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キレましたわ

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「はいはい、聞いておりますわよ。破棄ですか?喜んでお受けいたしますわ。諸手続きはそちらで速やかに行ってくださいませね?」

「またそのように虚勢を張って、本当に可愛げのない…。負け惜しみもそこまで来るといっそ哀れだな!」


王宮、それも多くの文官や騎士が行き交うホールの大階段で、まるで見せつけるように横に並んだ小柄な少女─あれが真実の愛のお相手のヘザーなる女性なのだろう─を胸に抱き寄せて、勝ち誇ったように階段の上から嘲笑とともに見下してくる、殿下。

なぜこんな場所かというと、私が奴の婚約者だから。仕事に明け暮れていた私を捕まえるのに都合が良かったのだろう。

しかし、いかんせん通行の邪魔である。


── いや、そもそも私、殊勝なタイプでも何でもないから。どっちかっていうと、すぐ「ぺチーン」しちゃうくらいだし。

だからイラッとして、寝不足も相まって言語フィルターが滞った頭でつい口に出してしまった。


「負け惜しみって何なんですか?私、殿下を慕ってたとか、そんな勘違いされてましたの?!ちゃんちゃらおかしいですわっ!全てにおいて良くて下の中、常に遊び呆け、散財しすぎで個人の私財も殆どない、残るは将来私を娶る事を条件で賜れる一代限りの爵位と顔立ちだけではありませんか!」

軽くキレた私は、溜め込みすぎた鬱憤が堰を切ったように流れ出して止まらなかった。

いやーもー、ホント、溜めすぎ良くないという例だわ。

でもこの暴露で、殿下の腕の中のヘザーはドン引きで擦り寄せていた顔を上げて離れようとしてるわよ。

金がないこと、知らなかったのかしら?


「なっ!不敬な!!」



怒りで真っ赤に顔を染めた殿下が叫んで、私を憎々しげに見つめた。
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