上 下
19 / 59

待ち構えますわっ

しおりを挟む
数日後、オーウェンからのお伺いのお手紙がお父様へと届けられた。

指定された日の当日、私は婚約に関する条件などを取り交わす前にオーウェンを捕まえるつもりで、早くから玄関で待った。


「お嬢様、先触れが来てからでも……」


もっともなツッコミをシェリに入れられても、私は動かずに、その場でブツブツと言葉を口の中で転がして玄関扉を睨みつける。

背後で通りかかったお父様とお母様が、変な目で見ていたけれど、それも無視したわ。


さ、奴が来るまでに集中して、シェリの見本を思い出しつつおさらいするのよっ!


アレよね、こう……腕をしどけない感じで組んで。
 片方の足を引いて、重心をかけて斜めな感じ。
   顎はツーーーンっと上向きに。
     ……こうかしら?クィっと……クィ?
      セリフは、えっっと…………


「─ う様、お嬢様!!」

「っっは!何?」

「ご機嫌様。玄関先で私の出迎えかな?それにしても変わった出迎えだな」

「っオーウェン?!いつの間に!!先触れは?!」


「既に来ました」と、シェリがこそっと背後から教えてくれる。しまった、熱中しすぎて周りが目に入っていなかったみたい。


「どうやら妃教育で変わった教育を施された様だな」

「違うわよっ!── 失礼いたしました。ご機嫌様、デイモアール辺境伯オーウェン様。お見苦しい所をお見せ致しましたわ。バーミライト侯爵が娘、アデレイズがご挨拶申し上げます」


これまた売り言葉に買い言葉で、厳しい妃教育で叩き込まれた礼を涼しい顔で披露してやった。


「ほぉ、通常の礼もできるのだな。昔と変わらず足癖が悪いままかと思ったよ」

「~っ、おほほ、またその様に小さい頃のことなど忘れましたわ。まぁっ!私ったらこんな所でお引き止めして…さぁ応接間にご案内いたしますわ」


悪戯っぽい笑顔を浮かべるオーウェンに、はらわた煮え繰り返る思いだけれど、グッと堪えて“成長した淑女な私”を見せつけてやることにした。
“傲慢でワガママな私”は、これから存分に見せればいいわよね?見てなさいよぉぉぉ!
しおりを挟む
感想 157

あなたにおすすめの小説

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

役立たずの私はいなくなります。どうぞお幸せに

Na20
恋愛
夫にも息子にも義母にも役立たずと言われる私。 それなら私はいなくなってもいいですよね? どうぞみなさんお幸せに。

貧乏伯爵令嬢は従姉に代わって公爵令嬢として結婚します。

しゃーりん
恋愛
貧乏伯爵令嬢ソレーユは伯父であるタフレット公爵の温情により、公爵家から学園に通っていた。 ソレーユは結婚を諦めて王宮で侍女になるために学園を卒業することは必須であった。 同い年の従姉であるローザリンデは、王宮で侍女になるよりも公爵家に嫁ぐ自分の侍女になればいいと嫌がらせのように侍女の仕事を与えようとする。 しかし、家族や人前では従妹に優しい令嬢を演じているため、横暴なことはしてこなかった。 だが、侍女になるつもりのソレーユに王太子の側妃になる話が上がったことを知ったローザリンデは自分よりも上の立場になるソレーユが許せなくて。 立場を入れ替えようと画策したローザリンデよりソレーユの方が幸せになるお話です。

拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様

オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。

【完結】堅物な婚約者には子どもがいました……人は見かけによらないらしいです。

大森 樹
恋愛
【短編】 公爵家の一人娘、アメリアはある日誘拐された。 「アメリア様、ご無事ですか!」 真面目で堅物な騎士フィンに助けられ、アメリアは彼に恋をした。 助けたお礼として『結婚』することになった二人。フィンにとっては公爵家の爵位目当ての愛のない結婚だったはずだが……真面目で誠実な彼は、アメリアと不器用ながらも徐々に距離を縮めていく。 穏やかで幸せな結婚ができると思っていたのに、フィンの前の彼女が現れて『あの人の子どもがいます』と言ってきた。嘘だと思いきや、その子は本当に彼そっくりで…… あの堅物婚約者に、まさか子どもがいるなんて。人は見かけによらないらしい。 ★アメリアとフィンは結婚するのか、しないのか……二人の恋の行方をお楽しみください。

私、女王にならなくてもいいの?

gacchi
恋愛
他国との戦争が続く中、女王になるために頑張っていたシルヴィア。16歳になる直前に父親である国王に告げられます。「お前の結婚相手が決まったよ。」「王配を決めたのですか?」「お前は女王にならないよ。」え?じゃあ、停戦のための政略結婚?え?どうしてあなたが結婚相手なの?5/9完結しました。ありがとうございました。

【完結】護衛騎士と令嬢の恋物語は美しい・・・傍から見ている分には

月白ヤトヒコ
恋愛
没落寸前の伯爵令嬢が、成金商人に金で買われるように望まぬ婚約させられ、悲嘆に暮れていたとき、商人が雇った護衛騎士と許されない恋に落ちた。 令嬢は屋敷のみんなに応援され、ある日恋する護衛騎士がさる高位貴族の息子だと判明した。 愛で結ばれた令嬢と護衛騎士は、商人に婚約を解消してほしいと告げ―――― 婚約は解消となった。 物語のような展開。されど、物語のようにめでたしめでたしとはならなかった話。 視点は、成金の商人視点。 設定はふわっと。

根暗令嬢の華麗なる転身

しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」 ミューズは茶会が嫌いだった。 茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。 公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。 何不自由なく、暮らしていた。 家族からも愛されて育った。 それを壊したのは悪意ある言葉。 「あんな不細工な令嬢見たことない」 それなのに今回の茶会だけは断れなかった。 父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。 婚約者選びのものとして。 国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず… 応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*) ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。 同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。 立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。 一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。 描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。 ゆるりとお楽しみください。 こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。

処理中です...