別に要りませんけど?

ユウキ

文字の大きさ
上 下
28 / 41
サイドストーリー・妹の冒険

言質は大切に。

しおりを挟む
「不敬かもしれませんが、殿下。お話ししても宜しいでしょうか?」
「……良い。許可しよう。話してみろ」


 よっしゃ、言質とったぞ!と、内心でニンマリ笑った私は、一つ咳払いをして姿勢を正した。


「私共は、生活する為のお金を稼ぐために、自分に割り当てられた仕事を、日々こなしておりますの。
 その仕事を放り出して、殿下の“お話相手”に時間を使うことなど出来ませんわ。
 そんな事をしてしまえば、誰が放り投げた仕事をこなしますの?」
「……他に人はいくらでも居るだろう?其奴らにやらせれば良い」

「ええ、従業員はそれなりにおります。しかし、他の従業員にもそれぞれ別の仕事があります」
「……それなら新しく雇えば良いだろう。人は幾らでも居る」

「…………お話になりませんわね」
「なんだ、間違っていないだろう?!」

「あのねぇ、王宮と違って、商会の従業員は平民や。ある程度の躾とノウハウを叩き込まれて居るお貴族様じゃないんよ?
『新しく雇えば』って簡単に言いますけどねぇ、勉強も躾もしてない小さな子供を連れてきて、侍女や騎士の制服着せて、さぁやれ!って言うのと一緒や」


 あーーーー。堪えとったのにー。
 ここまで来たらしゃーないっ!開き直ろ。言質あるしっ


「この国の識字率は良くて三割。運良くええ子を採用できても、そこから店のやり方を教え込んでも齧り付いてモノに出来るのは、半分おったらええ方や。賢い子やったら最低限こなせるようになるのは凄く早くて半年。まぁまぁ見れるのは一年はかかるわ。
 ……ほんで?あんたのお話相手?毎日?その間代わりに仕事させる人の賃金、ウチが負担とかほざいちゃいます??アハっ…ねぇ、本気で言ってんの?」


 装備した微笑みを消して、据わった目、低い声で凄むようにそう言えば、顔色の悪くなったエディオンは、ソファーの背面に背をくっつけて口元を戦慄かせている。青い顔した従僕さんは、警護で室内に居た騎士さんに、留まるように指示した。


「お、お前っそれが本性か?!」
「そーですけど?」
「ふ、ふけ」
「不敬を許可したのは、其方でしたよね?」
「っく、もう良い、下がれっ!二度と来るな!」
「ええ、ご命令承ります。しかし、レブンズ商会は関係ない事です。そこの所、お間違いなきよう」


 わざと釘を刺した私に、予想通りニヤリと嫌な笑みを浮かべたエディオンは、腕を組んで鼻を鳴らす。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

【完結】二度目の恋はもう諦めたくない。

たろ
恋愛
セレンは15歳の時に16歳のスティーブ・ロセスと結婚した。いわゆる政略的な結婚で、幼馴染でいつも喧嘩ばかりの二人は歩み寄りもなく一年で離縁した。 その一年間をなかったものにするため、お互い全く別のところへ移り住んだ。 スティーブはアルク国に留学してしまった。 セレンは国の文官の試験を受けて働くことになった。配属は何故か騎士団の事務員。 本人は全く気がついていないが騎士団員の間では 『可愛い子兎』と呼ばれ、何かと理由をつけては事務室にみんな足を運ぶこととなる。 そんな騎士団に入隊してきたのが、スティーブ。 お互い結婚していたことはなかったことにしようと、話すこともなく目も合わせないで過ごした。 本当はお互い好き合っているのに素直になれない二人。 そして、少しずつお互いの誤解が解けてもう一度…… 始めの数話は幼い頃の出会い。 そして結婚1年間の話。 再会と続きます。

【完結】婚約破棄した王子と男爵令嬢のその後……は幸せ?……な訳ない!

たろ
恋愛
「エリザベス、君との婚約を破棄する」 「どうしてそんな事を言うのですか?わたしが何をしたと言うのでしょう」 「君は僕の愛するイライザに対して嫌がらせをしただろう、そんな意地の悪い君のことは愛せないし結婚など出来ない」 「……愛せない……わかりました。殿下……の言葉を……受け入れます」 なんで君がそんな悲しそうな顔をするんだ? この話は婚約破棄をして、父親である陛下に嘘で固めて公爵令嬢のエリザベスを貶めたと怒られて 「そんなにその男爵令嬢が好きなら王族をやめて男爵に婿に行け」と言われ、廃嫡される王子のその後のお話です。 頭脳明晰、眉目秀麗、みんなが振り向くかっこいい殿下……なのにエリザベスの前では残念な男。 ★軽い感じのお話です そして、殿下がひたすら残念です 広ーい気持ちで読んでいただけたらと思います

「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。

海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。 アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。 しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。 「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」 聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。 ※本編は全7話で完結します。 ※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。

[完結] 私を嫌いな婚約者は交代します

シマ
恋愛
私、ハリエットには婚約者がいる。初めての顔合わせの時に暴言を吐いた婚約者のクロード様。 両親から叱られていたが、彼は反省なんてしていなかった。 その後の交流には不参加もしくは当日のキャンセル。繰り返される不誠実な態度に、もう我慢の限界です。婚約者を交代させて頂きます。

【完結】彼の瞳に映るのは  

たろ
恋愛
 今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。  優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。  そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。  わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。 ★ 短編から長編へ変更しました。

婚約破棄のその後に

ゆーぞー
恋愛
「ライラ、婚約は破棄させてもらおう」 来月結婚するはずだった婚約者のレナード・アイザックス様に王宮の夜会で言われてしまった。しかもレナード様の隣には侯爵家のご令嬢メリア・リオンヌ様。 「あなた程度の人が彼と結婚できると本気で考えていたの?」 一方的に言われ混乱している最中、王妃様が現れて。 見たことも聞いたこともない人と結婚することになってしまった。

【完結】白い結婚成立まであと1カ月……なのに、急に家に帰ってきた旦那様の溺愛が止まりません!?

氷雨そら
恋愛
3年間放置された妻、カティリアは白い結婚を宣言し、この結婚を無効にしようと決意していた。 しかし白い結婚が認められる3年を目前にして戦地から帰ってきた夫は彼女を溺愛しはじめて……。 夫は妻が大好き。勘違いすれ違いからの溺愛物語。 小説家なろうにも投稿中

元王妃は時間をさかのぼったため、今度は愛してもらえる様に、(殿下は論外)頑張るらしい。

あはははは
恋愛
本日わたくし、ユリア アーベントロートは、処刑されるそうです。 願わくは、来世は愛されて生きてみたいですね。 王妃になるために生まれ、王妃になるための血を吐くような教育にも耐えた、ユリアの真意はなんであっただろう。 わあああぁ  人々の歓声が上がる。そして王は言った。 「皆の者、悪女 ユリア アーベントロートは、処刑された!」 誰も知らない。知っていても誰も理解しない。しようとしない。彼女、ユリアの最後の言葉を。 「わたくしはただ、愛されたかっただけなのです。愛されたいと、思うことは、罪なのですか?愛されているのを見て、うらやましいと思うことは、いけないのですか?」 彼女が求めていたのは、権力でも地位でもなかった。彼女が本当に欲しかったのは、愛だった。

処理中です...