転生令嬢の危機回避術の結果について。

ユウキ

文字の大きさ
上 下
1 / 63

1.

しおりを挟む
── 王妃様が儚くなられた ──


その一報が流れたのは、ある雪の降る日の事だった。


それから数日後、雪がちらつく中王妃の葬儀を執り行われた。


王妃を慈しんでいた国王は、王妃の亡骸が収められた棺を憂いをたたえた瞳で見つめ、1歳になったばかりの王女は黒いベールを頭かけ乳母に抱かれながら国葬に参列された。

国民も悲しみに沈み、街中の至る所に喪に服す事を示す黒い布や簡素なリボンが飾られた。


そんな悲しみに沈む1年が過ぎ、喪が明けてまた1年程過ぎた頃、ある貴族女性の元に国の貴族なら誰もが知る印が押された書簡が届く。


寝耳に水とばかりにその書簡を震える手で受け取り、恐る恐る開けた中に書かれた長すぎる文を要約した彼女は…………


令嬢にあるまじきことに、綺麗に白目を剥いて卒倒したのだった。


自他ともの認めるほど身体の丈夫さがウリだと豪語していた彼女が目を剥いて倒れ、慌てた周囲の者が取り乱しながら駆け寄る中、彼女の幼い頃から家に仕えていた初老の執事は、彼女の手から滑り落ちていた書簡を丁寧な手つきで拾い上げる。

緊急事態とばかりに慌てる使用人に少々眉を顰めながらも、拾い上げた書簡の内容が偶然目に入りこんできてしまった彼は、得意の速読スキルのせいで一瞬で読み切ってしまう。


そして次の瞬間、顔を青くする。


「……こ、これは、たたたた大変でっ」


常に冷静でスマートな身のこなしの執事が泡を食っているのにも気づかない周囲は、勿論その後彼が足をもつれさせながらも走り去る事にも気づかなかった。


「だんんんなさまぁぁぁぁ!大変でございますっ!!!」



[ 貴女は次の王妃として選出された ]




つまり、そういう事が書かれていたのだった。






───────────────

<後書き>

長いタイトルへのパッションはまだ冷めやらないので、突然変更する可能性あります(笑

しおりを挟む
感想 97

あなたにおすすめの小説

巻き戻ったから切れてみた

こもろう
恋愛
昔からの恋人を隠していた婚約者に断罪された私。気がついたら巻き戻っていたからブチ切れた! 軽~く読み飛ばし推奨です。

余命1年の侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
余命を宣告されたその日に、主人に離婚を言い渡されました

もう終わってますわ

こもろう
恋愛
聖女ローラとばかり親しく付き合うの婚約者メルヴィン王子。 爪弾きにされた令嬢エメラインは覚悟を決めて立ち上がる。

愛など初めからありませんが。

ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。 お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。 「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」 「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」 「……何を言っている?」 仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに? ✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
マーベル子爵とサブル侯爵の手から逃げていたイリヤは、なぜか悪女とか毒婦とか呼ばれるようになっていた。そのため、なかなか仕事も決まらない。運よく見つけた求人は家庭教師であるが、仕事先は王城である。 嬉々として王城を訪れると、本当の仕事は聖女の母親役とのこと。一か月前に聖女召喚の儀で召喚された聖女は、生後半年の赤ん坊であり、宰相クライブの養女となっていた。 イリヤは聖女マリアンヌの母親になるためクライブと(契約)結婚をしたが、結婚したその日の夜、彼はイリヤの身体を求めてきて――。 娘の聖女マリアンヌを立派な淑女に育てあげる使命に燃えている契約母イリヤと、そんな彼女が気になっている毒舌宰相クライブのちょっとずれている(契約)結婚、そして聖女マリアンヌの成長の物語。

処理中です...