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サイドストーリー フレディ奮闘記
伯爵夫人①
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姉妹が旅立った後。
休暇をとっていた僕は、先程の馬車に乗り込み公爵家の屋敷へと戻った。
明日も早いしと、早々に寝支度を済ませると、夜も深まろうかという時間。邸内の騒がしさに気づいた。
暫くすると、ノック音が響いた。
入室の許可を出すと、困った顔をした執事が頭を下げる。
「おやすみ前に申し訳ございません。
ただ今、ジェライト伯爵夫人がお見えで……」
「今?追い返せないのか?」
「そうしようと思ったのですが、なにぶん『私のアディを誑かして連れ込んで、婚約しないうちでは困る』と叫んでおられまして」
「はぁ。まぁ仕方ない、出るか」
「申し訳ございません」
厚手のガウンを羽織り、階下へと降りるとジェライト伯爵夫人が白いファーコートに身を包んで待っていた。
「何用ですか。こんな夜も遅い時間に」
「シューコット様!アディはどちらです?!」
「……何故ここに居るとお思いなのですか?」
勢いつけ近寄ろうとした伯爵夫人を、使用人が間に入って止める。
「ちょっと、邪魔しないでよ失礼ね!」
「非常識な時間に先ぶれもなく訪れた貴女如きに、我が公爵家の者が叱責を受ける謂れはございませんが……で?ご用件は?」
「そ、それはアディを返していただこうとっ!貴方だって婚約もしていない女性を連れ込んで帰さないなんて、非常識なのはそちらでしょう?!」
未だに使用人に阻まれながらも、手を大きく振って自分の主張を声高に喚く。これが伯爵夫人とは。
「おりませんが?」
端的に事実を述べた僕に、伯爵夫人凝視しながらビタリと動きを止める。
「えっっ、そんな嘘は……」
「嘘ではありません。何故私がアデライン嬢を?冗談や言いがかりはやめてください」
「だって何度もデートに誘っては、方々へ連れ出していたじゃありませんか!」
「いいえ、私は友人であるアマンダ嬢を誘いました。そこに一緒にアデライン嬢が来られただけであって、決してアデライン嬢を直接お誘いして2人だけで出かけたことはございませんよ?」
しかも途中からは誘わずとも、必ず付いてきていたしね。アマンダが嬉しそうにするから、未来の義妹と思って対応していたに過ぎないのだけど。
「そんな……じゃぁアデラインはどこへ行ったというのですか?!!」
「知りませんよ。この通り寝入り端ですから、知る由も無いですが」
しれっと嘘をついて見返すと、狼狽えた伯爵夫人は屋敷内の奥を目指そうと、使用人へと突撃する。
「アディ!いるんでしょ?!!どこー?!私が迎えにきたの!!出てきてぇ!!ねぇ、居るんでしょー!!離して、離しなさいよっ、アディを探さないとっ」
「 黙 れ 」
余りの煩さに一喝した。伯爵夫人どころか使用人すらもびくりと肩が跳ねている。君達じゃ無いから安心してね。
「貴様はここが誰の、どう言った爵位の屋敷で、誰の赦しや権利があって騒ぎ立てているんだ」
ここが娘をデートに連れ出した男の家ではなく、自分より遥か上の公爵家に乗り込んでいる事にやっと気付いたのか、顔色がスゥッと悪くなっていく。
「ぃえ、あのっ」
「アマンダ嬢と多少仲良くしていたので、今回は目溢ししてやるが……ジェライト伯爵に伝えてくれ。マナーも知らないご夫人が居るような貴方の家とは二度と関わらない事を」
「お、お待ちをっ!」
「お帰りだ。摘み出せ」
僕の指示に後ろに控えていた使用人、護衛が動き出して押し流すように伯爵夫人を屋敷から追い出していった。
「…君は望んでいないと思うけれど、少しは意趣返しになったかな」
休暇をとっていた僕は、先程の馬車に乗り込み公爵家の屋敷へと戻った。
明日も早いしと、早々に寝支度を済ませると、夜も深まろうかという時間。邸内の騒がしさに気づいた。
暫くすると、ノック音が響いた。
入室の許可を出すと、困った顔をした執事が頭を下げる。
「おやすみ前に申し訳ございません。
ただ今、ジェライト伯爵夫人がお見えで……」
「今?追い返せないのか?」
「そうしようと思ったのですが、なにぶん『私のアディを誑かして連れ込んで、婚約しないうちでは困る』と叫んでおられまして」
「はぁ。まぁ仕方ない、出るか」
「申し訳ございません」
厚手のガウンを羽織り、階下へと降りるとジェライト伯爵夫人が白いファーコートに身を包んで待っていた。
「何用ですか。こんな夜も遅い時間に」
「シューコット様!アディはどちらです?!」
「……何故ここに居るとお思いなのですか?」
勢いつけ近寄ろうとした伯爵夫人を、使用人が間に入って止める。
「ちょっと、邪魔しないでよ失礼ね!」
「非常識な時間に先ぶれもなく訪れた貴女如きに、我が公爵家の者が叱責を受ける謂れはございませんが……で?ご用件は?」
「そ、それはアディを返していただこうとっ!貴方だって婚約もしていない女性を連れ込んで帰さないなんて、非常識なのはそちらでしょう?!」
未だに使用人に阻まれながらも、手を大きく振って自分の主張を声高に喚く。これが伯爵夫人とは。
「おりませんが?」
端的に事実を述べた僕に、伯爵夫人凝視しながらビタリと動きを止める。
「えっっ、そんな嘘は……」
「嘘ではありません。何故私がアデライン嬢を?冗談や言いがかりはやめてください」
「だって何度もデートに誘っては、方々へ連れ出していたじゃありませんか!」
「いいえ、私は友人であるアマンダ嬢を誘いました。そこに一緒にアデライン嬢が来られただけであって、決してアデライン嬢を直接お誘いして2人だけで出かけたことはございませんよ?」
しかも途中からは誘わずとも、必ず付いてきていたしね。アマンダが嬉しそうにするから、未来の義妹と思って対応していたに過ぎないのだけど。
「そんな……じゃぁアデラインはどこへ行ったというのですか?!!」
「知りませんよ。この通り寝入り端ですから、知る由も無いですが」
しれっと嘘をついて見返すと、狼狽えた伯爵夫人は屋敷内の奥を目指そうと、使用人へと突撃する。
「アディ!いるんでしょ?!!どこー?!私が迎えにきたの!!出てきてぇ!!ねぇ、居るんでしょー!!離して、離しなさいよっ、アディを探さないとっ」
「 黙 れ 」
余りの煩さに一喝した。伯爵夫人どころか使用人すらもびくりと肩が跳ねている。君達じゃ無いから安心してね。
「貴様はここが誰の、どう言った爵位の屋敷で、誰の赦しや権利があって騒ぎ立てているんだ」
ここが娘をデートに連れ出した男の家ではなく、自分より遥か上の公爵家に乗り込んでいる事にやっと気付いたのか、顔色がスゥッと悪くなっていく。
「ぃえ、あのっ」
「アマンダ嬢と多少仲良くしていたので、今回は目溢ししてやるが……ジェライト伯爵に伝えてくれ。マナーも知らないご夫人が居るような貴方の家とは二度と関わらない事を」
「お、お待ちをっ!」
「お帰りだ。摘み出せ」
僕の指示に後ろに控えていた使用人、護衛が動き出して押し流すように伯爵夫人を屋敷から追い出していった。
「…君は望んでいないと思うけれど、少しは意趣返しになったかな」
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