別に要りませんけど?

ユウキ

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サイドストーリー・妹の冒険

言質は大切に。

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「不敬かもしれませんが、殿下。お話ししても宜しいでしょうか?」
「……良い。許可しよう。話してみろ」


 よっしゃ、言質とったぞ!と、内心でニンマリ笑った私は、一つ咳払いをして姿勢を正した。


「私共は、生活する為のお金を稼ぐために、自分に割り当てられた仕事を、日々こなしておりますの。
 その仕事を放り出して、殿下の“お話相手”に時間を使うことなど出来ませんわ。
 そんな事をしてしまえば、誰が放り投げた仕事をこなしますの?」
「……他に人はいくらでも居るだろう?其奴らにやらせれば良い」

「ええ、従業員はそれなりにおります。しかし、他の従業員にもそれぞれ別の仕事があります」
「……それなら新しく雇えば良いだろう。人は幾らでも居る」

「…………お話になりませんわね」
「なんだ、間違っていないだろう?!」

「あのねぇ、王宮と違って、商会の従業員は平民や。ある程度の躾とノウハウを叩き込まれて居るお貴族様じゃないんよ?
『新しく雇えば』って簡単に言いますけどねぇ、勉強も躾もしてない小さな子供を連れてきて、侍女や騎士の制服着せて、さぁやれ!って言うのと一緒や」


 あーーーー。堪えとったのにー。
 ここまで来たらしゃーないっ!開き直ろ。言質あるしっ


「この国の識字率は良くて三割。運良くええ子を採用できても、そこから店のやり方を教え込んでも齧り付いてモノに出来るのは、半分おったらええ方や。賢い子やったら最低限こなせるようになるのは凄く早くて半年。まぁまぁ見れるのは一年はかかるわ。
 ……ほんで?あんたのお話相手?毎日?その間代わりに仕事させる人の賃金、ウチが負担とかほざいちゃいます??アハっ…ねぇ、本気で言ってんの?」


 装備した微笑みを消して、据わった目、低い声で凄むようにそう言えば、顔色の悪くなったエディオンは、ソファーの背面に背をくっつけて口元を戦慄かせている。青い顔した従僕さんは、警護で室内に居た騎士さんに、留まるように指示した。


「お、お前っそれが本性か?!」
「そーですけど?」
「ふ、ふけ」
「不敬を許可したのは、其方でしたよね?」
「っく、もう良い、下がれっ!二度と来るな!」
「ええ、ご命令承ります。しかし、レブンズ商会は関係ない事です。そこの所、お間違いなきよう」


 わざと釘を刺した私に、予想通りニヤリと嫌な笑みを浮かべたエディオンは、腕を組んで鼻を鳴らす。
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