別に要りませんけど?

ユウキ

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サイドストーリー・妹の冒険

腹を決めたら早い人

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 呆然としながらも心の中で絶叫していると、マルコさんが「ホッホ」と笑って静かに席を立って部屋を出ようとする。


「マルコさんっ!何で無言で出ていくん?!」
「お嬢、これは馬に蹴られてしまう案件ですわ。食べ物と恋の恨みはしつこいですからね。被る前に撤退が私めの教訓ですわ。ほな、仕事戻りますね。お気張りやす」


 ヒラリヒラリと捕まえようとする私の手を掻い潜ると、マルコさんは部屋からそそくさと出て行った。


「そんな……」
「悲観なさらないでください、ジゼル嬢。私、とてもいい物件だと思いますよ?」
「は??」

「まず商売に必要な読み書き計算ができ、基本マナーと帳簿付け、3ヶ国語を習得。スケジュール管理や身の回りのある程度の準備も可能。一時期軍にも所属しておりましたので、野営も経験済み。あの方に付いていただけあり、忍耐力と交渉術、各種根回しには自信があります」

「…………た、たしかにお得な上に即戦力間違いなしやね」

「身分は元々次男ですしどうなろうと気に致しません。という事で、人生を一緒に致しましょう」
「『ということで』の後が、壮大過ぎるわぁっっっ!」

「では一先ず、ご実家までご一緒で如何でしょう?」
「それくらいならっ── て頷きそうになるけど、あかんあかんっ」
「ご安心ください。頷いていただけるまで、今よりお側を離れませんので」
「何か来るだけにしては大荷物と思ったら、それ、お泊まりグッズ?!!」
「ジゼル嬢、お慕いしております。是非結婚してください!」
「いや、ちょっっっ回り込んでくるなや!手を握るなっ!」


 そして従僕さん改め“ヨシュー”は、宣言通りに四六時中私に張り付き、逃げ出そうにも逃げ出せず……

 実家行きの商隊に相乗りして、伯爵家に戻ってきてしまった。

 そうして現在私は、伯爵邸応接室に挨拶を一通り済ませ、父の向いにヨシューと並んで座っている。
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