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サイドストーリー フレディ奮闘記
アマンダの結果
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翌月、いよいよ出奔実行日が近づき、アマンダが上司に内密に相談する事にした。
初出仕以来、その書類仕事の速さと資料作成能力が高く評価され、会議資料などを早々に任され、その出来の良さにアマンダを一番に奪取したベルガイト侯爵が鼻を高くしているとか。
偶々通った侍女が茶菓子や茶菓子を準備する部屋で、何度も叱られているらしい新人侍女の話を聞き、お茶の銘柄別散布図と、その入れ方を書いてまとめたバインダーを空いた時間に作って渡したら、泣いて喜んで感謝されたそうだ。
まさかそれが侍女長の目に留まって評価されて、今や王宮中のお茶準備室の壁に貼られるとは思っていなかったようだけど。
「感覚的な差異を、視覚的に説明して比較でき上に共有できるのが素晴らしいっ!」
とは、拳を握った侍女長の言だ。
とまぁ、方々で評価されているアマンダだ。きっと大丈夫。辞めさせられるわけがない。
わけがないのだが……
「先輩、その奥歯ギリギリ言わせるのと、悲壮感溢れる顔、どす黒いオーラ、なんとかなりませんか?」
「アマンダが心配でどうしようもないんだよ。走り出さないだけマシだと思ってくれ」
現在王宮内の食堂の奥の、植物で遮られた半個室のような場所でアデラインと共に結果を待っていた。
アデラインは“姉の面会”として登城していて、半日ほどの滞在が許されているが、僕と共にコツコツとテーブルを人差し指で弾くアデラインも、心境は似たようなものじゃないだろうか。
「先月アマンダが言っていたことを、実感する思いだよ。自分より親しい人が舞台に立つと、おかしなくらい緊張するって」
「え?お姉様が?」
「そう、君の試験がうまく行くと思っていても、心配で叫び出しそうな雰囲気だったよ」
「お姉様……♡」
「すまん、今はイラっとするからその顔引っ込めてくれるかな」
「っチ」
「今舌打ちしたか?おい」
ツーンとそっぽを向くアデラインに絡んでいると、眉間に皺を寄せたアマンダが食堂入り口から向かってきているのが見えた。
「アマンダ!」「お姉様!!」
被るように呼びかけて近寄ると、難しい顔をしたアマンダが、「まぁまぁ」と僕達を落ち着かせるように手をひらひらとさせた。元の席に戻り、席に座るとアマンダが結果を告げた。
「平民になった後、侯爵家の養女になるみたい」
「「 え??! 」」
驚く僕達に、事の顛末を教えてくれた。
「えっと、一旦貴族籍を抜く手続きをして、出奔。期間を3週間に伸ばして行き先は隣国。休暇ではなく半分以上が出張……帰ってきてから養子縁組の手続き」
「そうみたい。なんだか申し訳ないわ」
「でもこれでお姉様の分の旅費は、出張以外の宿泊費のみで良いと言うことになるのよね?」
「そうね、お陰で留まる場所をアップグレードできそうだわ」
「流石お姉様の上司ね!」
「そうか……ベルガイト侯爵家か……」
興奮する姉妹とは別に、僕はその幸運に胸が躍っていた。伯爵家から平民になってしまう彼女をどう説得してどこかの養子に入ってもらおうかと、説得方法を考えていたから。
いくら相手は誰でも良いと言われていても、低すぎたり、元貴族といえども平民となった相手を父や母、ましてや受け皿として見ている王家が許してくれないだろうと思っていたのだ。
「っっっつぅ!」
不意な痛みに、顔が歪む。
向かいの席で、アデラインが睨んでいるのが見えた。
ふん、何度でも踏みたまえ。
僕は今、光に照らされた幸福につながる道の上にいるのだから。些細な痛みなどっっ、っておい、しつこいぞっ
初出仕以来、その書類仕事の速さと資料作成能力が高く評価され、会議資料などを早々に任され、その出来の良さにアマンダを一番に奪取したベルガイト侯爵が鼻を高くしているとか。
偶々通った侍女が茶菓子や茶菓子を準備する部屋で、何度も叱られているらしい新人侍女の話を聞き、お茶の銘柄別散布図と、その入れ方を書いてまとめたバインダーを空いた時間に作って渡したら、泣いて喜んで感謝されたそうだ。
まさかそれが侍女長の目に留まって評価されて、今や王宮中のお茶準備室の壁に貼られるとは思っていなかったようだけど。
「感覚的な差異を、視覚的に説明して比較でき上に共有できるのが素晴らしいっ!」
とは、拳を握った侍女長の言だ。
とまぁ、方々で評価されているアマンダだ。きっと大丈夫。辞めさせられるわけがない。
わけがないのだが……
「先輩、その奥歯ギリギリ言わせるのと、悲壮感溢れる顔、どす黒いオーラ、なんとかなりませんか?」
「アマンダが心配でどうしようもないんだよ。走り出さないだけマシだと思ってくれ」
現在王宮内の食堂の奥の、植物で遮られた半個室のような場所でアデラインと共に結果を待っていた。
アデラインは“姉の面会”として登城していて、半日ほどの滞在が許されているが、僕と共にコツコツとテーブルを人差し指で弾くアデラインも、心境は似たようなものじゃないだろうか。
「先月アマンダが言っていたことを、実感する思いだよ。自分より親しい人が舞台に立つと、おかしなくらい緊張するって」
「え?お姉様が?」
「そう、君の試験がうまく行くと思っていても、心配で叫び出しそうな雰囲気だったよ」
「お姉様……♡」
「すまん、今はイラっとするからその顔引っ込めてくれるかな」
「っチ」
「今舌打ちしたか?おい」
ツーンとそっぽを向くアデラインに絡んでいると、眉間に皺を寄せたアマンダが食堂入り口から向かってきているのが見えた。
「アマンダ!」「お姉様!!」
被るように呼びかけて近寄ると、難しい顔をしたアマンダが、「まぁまぁ」と僕達を落ち着かせるように手をひらひらとさせた。元の席に戻り、席に座るとアマンダが結果を告げた。
「平民になった後、侯爵家の養女になるみたい」
「「 え??! 」」
驚く僕達に、事の顛末を教えてくれた。
「えっと、一旦貴族籍を抜く手続きをして、出奔。期間を3週間に伸ばして行き先は隣国。休暇ではなく半分以上が出張……帰ってきてから養子縁組の手続き」
「そうみたい。なんだか申し訳ないわ」
「でもこれでお姉様の分の旅費は、出張以外の宿泊費のみで良いと言うことになるのよね?」
「そうね、お陰で留まる場所をアップグレードできそうだわ」
「流石お姉様の上司ね!」
「そうか……ベルガイト侯爵家か……」
興奮する姉妹とは別に、僕はその幸運に胸が躍っていた。伯爵家から平民になってしまう彼女をどう説得してどこかの養子に入ってもらおうかと、説得方法を考えていたから。
いくら相手は誰でも良いと言われていても、低すぎたり、元貴族といえども平民となった相手を父や母、ましてや受け皿として見ている王家が許してくれないだろうと思っていたのだ。
「っっっつぅ!」
不意な痛みに、顔が歪む。
向かいの席で、アデラインが睨んでいるのが見えた。
ふん、何度でも踏みたまえ。
僕は今、光に照らされた幸福につながる道の上にいるのだから。些細な痛みなどっっ、っておい、しつこいぞっ
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