別に要りませんけど?

ユウキ

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サイドストーリー・レブンズ伯爵家前日譚

そして伯爵当主は腹を決める!

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「そこまで仰られては、私から否やは言えませんね」
「そうか!良かった!では早速書面を取り交わそうっ」
「えっ閣下、それは幾らなんでも早いのでは」
「何を言う、気がかわらぬうちに……ではなく、良い契約は早々に結ぶべきであろう?」


 おい、本音出てるぞ侯爵よ。
 ボンボンに相当悩まされているんだなオマエ。


「では、明日諸々を持って伺おう。ではっ!」
「いや、閣下っっ」


 ちょっと待てっって!逃げ足半端ねーー!
 呆然と後ろ姿を見つめていると、ぽんっと肩を叩かれた。
 叩いたのは昔からの腐れ縁、大商会の現会長だ。


「レイブンの旦那、やられたねぇ」
「くそ、まぁ有益な条件だったし…」
「あーぁ、嬢ちゃん貰おうと思ってたのに、相手が侯爵じゃねぇ」
「お前、幾つやねん。同い年のオッサンにやる訳ないやろが」
「え~、今は“枯れ専”って言うのもあってやねぇ」
「娘が枯れ専とか無いし、させんし。おふざけは無駄に若々しい顔面だけにしとけよ」
「あ~パパこわっ。冗談はさて置き、あの侯爵さん、旦那の行く夜会を探ってたらしいよ?今日は狙い撃ちで、招待状ぶん取って来たらしいね」
「何やそれ、ワシ知らんぞその情報」
「ふふふ~。隠してたからねぇ」
「は?」
「面白そうやなと思うて。ドンピシャやったね」
「おまっっ!覚えとけよっ」


****

 翌日侯爵は午前十時にやって来よった。

 先ぶれがあったとは言え、夜会翌日で早いお出ましに半目で応対したのは仕方ない話やろう。

 侯爵はあっという間に契約書諸々を持って来よった。揃いすぎなのは腐れ縁のあの野郎が言っていた「狙って」いたからなんだろう。


「はぁ、こんだけ好条件で有れば。本当に良いんですね?」
「勿論。私としてはどちらの娘さんでも構わない。契約は締結。相手は後日顔合わせで決定で良い。婚姻は一ヶ月半後で」
「分かりました」


 ここまで揃えられてサインとハンコのみと来たら、頷く以外に何ができたのか。

 すまん、娘よ。お前らは強い。きっとその切れ味で乗り切ってくれると信じている。

 さぁ、諦めてこの忌々しい、政略結婚の書類にサインと、家紋の判を押そうではないかっ!
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