐妊の報せが国中に渡り、子の誕生に国中が祝い寿いだ。
クリスティーナはその吉報を隣国で受け取り、「解禁だー!」と雄叫び(?)を上げて思う存分羽を羽ばたかせて学びまくり、調子に乗ったついでに博士号まで取得した。
特定の薬草の入手ルートを確保して、領地への還元方法を根回しして整え、運用し出した矢先の王妃打診であった。
まさに寝耳に水。青天の霹靂。
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