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サイドストーリー・妹の冒険
父との対面
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「……うむ。何故か三日前にエイダンからの報告書が“普通便”で届いた。
今更お前がどこに行ってたかは聞かん。ロザリアがちゃーんと結婚したしな。なんやマルコからも、“良い広告塔ぶりでした”って、なんや分からん報告も来とるし。まぁ、ちぃとばかり罰は必要とは思うがな」
「さいですか。勝手しましたし、甘んじて受けます。ごめんなさい、お父様」
「うむ。───で?嫁入り危機から一抜けて、婿を連れて帰ってくるとは、流石のワシでも予想つかんぞ」
「仰る通りで。私もですわ」
「ご丁寧に釣書も頂いたし、あちらの陛下のプライベートなお手紙もある状態で、お前、ワシに何を言えと言いたいの?」
父は呆れた顔を隠しもせず、私に向ける。
私達と父の間にあるテーブルには、その二通が並べられている。
「…………えっと。そのプライベートなお手紙は私も知らんかったというかー…?」
伯爵邸に着いて出迎えた執事に渡した二通が、まさかの釣書と陛下からのお手紙なんて、わかるわけないやろ~(泣
「はぁ、しゃーない。ヨシュアルト君」
「はいっ」
「婚約期間は一年。その間に色々見させてもらおう」
「ありがとうございます!下働きでも何でもお受けいたします、お義父様!」
「お父様、認めんの?!」
「逆に聞くけど、断れる隙がどっかにあるか?」
「うぐぅっっ」
父は机を指さして、ジト目を向けてきよった。
「ヨシュアルト君。皆、言葉も荒いしキツいと思うけど、気張ってくれ。部屋は一応客間を用意させる。寮もあるけど、都合がいい方を選んでくれてええ」
「ご配慮感謝いたします。取り敢えずお言葉に甘えて客間を利用させていただきますっ」
「展開が早いっっ、突っ込む隙もないっ!」
「あっちの王様に返事書かなあかんよなー」
「あ、それでしたらあのワインの葡萄で作られたジュースを、お酒にあまり強くない王妃様に。陛下には今年の出来立てを、記念品扱いで一緒に送ると言うのは如何でしょうか?」
「ああ、それは良いな。そうしよか」
和気藹々と話し始めた二人に、私は力なく肘掛けへと項垂れたのだった。
逃げたはずが捕まり、家族どころか商会の皆からも祝福されて結婚式をあげるのは、そう遠くない未来である。
今更お前がどこに行ってたかは聞かん。ロザリアがちゃーんと結婚したしな。なんやマルコからも、“良い広告塔ぶりでした”って、なんや分からん報告も来とるし。まぁ、ちぃとばかり罰は必要とは思うがな」
「さいですか。勝手しましたし、甘んじて受けます。ごめんなさい、お父様」
「うむ。───で?嫁入り危機から一抜けて、婿を連れて帰ってくるとは、流石のワシでも予想つかんぞ」
「仰る通りで。私もですわ」
「ご丁寧に釣書も頂いたし、あちらの陛下のプライベートなお手紙もある状態で、お前、ワシに何を言えと言いたいの?」
父は呆れた顔を隠しもせず、私に向ける。
私達と父の間にあるテーブルには、その二通が並べられている。
「…………えっと。そのプライベートなお手紙は私も知らんかったというかー…?」
伯爵邸に着いて出迎えた執事に渡した二通が、まさかの釣書と陛下からのお手紙なんて、わかるわけないやろ~(泣
「はぁ、しゃーない。ヨシュアルト君」
「はいっ」
「婚約期間は一年。その間に色々見させてもらおう」
「ありがとうございます!下働きでも何でもお受けいたします、お義父様!」
「お父様、認めんの?!」
「逆に聞くけど、断れる隙がどっかにあるか?」
「うぐぅっっ」
父は机を指さして、ジト目を向けてきよった。
「ヨシュアルト君。皆、言葉も荒いしキツいと思うけど、気張ってくれ。部屋は一応客間を用意させる。寮もあるけど、都合がいい方を選んでくれてええ」
「ご配慮感謝いたします。取り敢えずお言葉に甘えて客間を利用させていただきますっ」
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「ああ、それは良いな。そうしよか」
和気藹々と話し始めた二人に、私は力なく肘掛けへと項垂れたのだった。
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