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待ち構えますわっ
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数日後、オーウェンからのお伺いのお手紙がお父様へと届けられた。
指定された日の当日、私は婚約に関する条件などを取り交わす前にオーウェンを捕まえるつもりで、早くから玄関で待った。
「お嬢様、先触れが来てからでも……」
もっともなツッコミをシェリに入れられても、私は動かずに、その場でブツブツと言葉を口の中で転がして玄関扉を睨みつける。
背後で通りかかったお父様とお母様が、変な目で見ていたけれど、それも無視したわ。
さ、奴が来るまでに集中して、シェリの見本を思い出しつつおさらいするのよっ!
アレよね、こう……腕をしどけない感じで組んで。
片方の足を引いて、重心をかけて斜めな感じ。
顎はツーーーンっと上向きに。
……こうかしら?クィっと……クィ?
セリフは、えっっと…………
「─ う様、お嬢様!!」
「っっは!何?」
「ご機嫌様。玄関先で私の出迎えかな?それにしても変わった出迎えだな」
「っオーウェン?!いつの間に!!先触れは?!」
「既に来ました」と、シェリがこそっと背後から教えてくれる。しまった、熱中しすぎて周りが目に入っていなかったみたい。
「どうやら妃教育で変わった教育を施された様だな」
「違うわよっ!── 失礼いたしました。ご機嫌様、デイモアール辺境伯オーウェン様。お見苦しい所をお見せ致しましたわ。バーミライト侯爵が娘、アデレイズがご挨拶申し上げます」
これまた売り言葉に買い言葉で、厳しい妃教育で叩き込まれた礼を涼しい顔で披露してやった。
「ほぉ、通常の礼もできるのだな。昔と変わらず足癖が悪いままかと思ったよ」
「~っ、おほほ、またその様に小さい頃のことなど忘れましたわ。まぁっ!私ったらこんな所でお引き止めして…さぁ応接間にご案内いたしますわ」
悪戯っぽい笑顔を浮かべるオーウェンに、はらわた煮え繰り返る思いだけれど、グッと堪えて“成長した淑女な私”を見せつけてやることにした。
“傲慢でワガママな私”は、これから存分に見せればいいわよね?見てなさいよぉぉぉ!
指定された日の当日、私は婚約に関する条件などを取り交わす前にオーウェンを捕まえるつもりで、早くから玄関で待った。
「お嬢様、先触れが来てからでも……」
もっともなツッコミをシェリに入れられても、私は動かずに、その場でブツブツと言葉を口の中で転がして玄関扉を睨みつける。
背後で通りかかったお父様とお母様が、変な目で見ていたけれど、それも無視したわ。
さ、奴が来るまでに集中して、シェリの見本を思い出しつつおさらいするのよっ!
アレよね、こう……腕をしどけない感じで組んで。
片方の足を引いて、重心をかけて斜めな感じ。
顎はツーーーンっと上向きに。
……こうかしら?クィっと……クィ?
セリフは、えっっと…………
「─ う様、お嬢様!!」
「っっは!何?」
「ご機嫌様。玄関先で私の出迎えかな?それにしても変わった出迎えだな」
「っオーウェン?!いつの間に!!先触れは?!」
「既に来ました」と、シェリがこそっと背後から教えてくれる。しまった、熱中しすぎて周りが目に入っていなかったみたい。
「どうやら妃教育で変わった教育を施された様だな」
「違うわよっ!── 失礼いたしました。ご機嫌様、デイモアール辺境伯オーウェン様。お見苦しい所をお見せ致しましたわ。バーミライト侯爵が娘、アデレイズがご挨拶申し上げます」
これまた売り言葉に買い言葉で、厳しい妃教育で叩き込まれた礼を涼しい顔で披露してやった。
「ほぉ、通常の礼もできるのだな。昔と変わらず足癖が悪いままかと思ったよ」
「~っ、おほほ、またその様に小さい頃のことなど忘れましたわ。まぁっ!私ったらこんな所でお引き止めして…さぁ応接間にご案内いたしますわ」
悪戯っぽい笑顔を浮かべるオーウェンに、はらわた煮え繰り返る思いだけれど、グッと堪えて“成長した淑女な私”を見せつけてやることにした。
“傲慢でワガママな私”は、これから存分に見せればいいわよね?見てなさいよぉぉぉ!
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